倍楽樽
こうなる三部作執筆中作者
「AK最強AK最強AK最強AK最強AK最強AK最強」
ミリオタ庶子執筆中作者
「……べ、別に西側の銃もカッコいいなんて思ってないんだからねっ/////」
今 の 作 者
「 ボ ル ト リ リ ー ス レ バ ー を 叩 い て み れ ば 自 由 民 主 主 義 の 音 が す る 」
ARっていいですねぇ(亡命)
―――とんでもねえ嫌がらせだ。
ACOGスコープのレティクルに、腐乱に腐乱を重ねて半ばミイラみたいになった人間の顔が映る。ずるりと剥けた腐肉から覗く骨格からアレ女性だったのかな、と他人事のように思いながら人差し指に力を込めた。
引き金が引かれ、撃針が7.62×51㎜NATO弾の雷管を殴打。その衝撃に叩き起こされた装薬が薬室内で爆発するなり、20インチのロングバレルの中で弾丸が一気に加速。ライフリングで回転させられ安定感と十分な運動エネルギーのドレスを纏った一発の弾丸は、運動エネルギーと質量の赴くままにゾンビの頭へと飛び込んで、常人と比較し水分不足気味な頭を木っ端微塵に粉砕した。
ゾンビの撃破を確認するなりすぐ次の標的に照準。ふう、と息を吐いてから呼吸を止め、身体の揺れを最小限にした状態で引き金を引く。
さて、俺にとっては因縁のある浮遊島『サン・パライソ』が合法的な手続きを経て、協商連合の新たな領土としてアルカディアの回遊コースに乗せられ、一緒にぐるぐるとノヴォシアからオースレリアまでの広い範囲を回遊するようになったのはつい二日前の話である。
サン・パライソ島は元々、浮遊大陸『ムララ』に属する浮遊島だった。しかし増加していく難民と、それに伴う生活圏の拡大を必要とする協商連合によって、無人島として半ば放置されていたサン・パライソ島は魅力的な物件であった。
そこでムララ政府と交渉し、向こうの国家予算レベルの大金で購入したわけなのだが。
穏便に、かなーり穏便に購入したサン・パライソ島。その譲渡を向こうの政府は快く思っていなかった、というのがこの一件の顛末なのであろう。浮遊島の移送作戦中に艦隊を差し向け妨害、それが叶わなければ事前に島に放置していた死体の山をゾンビ化させて汚染という、人間の尊厳を踏み躙る暴挙に出たのだから大したものだ。
既にエンジェルパレスはムララ政府に対し正式に外交ルートを通じて抗議。経済制裁も発動させたが、相手は浮遊大陸でありメインとなる経済圏は空の上だ。竜人たちの保守派の総本山、メルキアが背後に控えている以上は制裁も限定的となるだろう。
まあ、だからこそ『非合法な作戦』の準備が進んでいるわけだが。
MG5によるフルオート射撃。腐乱した死体の一団が腹に、胸に、そして運悪く頭に7.62×51㎜NATO弾を叩き込まれたところで、俺も狙撃し子供のゾンビの頭を吹き飛ばす。
人を殺す事に対し、忌避感を感じなくなったのはいつからだったか。
この人差し指で人を殺せるようになったのはいつ頃だったか。
これでつい15年と数ヵ月前まで、どの辺にでもいる普通の日本人だった。パワハラ上司をぶん殴って北海道に連行し一緒に海鮮食べて仲良くなれる奴が普通の日本人かどうかはさておき、少なくとも太平洋戦争の終戦から戦争を一度も経験せず、戦争ってのは歴史の教科書に載ってる白黒写真の中が全て、という認識のまま短い人生を終えた男だ。
それがこれである。生き残るために、自由になるために力を手にした結果がこれだ。
自由とは決して無償で手に入るものではない。血の滲むような努力と身を削られるような苦痛、死の恐怖。そういった”義務”と”責任”を果たしてようやく手に入るものなのだ。
