やべえ女
幼少期のロザリーの写真を見たみんなの反応
ラウル「うわ懐かし。今見ても面影あるよな~」
ユリウス「この頃は素直だったなぁ……全部お前と出会ってから変わったんだぞラウル(血涙)」
ロザリー「ラウルと出会って愛を知ったのよ私」
クロエ「元気の擬人化みたいな子だねぇ」
フルール「え、ここからこんなに乳でっかくなったのか!?」
クラルテ「おっぱいっていきなりでっかくなるんですよ」←Jカップ
ロンディニウムには高級住宅街がある。
宮殿や教会といった重要施設を取り囲むように高級住宅街が存在し、その外周を固めるように中間層の住宅街があった。市街地を東西に隔てるムーア川の対岸は低所得者層の住まう居住区や工業地区となっており、ムーア川を境にこの街は顔をガラッと変えている実態がある。
それで、問題のペンドルトン邸なのだが……そりゃあもう当然、高級住宅街の真っ只中にある。それも天地戦争の混沌が過ぎ去った後、この世界に残った数少ない名門魔術師の家系という事もあるのだろう。他の貴族の邸宅と比較するとより広大な、それこそゴルフでもできそうなほど……は言い過ぎか。まあでもせめて庭で野球が出来そうなくらいの広大な敷地に巨大な屋敷が建っていて、警備兵たちが周囲に目を光らせていた。
まるで要塞のような屋敷だ。
建物の中心には尖塔がある。屋敷の中に教会でもあるのだろうか?
何というか、そこだけ物々しい雰囲気だった。
「エリス・シンシア・ペンドルトン」
信号待ちをしている最中、サドルの後ろに跨って俺に抱き着くようにしてくっついているクロエが耳元で言う。
「氷属性の魔術師、適性は推定EXランク」
「EX? 適性ってSまでじゃあ……」
「Sランク、という括りに入れておくのが不適切判断してしまうほど強力な適性を持つ魔術師は、皆そこに分類されるんだ。文字通りの規格外だよ」
さっきまで揺れる度にクロエのおっぱいの感触で幸せだった背中が冷たくなった。
「え……」
「御三家の中で最も優勢なリガロフ家の長女、アナスタシアですらSランク止まり……といえば、その恐ろしさは理解してもらえると思う」
アナスタシア・ステファノヴァ・リガロヴァ。リガロフ家の長女にして次期当主候補筆頭。天地戦争の英雄にして当代当主ステファン・スピリドノヴィッチ・リガロフをして「頂点に君臨するべくして生まれてきた」と評する現代最強の魔術師。
適性では、そんなアナスタシアの上をいくというのがエリス・シンシア・ペンドルトンである。
しかしそこで、ふと疑問に思った。
「……でもさ、そんなにヤバい適性の魔術師がいるならリガロフ家の一強状態は覆せるんじゃ?」
「そうだね……彼女が自分の力をしっかり制御できるのならば」
「……どういうことだ?」
信号が青に変わった。
アクセルを入れてベスパを走らせる。無理な割り込みをしてきたクーペのドライバーに向かって中指を立てたら幅寄せしてきやがったので、サイドミラーを蹴ってぶち折りそのまま追い越していった。
当然相手はブチギレて追いかけてくるがこっちはバイクである。車の入れない路地に逃げ込むと、竜人語でなにやら捲し立てる声が後ろから聴こえてきたのでとりあえずウインクしながら中指立てといた。
んで、なんだっけ。何の話してたんだっけ。
「今から17年前……僕が3歳の頃だった。突然ロンディニウムの街が凍り付き始めてね」
「……」
「建物も自然も、人も。有機物無機物の区別なく、街はどんどん凍てついていった。氷を排除しようにも火力が足りず、炎属性の魔術師を連れてきても魔術が使えない。被害は拡大していく一方だった」
「魔術が使えない? なぜ?」
「仔犬ちゃん、【魔力的エントロピー】という専門用語を聞いた事は?」
「魔力的……ぽんぽこぴー?」
「wwwいやあの、魔力的エントロピー。”一定面積の空間の魔力がどれだけ整っているか”を現す指標だよ。小さければ空間中の魔力が整っていて、増大すれば魔力が乱れるから魔術が使えなくなる。”アーチボルトの魔力的熱力学第三法則”だよ、教本で見なかったのかい?」
「ごめんなさいまだそこまで勉強してません」
「Oh……」
あの、はい、ホントすいません。もっと真面目に勉強してればこんな事にはならなかったんでしょうけど。
ちなみにラウル君、大昔の大魔術師アーチボルトが体系化した魔力法則は第一法則しか知らない。公式書くとノート1ページ埋まるクソみたいなやつ。
