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私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていたのです~  作者: 堂道廻
第四章【悪夢】

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73 やっぱりお前もか

 調理実習室のある特別棟を出た私は渡り廊下を通って高等部校舎に向かった。特別棟と高等部の間には素敵なアルゼリッシュガーデンがあって、生徒たちが思い思いの場所で友人たちとランチを過ごしている。


 花の香りを感じながら校舎へ続く石畳を歩いていた私は、噴水の近くに人だかりができていることに気付いた。


 その中心にいるのはエドガーだ。数人の女生徒たちが彼を囲み楽しげに話しかけていて、対するエドガーも笑みを浮かべながら自然に受け答えしている。任務のために上手く溶け込んでいるというよりは、生徒たちの方から積極的にアプローチを掛けているといったご様子。


 さすがのエドガーは、こういう状況に慣れている感じで、一定の距離と笑顔を保ちつつ分け隔てなく生徒たちに接している。


 まあ、あの容姿なら無理もない。しばらく彼には近づけそうにない。


 ということで、私はエドガーへの接触を後回しにして先にノエルくんの様子を見に行くことにした。


 教師と生徒という立場上、大っぴらに会話はできない。だって関係を疑われて変な噂を流されたら任務に支障をきたしてしまう。そういうのは妄想だけで楽しむに留めておくべきである。ならば、せめて制服姿を拝んで目の保養くらいはしたい。そう、だからこれは本当にただの〝様子見〟なのだ。


 彼が在籍している教室へ向かった私は、廊下側からそっと中を覗き込む。


 一番後ろの席に座る彼を発見、こちらも生徒たちに囲まれていた。しかしエドガーとは違って女子だけではなく男子も混ざっている。

 転校生が珍しいのか、それとも彼の人柄がなせる技なのか。ノエルは困ったように眉を下げながら、それでも愛想よく笑っている。


 ああもう、その困った表情まで可愛い。やっぱりノエルくんの学生服姿は萌える! 推せる! 騎士服もいいけど、こっちの魔法使いっぽい服の方が彼には似合っている気がするのよね。


 うーん、フィギュアにして部屋に飾りたい……。


 ちなみに、彼とクラウディオの顔を見ていたであろう先日の事件の被害者、ローザ=アラバスタ侯爵令嬢は、事件のショックで現在休学中とのこと。早く復学できることを願うけれど、彼女が彼らの顔を覚えていたら、それはそれで厄介なことになる。

 ある意味で彼女が復学するまでが、私たちにとってのタイムリミットといえる。


 それにしても、あんなに囲まれていたらナイトメアの捜索なんて無理じゃない?


 彼らは環境に溶け込めているようで、まるで溶け込めていない。潜入させる人選に問題があったのではないだろうか。

 もっと地味で、どこにでもいそうな人材のほうが、こういう潜入には向いていたと思う。


 そう、地味で影が薄くてオーラがなくて、モブのような――って、誰がモブやねん! 


 ……モブはともかく、比較的自由に動き回れているのって、もしかして私だけなのでは?


「おい」

「ひゃ!」


 突然背後から声を掛けられ、肩が跳ねた。


「ク、クラウ……じゃなかった、クレイグ先生、なにか用ですか?」


 もちろんクレイグは偽名だ。

 私は慌てて言い直し、そのまま視線を逸らした。どうにも意識してしまって目を合わせられない。赤面してしまいそうで彼の顔を見れない。


「なにか分かったか?」


「ま、まだなにも……」


「なんで顔を逸らしているんだ?」


「な、なんでもいいでしょ! 寝違えて首が痛いのよ!」


 苦しい言い訳なのだが、


「寝違えたって、お前……。まさか授業中に寝ていたんじゃないだろうな?」


 クラウディオは顔を歪ませた。本当に寝ていたと疑っている目だ。


「失礼ね、ちゃんと授業しているわよ! もうすでに人気ですごいんだから」


 ちらりとクラウディオを見ると、呆れたように眉を寄せていた。そこで私はふと気づく。


「そういえば、あんたは囲まれてないのね」


 さっきまで生徒たちに囲まれていたはずなのに、今は一人だ。


 どうやら滲み出る性格の悪さが露呈して、化けの皮が剥がれてしまったようね。くっくっく……。ザマーナイワネ!


「あん?」


 怪訝そうに眉をひそめるクラウディオの後方へ視線を向けると、少し離れた場所で女生徒たちがこちらを窺っているではないか。

 クラウディオにはデフォルトで人を寄せ付けないオーラがあるから、声を掛けたくても掛けられない彼女たちは健気にも一定の距離を保ちつつ追っかけているようだ。


「くっ、お前もかブルータス……」と私は吐き捨てていた。


「あ? さっきから何を言っている?」


「いえ、なんでもないの。今のところ、手掛かりは特にありませーん」


 私は軽く肩をすくめてナイナイと手を振る。


「そもそも、本当にあるのかしら」


「調べるしかない。少なくともフェルが真偽を吐かせるまではな。お前も寝てないでしっかり探せ」


 そう言い残し、クラウディオは廊下を歩き去っていった。


 一言余計なのよ、いーだ!


 クラウディオの背中に向かって歯を剝きだして威嚇する私の横を、女生徒たちの集団がぞろぞろと通り過ぎていく。彼の後を追っかけるようだ。


 守護霊かよ……。いや、集団ストーキングかな?


 しかも彼女たちは通りすがりに、こちらへジロジロと怪訝な視線を向けてきた。


 む……、なんか感じ悪いな。ん? まさかこれは生徒からイジメられるパターンでしょうか? うーん、無駄に目立つのは良くない。


 この状況ではまともに会話もできないし、校内では各自単独行動にした方が良さそうだ。



 



 

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