ズバン、とマルチカム迷彩の上下姿になったフルール(もうシスター服は着ていない)がUPR-10の狙撃でゾンビの頭を2体まとめて吹き飛ばす。スコープを覗き込んだままボルトハンドルを操作、次弾を装填して狙撃する。
それにしても、だ。
「……いったいどれだけ死体を用意したんだか」
マガジンを交換、ボルトリリースレバーを引っ叩きボルトを前進させながら悪態をついた。
ムララ政府の連中、大陸中の死人をかき集めてここに放置したんじゃないだろうか。無論、マフィア連中の掃討作戦で撃ち漏らしたゾンビが居たとかいう可能性はゼロである。あの時は死体処理を徹底したし、対処が間に合わずゾンビ化した死体については最後まで駐留していた戦闘人形が適切に「処理」している。
まあ、いずれにせよゾンビは徹底的に排除しなければならない。
感染拡大されると厄介だし、何よりゾンビになってしまった肉体の持ち主が不憫だ。誰だって嫌だろう、自分の身体だったものが腐敗に腐敗を重ねて勝手に練り歩き、人を食い殺すなんて。
死者の尊厳は厳に守られるべきだ。
確かに俺やミカエルは尊厳破壊だの何だの言われてオモチャにされているきらいはある。が、それは笑って済ませられる範疇だ。
さすがにこれは、笑えない。
「”ストレイド”より”アイスマン”、ピザのデリバリーを頼みたい」
クラルテが制圧射撃……というか景気よく撃ちまくっている隣で、片方の耳を塞ぎながらもう片方の耳をスマホに押し当てた。
《”アイスマン”了解。お届け先の住所を頼む》
「了解」
スマホから聴こえてきたのは俺たちのよく知っている男―――ユリウスの声。
いつも冷静沈着で大物を的確に仕留める男が、その名の通りの『アイスマン』を名乗るとは安直すぎやしないか、とコールサインを決めるプチ会議で言ったものだが、彼は意見を曲げる事は無かった。案外頑固なところがあるのかもしれない。
言われるまでも無く、バックパックから取り出した携帯型のレーザー目標指示装置を展開し目標座標を指示し始めるロザリー。その隣ではタボール7を装備したクロエが、ロザリーにゾンビを近づけまいと散発的な銃撃を加えているところだった。
頭上を見上げた。
サン・パライソ島―――今では『エスペランサA-12』と改称された浮遊島上空1500mくらいの高度に、小さな黒い豆粒のようなものが見える。
離陸前に機体を見せてもらった。
あれこそが新時代の空を飛ぶ翼。
有人機だとか、そのための訓練を受けたパイロットだとか、何と贅沢なものなのかと痛感させられるような兵器。
『バイラクタルTB3』―――トルコ製の艦載型無人機である。
俺のようにコクピットにパイロットが乗る必要がない無人機。仮に撃墜されたり、事故で喪失したとしても人的損失は発生しない。高度な電子部品やら半導体やらが失われる事になるが、よっぽど安上がりなのだ。数百時間、数千時間の飛行時間を経験し、手塩にかけて育ったパイロットを一瞬で失うよりは、遥かに。
今頃ユリウスは冷房の効いたソーキル艦内のドローンステーションにあるコクピットでアレを飛ばしているのだろう。ゲームセンターのゲーム機で戦闘機を飛ばすノリで、だ。
黒く塗装され、機首に白く筆で書いたような字体で『倍楽樽』というダジャレみたいなマーキングのあるそれから、やがてレーザー誘導爆弾が投下される。
「ピザが来るぞ」
「了解」
私マルゲリータが好きなのよね、と言いながらもレーザー照射を継続するロザリー。じゃあこれ終わったら出前でも頼もうか、と申し出ながら彼女の隣で射撃し、人の未来の嫁に近付こうとするゾンビをあの世に送る。
しばらくして、ピザが届いた。