「それでね、氷属性魔術には他の属性に無い特徴がある」
「特徴?」
「そう……氷属性魔術は使えば使うほど―――」
クロエがそこまで言ったその時だった。
唐突に石畳の上に落ちる影。ごう、と何かが迫ってくるような強烈な圧迫感と危機感を感じるよりも先に、反射的に身体が動いていた。ハンドルを右に向けながら体重を預けつつブレーキ、それから一瞬遅れてクロエが腰の鞘から大型レイピアを抜き払い、白銀の刃を縦に奔らせる。
ヂッ、とグラインダーが金属に触れるような音と束の間の閃光。火花なのだろうが俺には流星に見えた。
迫ってきたのは、無人の大型トレーラーだった。ドアのところにはブリタニア国防軍のエンブレムがある。
何か大きな荷物を運搬するためのそれは、しかしクロエが電光石火の如く振り払った剣戟を受けて、車体と荷台の接合部分を見事に両断されていた。空中で分離したトレーラーはそのまま大通りの石畳をバウンドしながら転がっていき、やがて街頭にぶち当たって動きを止める。
なんだよ、と悪態をつきながら前を見て、息を呑んだ。
ロンディニウムのムーア川対岸、増水した川の上に架かる橋の上に、2つの巨大な人影が見える。巨人のように燃えるが、しかしそれを”人”と表現するには余りにも表面の質感がメタリックに過ぎ、一目で無機物で構成された兵器の類であると理解する。
ゴーレムだ。
過去の文明が遺したものだったり、今の文明になって現代の技術で新造したものだったりと種類は多岐に渡るが、どちらもブリタニアが自国の技術で製造したものであると分かる。背中にガソリンエンジンを背負い、鈍色の分厚い装甲に身を包んで、頭にある紅い単眼を爛々と輝かせながらこちらを見るなり、機械が軋むような咆哮を発した。
「うわっ、うわっ!」
トレーラーのドライバーだったのだろうか。軍の制服に身を包んだ竜人の男性が、こっちに大慌てで逃げてきた。
「何ですかアレ!?」
「ぼ、暴走した! わが軍の新型ゴーレムが……!」
「暴走……?」
確かに様子がおかしい。
頭部の単眼がチカチカと点滅を繰り返し、頭を抱えたり石畳に拳を力任せに叩きつけるゴーレムたち。やがてひときわ大きな咆哮を発すると、その辺にあった消火栓をぶっこ抜き、棍棒を手にした原始人よろしく振り回し始めた。
低所得層の居住区で大暴れを始めるゴーレムたち。住民たちがパニックになりながら家から飛び出して、蜘蛛の仔を散らすように逃げ惑う。
あれを止めなければ―――俺とクロエの想いは同じだった。
ベスパを路肩に止めてから、グロック40カービンを引っ張り出した。その隣では大型レイピアを手にしたクロエが姿勢を低くして、俺に先んじて弾丸よろしく突っ込んでいく。
逃げていく住民とは逆に突っ込んでくる冒険者の存在を検出したゴーレム。フレームを軋ませながらクロエの方を振り向くなり、突き出したゴーレムの前腕部の装甲がスライド。中から水冷式の重機関銃がせり出してくる。
が、遅い。
発砲するよりも先に、クロエの大型レイピアが閃く。夜空を駆ける流星の如く迸った白銀の一閃が、銃身を覆う冷却水のタンクもろとも機関銃を両断。瞬く間に使い物にならなくしてしまう。
俺も前に出た。
クロエとは別のゴーレムに狙いを定め、姿勢を低くしながら発砲する。グロック40の長いスライドが後退、伸縮式のストック越しに10㎜オート弾の重い反動がずっしりと牙を剥く。
ドカドカドカ、と連続で射撃。ゴーレムの装甲表面に10㎜弾が着弾、火花を発して跳弾していく。いくら現代の銃とはいえ拳銃弾、装甲の貫通までは至らなかったようだが、しかしそれでも弾かれるのは装甲に限った話である。
ガギ、と右脚の付け根で火花が閃き、唐突にゴーレムの片割れが足を引きずるように移動を始めた。弾丸のうちの1発が脚部の関節を捉えたのだ。
腕のマシンガンを展開し狙ってくるゴーレム。しかし銃口の先にもう俺はいない。
雨で濡れてよく滑る石畳を利用した決死のスライディング。ゴーレムの股下を通過しながら1ダースくらい10㎜オート弾をぶちまけて背面へと抜け、ゴーレムの背後に飛び移る。
外敵が身体に取り付いた事を悟り、激しく体を揺らすゴーレム。遠心力の赴くがままに右へ左へと振り回されるが、しかしその程度でふっ飛ばされるほどこっちもヤワではない。
