ねむれない!
やばい、また記憶を失ってた。
隣の部屋が騒がしいし、何やってるのかとやっと覗く。
「…♪」
歌ってる。歌詞になってないけど。
懲りずに酒飲み配信している様だ、邪魔しないように迎え酒してまた眠ろう。
「……」
気になる。
「……♡」
囁いてる。いや待て、時間も時間。入眠用に何か囁いてるのか。寝た方がいいのはお前だろうが。
乱入してぶち壊すのも良いけどそんな気力はもう無い。肉じゃがが出てきてしまう。気乗りはしないがその囁きに耳を傾けて寝るとしよう。
「…お…さん…がね」
俺のこと言ってない?
「かっ……ね…」
かっ…こ良かったね、とかだろうか。それは知っている。
逆に気になって眠れない、という事もなく気づけば夢の中に居た。角刈りを追いかける夢。その母親に感謝する夢。
朝になり、身体を起こすと辺りは静かになっていた。痛む頭を掻きながら、いふの部屋に入る。
寝てる。あと酒臭い。俺かもしれない。
「…んにゃ」
夢の中でも猫を演じるいふをよそ目に、つけっぱなしの配信を切って缶を片付ける。ロングの強い缶が八本、ウソだろ。
…トイレ掃除しとくか。ついでに味噌汁とカレーでも作ろう。
「ウコン……」
寝言で求めてるし。
いふがトイレに入って三時間が経った。話し相手も居ないので窓の外に居た角刈りに話しかける。配信中に何を言っていたか。官能すぎて耳を塞いでいたらしい。本当か?
それと面白い人に知り合えたと言っていた。カッコ良くて面白い。最強だな俺は。角刈りが自分に指を指す。それは無い。面白いけど。
勉強の時間だと自室に戻る角刈り。そもそも何で昼に居るんだろうな。
「お兄さん…何で僕の部屋に居るの…?」
「掃除」
「お母さんじゃ無いんだから!!」
「肉じゃが美味かったろ?」
「それはそう!」
あの肉じゃがは美味かった。……カッコ良くて面白いの、角刈りのママの話じゃねぇよな。
何となく嫉妬した俺は作ったばっかのカレーに肉じゃがをぶち込んだ。