高度1500mから投下された、アメフトのボールを引き延ばして安定翼を取り付けたような形状の鋼鉄製のピザ。落下の勢いと重量、それから内蔵された炸薬の暴力は凄まじいもので、落下した地点で盛大に火柱が吹き上がり衝撃波が放射状に広がって、一瞬遅れて轟音が響き渡る。
無論ゾンビの群れは、跡形も無かった。
《―――それでは次のニュースです。浮遊大陸ムララの首都”オドリュサイ”にある中央美術館、及び大陸中央銀行から複数の美術品、金塊が持ち去られた事件で、ムララ政府は協商連合に対し『一連の盗難事件は協商連合の仕業ではないのか』と批判を強めています。ムララとは浮遊島エスペランサA-12におけるゾンビ発生の一件から関係が悪化しており―――》
ポケットに突っ込んだスマホから、イヤホンを伝って耳にニュースが流れてくる。
アルカディアに帰還している間、いつも朝5時に起きてランニングするのが日課になっている。歯を磨いて顔を洗い、トレーニングウェアに着替えて準備体操をしてからまず軽く3㎞。それから腕立て伏せだのスクワットだのプランクだのといったおなじみのトレーニングをこなして朝食である。
アルカディアのメディアはとにかく有能だ。
偏向報道がなく公平性を堅持している。そのうえ正確だしヤラセもない……まあ、人間じゃなくてAIが管理しているから当たり前なのだが。
そういうわけで変なストレスも無く、ネットから無加工の情報を拾ってきて自分でファクトチェックして……という手間もかからないから、欲しい情報がスッと入ってくるのは良い事だ。
「はっ、はっ、はっ」
【なぁにご主人、もう息上がってる?】
「うるせっ」
【あははは♪ そんなんじゃ狩りで獲物を仕留められないよ♪】
リードもハーネスも無しで隣を楽しそうに走るハイイロオオカミのライカ君。俺の使い魔なのだが、まあこの仔狼と出会ってからは朝のランニングは半ば散歩と化した。前世でゴールデンレトリバー飼ってたんだが、やっぱり犬にとって散歩は必要だ。ずっと家の中ではストレスもたまるのである。
そんなワンちゃんの源流たる狼なのだから、まあ必要になる運動量も凄まじいもので。
《なお、ムララ領内から持ち去られた芸術品や金塊の被害総額は3兆6百億コルタ相当に上るとされており、補填は絶望的と―――》
視界の端で、アルカディアを覆う気流結節点から黒い舳先が突き出たのが見えた。
やがて渦巻く気流の流れに乗ってハリケーンの如き積乱雲を突破してきたそれは、みるみるうちに大きくなり、アルカディアを幾重にも覆う光の環の合間を縫ってこっちに接近。エンジェルパレスにある軍港の方へと静かに舞い降りていく。
ソーキル級だ。
「……お帰りか、強盗犯共」
俺たちの船ではない。
ソーキル級の13番艦『ヴォロン』。
協商連合に加盟している冒険者ギルド【モリガン】の保有する空中艦であり、既に53隻が量産・就役しているソーキル級の”フライト2”に属する艦だ。
ヴォロンとは、イライナ語で『鴉』を意味する。
僅か3名の冒険者で切り盛りされている小規模ギルドでありながら、最近になってくまさんハウスと同じく強盗任務に従事する”実働部隊”として各地を駆け回っている精鋭ギルドだ。
ギルドマスターは確か、フランシス出身の獣人女性『カレン・ディーア・レ・ドルレアン』氏だったか。フランシス革命以前は名門として名高かったという公爵家の末裔、今となっては立派な家紋と過去の栄光だけが名残となっている一族の血筋が、今では世界を駆け回る新進気鋭の強盗のボスとは何ともまあ冒涜的な運命ではないか。
毎度思うんだが、ウチのギルドももっとカッコいい名前にしても良かったんじゃないだろうか?
