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私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていたのです~  作者: 堂道廻
第三章【初陣】

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61 結末はやっぱり

『スパローから各員、現時点をもって作戦を終了する。撤収作業に移行せよ』


 エドガーの声がチョーカーを介して響く。


 ふうーと長く息を吐き、私はガラス板から視線を外した。そのときになって、ようやく自分の手が小刻みに震えていることに気づく。


 結果的に上手くいったけど、ガス濃度のコントロールなんて一歩間違えれば大惨事だった。今になって、もしもの光景が脳裏をかすめる。

 

 胸の奥がひやりと冷たくなり、私は無意識に拳を握りしめた。


 やがて、ざわめきの向こうから人影が近づいてくる。ノエルに支えられながら、ふらつく足取りで指揮所にやってきたのは、人質になっていた少女だった。


 解放されたものの、まだ恐怖が抜けきっていないのだろう。祈るように手を握りしめて震えている。彼女を無事に衛士隊に引き渡すと、安堵したようにノエルは微笑んだ。


 続いてクラウディオとフェル、そしてエドガーが戻ってきた。三人は言葉を交わすことなく、軽く拳を打ち合わせた。

 普段はポーカーフェイスを崩さないエドガーも、わずかに表情を緩めていた。仲間内にしか分からない程度の微笑を浮かべている。


「いやぁ、それにしても司令はたいしたもんッスね、よくあんな作戦思い付いたッス」


 軽い足取りで近づいてきたフェルさんが、開口一番そう言った。彼だけは最初から最後まで緊張の外側にいた気がする。やっぱり、肝が据わっているというか変わった人だ。


「いえ、成功したのはみなさんのおかげです」


 そう答えると、フェルさんは大げさに肩をすくめてみせる。


「泣かせること言うッスねぇ」


「チドリさん……、いえ、司令。ガスが完全に抜けるまで屋外待機を徹底させた方がいいのではないでしょうか」ノエルが真面目な顔で言う。


「心配するな、まだ屋外待機が厳命されている」


 私が口を開くより先に、エドガーが簡潔に答えた。


 西の空はすでに茜色に染まり、太陽はゆっくりと地平線へ沈みかけている。

 思ったよりも早く事件を解決できた。これなら夜になる前に基地へ戻れそうだ。


 ――夜になる。


 その言葉が、ふいに引っかかった。


 太陽が沈む。暗くなる。灯りが点く。


 ぞわり、と背筋を冷たいものが走る。


 ちょっと待って……。


 私は大きな見落としに気付いてしまった。


「ねぇ……」


 ゆっくりとメンバーたちの顔を見回した。


「この学校って室内にガス灯……、整備されてた?」


 僅かな静寂の後、校内に侵入したクラウディオとノエルが顔を見合わせる。二人の表情がみるみる青ざめていく。


「まずい!」クラウディオが声を上げた。


 王都に整備されるガス灯はタリスマンによる自動点火式なのだ。つまり――、


「すぐにガス灯の起動を停止して――」


 私が衛士幹部に向かって叫んだその瞬間――、爆音が轟いた。


 衝撃波が押し寄せ、音楽室の窓ガラスが内側から吹き飛んで炎が噴き上がる。


 現場にいる誰も彼もが言葉を失い、呆然と音楽室を見上げた。


 私の口角が引きつる。


 それはなんてことのない当然の結果である。

 音楽室に溜まっていたガスが徐々に拡散していき、爆発範囲に突入。そのタイミングでガス灯に火が灯り、引火して爆発した。ただ、それだけだ。


 粉々になって宙を舞う無数のガラスの破片が、夕陽を浴びてキラキラと光り輝く。その光景がスローモーションになって見えた。


 なぜか、私の頭の中では『新世界より』の『家路』の哀愁漂うメロディーが流れていた。


 

 そして翌日の朝刊には、「新部隊、爆発の直前に少女を救出!!」の文字が一面を飾っていた。戦術騎士隊アルタイルは大爆発寸前で少女を救ったヒーローとして、その名は一躍世間に知れ渡ることになり、こうして私たちは華々しく初陣を飾ったのであった。



 おお神よ、そろそろ私に何の事件も起こらない日常回を与えたまえ……。




ここで第一部はおしまいです。

【第二部予告】

「シュヴァルニ学園に潜入し、兵器【ナイトメア】を回収せよ!(予定)」

 と、いうことで千鳥たちアルタイルのメンバーが教師に扮して学園に潜入します。更新は二週間後を予定しています(^^;)。

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