神には仕事を、死神には休日を。
もし、神というものが存在するなら。
僕の願いを1つだけ聞いて欲しい。いや、今までのツケを考えたら、きっと叶えてくれるだろう。
どうか、不憫な僕の願いを叶えてください。
今日は待ちに待った、席替えだ。
ほとんどの学生がこれに学校生活の命運をかけていると言っていいだろう。例に漏れず、僕もかけていた。
決めるのは、くじ引きだ。つまり、運と運の戦い。
今まで色んな不運に見舞われたが、すべてこの日の為にあったのだ、と僕は都合のいい解釈をする。運は、不運が起こるたびに溜まっていくものなのかはわからないけど、僕はそうであると信じたい。
いや、
そうじゃなかったら、きっとこの世界に絶望して、神を、地球を、すべてを恨みたくなるだろう。
神よ、なぜ僕に試練をお与えになったのですか、って。それか、僕は選ばれし人間で今は試されているのだと思うかもしれない。大仰なことを言っている自負はあるが、しかし、それだけ重要なのだ。特に、片想い勢にとっては。
「お願いします。」僕は祈る。特に信仰はなくても。
人は追い詰められた時、本当にどうにもならない時は、皆神に祈るのだ。神様も大変だなと、そう思ったとき、くじが回ってきた。
心の中で三度、合掌して一気に1つえらびとる。もし松野さんの隣なら死んでも良い。無責任な願掛けをする。ある意味、死神も大変かもしれない。そう考えて、とる。
今の時点では席はわからないのに、僕はドキドキしながら紙を開く。
7
と、女子が書いたであろう丸い字が書いてある。
ラッキー、と思う。でもアンラッキーに変わるかもしれない。希望を持ちすぎないよう、そう考える。
人によって価値が変わる、ということだろうか。僕にとっては彼女の隣の席がラッキーナンバーだ。「基本的に僕のラッキーナンバーは、3だと思ってるんだけど。」ぼそっと呟いてから、ふと思う。
これが僕にとってラッキーな結果だったら、彼女にとっても同じことがいえるのだろうか。
そうだったら良いのに。
甘い理想を抱き、僕は先生が席順を書くのをながめる。
僕は夢を見ているのだろうか。それも、とびっきりの、幸せな夢を。
夢なら、もう覚めなくてもいいかもしれない。いや、夢なら、ある意味ひどい夢かもしれない。起きた時に現実とのギャップに悲しくなることを考えたら。
隣に松野さんがいて、黒板の字を写している。特に、何というわけでもないけど、シャープペンをカチカチと鳴らす音の間に君の息づかいが聞こえてくるようで、僕はドキドキする。
僕は、少し、気持ち悪いかな。と自虐的に笑って、それでも良いかって開き直って、
君の横顔を覗く。
ほんのりとピンク色の頬
さっぱりとした短い髪の間から白い耳が少し出ている。
プルリとした小さな唇。
少し垂れた、優しそうな目。
僕の視線を感じたのか、僕の方をちらりと、きみがみた。
目と目があって、なんだか恥ずかしくなって、それをごまかそうと僕は笑う。
彼女は僕に少しだけ微笑んで、再びノートに向かった。
僕にカメラ機能があったなら、すぐにでも家に飛んで帰り、今の写真をコピーするな。
そしたら、アルバムに入れて、毎日眺められるのに。
絶対変な人だと思われた!と、それよりも先に思った。
そして、やっぱり気持ち悪いかなって思って恥ずかしくなる。
まさか、ほんとに、隣になるなんて。信じられない。
神は僕を見捨てなかった。初めて、神の偉大さを感じたかもしれない。
そういえば、とどうでも良いことが思い出される。
隣になれたから、死ななきゃな…
死神は、僕を見捨ててもらって、結構です。今日は休業です。
うん、僕はつぶやく。君に聞こえないように。
「ラッキーだ。」それから、帰ったら、取り敢えず仏壇を拝もう。
僕ももうリア充の仲間入りだ。
…彼女がいるってわけではないんだけど。
リアルが、充実しているという意味で。
貧相な片思いだったとしても、
僕が充実してると感じるのだから。
人によって感じ方は違うんだ。それでも、いいだろう。