なんだよ「くまさんハウス」って。毎回名前呼ばれる度に脱力するんだよ……。
エンジェルパレスの裏庭まで戻ってきたところで、持参した野球ボールをポケットから取り出した。ライカがこうしてランニングについてくるようになる前まではここで筋トレが始まる筈だったのだが……。
「よーしライカ、取ってこーい!」
「キャンキャンキャンキャン!」
犬 か お 前 は 。
狼の誇りはどこに行った、とツッコみたくなるほどイッヌな挙動で野球のボールを追いかけていくライカ。そのうちにそっと掌を前に突き出し、魔力を放射してみる。
今の俺には、力が必要だ。
どんな力でもいい―――ヘンリックを、あのサイコ野郎をぶちのめす力が欲しい。
というわけで、今まで適性の低さから着目もしてこなかった『魔術』という概念に目を付けた。
一応、ラウル君は幼少の頃にスパーニャで受けた適性検査でEランク、氷属性という判定をもらっている。まあ、魔術師の素質は殆どないレベルだ。魔術を使える必要最低ラインにギリギリ指先がかかってる、程度のもの。粗製も粗製、魔術学校だったら門前払いである。
とはいえ魔術が使えない事がないのならば何か、補助的な運用は出来るのではないか。そう思い独学で魔術について調べながら試行錯誤しているのだが。
「……」
腕立て伏せを爆速で50回やったような疲労感。
それだけの魔力を込めたというのに、手のひらに生じていたのは金平糖みたいなサイズの氷の礫。
はっきり言おう……こんなんじゃ 製 氷 機 に す ら な り ゃ し ね え 。
いや、もっと真面目に練習してりゃあもうちょうマシだったんじゃねえか、と後悔する。そりゃあな、ユニークスキルあるし魔術がクソ判定貰ったらもう目もくれず現代兵器に傾倒するよなぁ。
どうすんだよ、金平糖でどうやってヘンリック倒すんだよ。
でもなぁ、適性って生まれた時の素質が全てだから後天的な努力では変わらないんだよなぁ。
ぐいぐい、とラウル君の尻尾が引っ張られる。何だよライカの奴もうボール取ってきたのか……てっきりそう思って「ん、早いなライカ」と言いながら後ろを振り向いた。
「にゃぷ?」
「」
後ろに居たのは愛犬ならぬ愛狼ライカ君ではなかった。
身長150㎝のミニマムサイズにして協商連合のトップ、転生者序列1位という栄誉を欲しいがままにし、同人誌にされた回数で世界記録まで保持している尊厳破壊の化身こと『ミカエル・パヴリチェンコ』その人だった。
「お前失礼じゃね?」
「ナチュラルに思考読んでくるのやめてくれます?」
「それはそうと、さ」
にっ、とミカエルは笑みを浮かべた。
「ラウル君暇? ミカと一緒にお茶しない?」
協商連合のトップから、何か知らんがお茶に誘われた。
いやあの……まだ朝の5時半なんですが……。
バイラクタルTB3(ユリウス機)
トルコ製の最新式艦載型UAV。それをベースに各所に改造を施した、くまさんハウス仕様の現地改修型。黒い塗装と装甲の隙間から漏れ出る紅い光、機首の【倍楽樽】のマーキングが特徴的。マーキングはヴォイテクが悪ノリで行ったが、ユリウスから「漢字カッコいい」という意見を受けたためそのまま採用された。
改装を受けたソーキル艦内にはスペースの余裕があった事に加え、複数のドローンを搭載、遠隔操作可能なドローンステーションが設けられていた事もあり、ラウル用の有人機の他にサポート用の無人機の枠も確保する方針で話が進んでいた。
ユリウスもまた努力家であり、アルカディアに戻ってくる度に大陸内の訓練所へ通いスキルを上げていたようだ。現在ではUAVの基礎操縦過程を終了しており、エスペランサA-12における航空支援任務が初の実戦となった。




