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使徒と遊戯のラグナロク  作者: 愚者
一章 混沌とする福山

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11/15

一幕 諸所の正義 その漆

 ―福山東警察署特殊捜査室


 扉が開かれると、ふかふかのソファーに沈み込んで座る宗一郎の姿があった。


「俺が張り込んでる間に何寝てるんです?」


 宗一郎は睨むように目線だけを五十嵐に向ける。


「何かわかったのか?」

「いやぁさぁ、清十郎君にバレましてね」


 それを聞くと呆れたようにため息をつく。


「まぁ分かったことがありますよ」

「ほう」


 興味ありげに呟き、宗一郎は座りなおして缶コーヒーを手に持って、しっかりと聞く体制をとった。

 

「少なからず彼にはやましい事があるっぽいんですよね」

「ん?そりゃそうだろ」


 当たり前の事じゃないかと、少しイラつきのこもった声をあげる。

 実際、彼は悪事を働いている。けど、宗一郎はそれを悪ではないと黙認している。そのことを五十嵐とて知っているはずだ。


「いやぁなんか違和感があるんですよ。妙な間というか、声の雰囲気というかが、何かを知っているような」


 何故そう思ったのかうまく言葉にできてはいなかったが、自分の考えを伝える。

 それを聞いて宗一郎は俯いて顎を親指で撫でるようにさわっていた。

 ふとパッと顔をあげる。

 その顔は覚悟を決めた顔だった。


「なぁ、お前は俺の正義のために命を尽くせるか?」


 とても身勝手で狂っている問い。

 流石に宗一郎とて、この問いが狂っていることは分かっている。

 その問いに五十嵐は呆れたようにため息をつく。


「ハァ、この特殊捜査室の奴らは風間さんの正義のおかげであるようなやつばかりですよ。だから、俺らはアンタの正義には命を賭けれますよ」


 その応えとて狂っているが、さも当然かのように言う。

 宗一郎は嬉しそうに微笑む。


「これはお前を信用した上でだ。聞いたら後戻りはできない」


 いつにもなく真剣な眼差しを向けながら言うが、五十嵐は微笑を浮かばす。


「いいですよ、俺らは風間さんについていくって決めてるんで」

「ならいい。何処から話そうか...俺は神の力を得た」


 唐突に語られるはこの世のものと思えぬ話。多くの人は中二病か薬、宗教を思い浮かぶだろう。だが、宗一郎がそういう人間ではないことを、五十嵐はよく知っていた。


 ―真実、なのか?

 ―信じられないが、宗一郎が嘘つくとは思えない。


 多分それが表情に出ていたんだろう。


「信じられないよな。でも、本当なんだ」

「えぇ、信じられませんが、嘘だとは思っていませんよ」


 やはりそれは、信頼が生み出したモノだろう。


「俺に与えられた権能は【言霊フルーフヴェアター】っていう名前で、正義の女神ユースティティアから与えられたようだ」


 正義の女神ユースティティア、法や秩序といった正義に関するモノを司っている。

 また、ラテン語でユースティティアは正義を意味するのだとか、正義をつかさどる女神の名もまた正義。


 ―風間さんにお似合いの女神だな。


 そう思うだけで口には出さないが。


「能力は、まぁ名前通りの言霊だ。相手は言い放った言葉の通りに動く」

「―は?」


 五十嵐は意味が分からないという風に、疑問に顔を歪ませる。


「まぁ、言葉じゃ意味が分からんよな《喋るな》」


 ―喋るなって何言ってるんでしょうか?


 五十嵐は口を開くが、声が発せられない。 


 ―え、喋れない...!?


「喋れないだろう?」


 コクコクと恐怖に胸を締め付けられながら頷く。

 それにクスリと笑いながら、指を鳴らす。


「まぁ、こういう訳だ」

「使えそうな能力ですね。なんなら彼に喋れとでも言えばよかたんじゃ」

「それでもいいと思ったんですがね、誰がどんな権能を使うかもわからないから、人が多いところで使うにはちとリスクが大きい」

「ほかにも使える人がいるんです?」


 その問いに曖昧な返事を返す。


「まぁ、いるらしいね」

「らしいって...」

「仕方がない。権能に目覚めた時、脳内に直接いろんな情報が流れて来たんだ。そこでそうだと知ったんだから」


 そこから《遊戯ゲーム》、願いを叶える槍についてを話した。

 それはとても信じがたいものだった。

 だからと言って信じないわけではなかった。


「で、なんでそれを話したんです?俺が裏切って槍を手にするかもしれませんよ」

「他の《プレイヤー》も仲間を使う可能性も高い。知っている仲間が多い方が何かとうまくことが進むだろう?だから、信用しているお前に話したんだ」


 宗一郎からの信頼を五十嵐は素直にうれしく思う。


 ―そういえば、何からこの話になったんだったか?

 ―清十郎君...?


「清十郎君が、それに関係していると?」

「いいや、多分まだ彼は何も知らない。俺の予想だと、彼の友達が《プレイヤー》だと思っている」


 それを聞いてすべての合点がいき、五十嵐は表情を明らめる。


「だから俺に彼とその友達の尾行をさせたんですね」

「あぁ、それを踏まえてなんか違和感はなかったか?」


 少し悩むが、あっさりと答えを出す。


「なかったですね。彼が《プレイヤー》だったなら行動が制限される監視は嫌でしょう」

「そりゃあね、多分向こうも俺が《プレイヤー》だって気づいている。だから、根気強く監視でもしてますよ。そしたら何か行動があるかもしれませんしね」


 そう言って五十嵐は再び部屋を後にした。

読んでいただきありがとうございます。

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