背中で駆動するガソリンエンジンにマズルガード付きの銃口を突きつけ、引き金を引いた。
こんな感じのゼロ距離射撃を多用するラウル君にとって、このようなマズルガードは必須と言っていいレベルの装備である。グロックのような拳銃は、中途半端にスライドを交代させると発砲できないのだ。銃口を押し付けるとこうなりがちなのである。
だがマズルガードがあればその心配はない。行儀の悪い戦い方ではあるがマズルアタックだってできる。
さて、至近距離から10㎜オート弾をしこたま叩き込まれたガソリンエンジンだが、当然無事で済むわけがない。
火を噴き始めるゴーレム。しかしマガジン内の弾だけで仕留めるには至らない。無情にもスライドが後退したまま沈黙、ホールドオープンした状態で弾切れを知らせてくる。
チッ、と舌打ちをしながらマガジンを切り離しフラッシュマグに装着した25発入りのクリス・ヴェクター(※10㎜オート弾モデルのマガジンはグロックと共用可)を装着、スライドのロックを解除して初弾を装填。
これで死ね、と心の中で念じながらとにかく25発、全弾ぶち込んだ。
がくん、とゴーレムの機体から力が抜ける。ぎぎぎ、と呻き声のように装甲を軋ませ、やがてゴーレム石畳に倒れ込んで動かなくなった。
倒れゆくゴーレムから飛び降りて予備のマガジンと交換。そういやクロエは、と彼女の方を振り向くと、ちょうどクロエが怒涛の刺突で引っぺがしたゴーレムの胸部装甲の奥に搭載されているコアへと、大型レイピアの切っ先を突き入れているところだった。
心臓をぶち抜かれ、機能を停止するゴーレム。
引き抜いたレイピアを振り払い、マントを翻して踵を返すクロエ。余裕綽々とでも言いたげな彼女の顔には、たいして苦労した様子も見られない。
さすがはミカエルに子供の剣術指南役に任命されるだけの事はある……と猛者の実力を改めて目にしたその時だった。
ぱちぱちぱち、と手を叩く音。
いったい誰だ、と振り向いた俺は、訝しみながらその人物を見つめた。
黒いドレスと白い長手袋、胸元には宝石の埋め込まれたブローチ。それだけでも異様だった。だってそんな瀟洒な服装でロンディニウムの街を闊歩するような人種は、このムーア川の対岸―――貴族たちの住まう高級住宅街でしか目にする事はないだろうと思っていたから。
ゴシック風のデザインの傘を差し、優雅な所作でこっちに歩いてくる竜人の女性。海原を思わせる深く蒼いロングヘア―と、竜人特有の爬虫類に似た形状の瞳。頭から突き出ているのは竜人の身体的特徴でもある角で、よく見れば腰の後ろから尻尾が生えているのも確認できる。
「お見事でしたわ」
「は、はあ……どうも」
何か裏があるとか、思惑があるとか、そんな裏表は感じさせない。先ほどの大立ち回りを純粋に賞賛しているような彼女の声音に悪意など感じられる筈もなく、俺は銃を手にしたままではあるが警戒心を段階的に解いていった。
「軍用ゴーレムを相手にあの身のこなし。さぞご高名な冒険者のお方とお見受けしますが」
「はあ、えーと」
こういう場合、自分から名乗った方がいいよな? さすがに「他人に名を聞くならまず自分から名乗れ」はストロングスタイルが過ぎる。
「ラウル・エルマータ。Aランクの冒険者やってます」
「まあ、Aランクまで上り詰めたお方だったのですわね―――ああ、自己紹介がまだでしたわ」
そう言うなり、彼女はドレスの裾を摘まみ上げるようにしてお辞儀をした。
「私はエリス―――エリス・シンシア・ペンドルトン」
―――全ては、これから起こる事。
なるほど、ミカエル君の未来予知に外れはないという事か。彼女の観測した未来に外れはない、というのは本当らしい。
エリス・シンシア・ペンドルトン。
御三家の一角、ペンドルトン家の長女にして氷属性魔術に対し破格のEXランクの適性を持つ才女。
そして過去に、何かをやらかしたやべえ女。
そんな女が―――今、俺の目の前にいる。
EXランク
魔術適性の区分の1つ。魔術の適性はEランクからSランクまで存在し、公式にはEXランクという区分は存在しないのだが、Sランクの範疇から上に大きく逸脱した適性を持つ人材にこの区分が割り振られる事がある。
なお、当然ながらEXランクの判定を受ける魔術師は極めて稀有であり、観測歴38000年現在で確認されているEXランク魔術師はエリスを含めて僅か3名である。




