来 ち ゃ っ た ☆ 彡
なかよし☆デストラクション
作詞:ヴォイテク
作曲:ヴォイテク
振付:ヴォイテク
歌唱:ラウル・エルマータ
ヴォイテクが仕事の片手間に作詞・作曲を行っていた曲。元々はミカエルに歌わせるつもりだったらしいが、ラウルがオーディションに爆速で合格してしまった事を受けラウルのデビュー曲用として急遽攻撃的な歌詞に編集。「ラウルらしさ」を前面に押し出した曲に仕上がっている。
いわゆる「電波系」の曲ではあるが、サビで一気に曲調が変化。ロックやヘヴィメタルのような曲調からバカスカと攻撃的な歌詞が繰り出されるためギャップがかなり激しい。
以下歌詞↓
なかよし☆デストラクション
にこにこ きらきら おはよう世界☆
みんなにハート いっぱい飛ばすよ♪
手をつなげば みんなハッピー☆
バッドエンドは やだやだやだ~!
飛行機雲を 追いかけて
おしゃべりタイムで 仲直り♪
今日はみんなで 手をつなご!
そうだそうだよ 笑顔が一番!
怒った顔より 笑顔がいい!
だからねえねえ お話しましょ?
喧嘩なんて よくないよ☆
―――は? 何、やんの?
宣戦布告 初弾装填 発砲許可!
Heeeeeeeell yeahhhhhhhhhhh!!!
手加減情け 容赦ナシ!
ハートと火薬に 火を点けろ!
来るなら来いよ Take down!!
白旗舞うまで 止まらない!
白黒つけようぜ Go to hell!!!
ヘンリック・アンデルセン。
天地戦争に従軍した兵士たちの中で、その名を知らぬ者は間違いなく1人もいないだろう。
『八艘飛びのヘンリック』、『皆殺しのヘンリック』、『鉄拳のヘンリック』―――彼が渡り歩いた戦場で続々と増えていった異名の数々は、獣人の兵士たちには英雄の名として、そして竜人の兵士たちにとっては忌むべき悪魔の名として知れ渡っていたのだから。
アウルスやアグリッパ達は無論、後者であった。
まさに悪魔だ、と思う。
乗艦を竜人軍側の艦に激突させて白兵戦を敢行、その戦艦を撃沈に追いやるなり内火艇を強奪して次の艦へと乗り移り無力化……それを何度も繰り返して、終戦までに8隻の空中戦艦を撃沈した男だ。
―――それも、生身で。
その記録は獣人、竜人双方に生々しく残っている。多少の食い違いは見られるものの、記述の内容は概ねこうだ―――『あの男は”戦争”の具現である』。
戦時中から彼には懸賞金がかけられていた。その金額は戦争が終戦に差し掛かるにつれて爆発的に膨れ上がっていった。最終的にその懸賞金は文字通り一生遊んで暮らせるほどの額にまで達したが、それでもヘンリックを討ち取ろうという兵士はついに現れなかった。
―――勝てないからである。
ヘンリックは強い。言うまでもなく強い。
転生者がよく使うチート能力だとか、女神様から貰ったスキルがあるから強いだとか、生まれつき特殊な能力を持っていたから強いとか、そういう理由は一切ない。
―――ただ単純に、あの男は「強かった」。
コキ、と首を鳴らすヘンリック。彼の足元には同志の死体が転がっていたが、しかし彼は志半ばで倒れた仲間の死を悼む素振りすら見せない。
まるでそこに転がっていたゴミの如く無造作に踏みつけ、死体の頭を踏み潰した。飛び散る血や脳漿すらも意に介さず、視線をずっとアウルスやアグリッパたちに向けたまま、双眸を紅く爛々と光らせている。
この時になって、アウルスは自分の身体が震えている事に気付いた。
天地戦争という地獄を生き抜き、S&Dに拾われてから数多の実戦を経験してきた。何度も死にかけた事はあるし、恐怖に慄き動けなくなったこともあった。
しかし今ばかりは―――いくら何でも次元が違う。
蛇に睨まれた蛙だとか、そんな次元ではない。
死を目前にした脳味噌が、フルスピードで生き残るための最善策を模索し始める。
スタングレネードで隙を作って逃げる、制圧射撃で相手を釘付けにして逃げる、全員でバラバラに逃げる……あらゆる選択肢が生まれては、しかし残酷な現実にことごとく否定されていく。
―――逃げ切れる気がしない。
(なんだ……なんだよコイツは)
一瞬でも目を離せば殺される―――そんな確信が、全員にあった。
「何だよ、せっかく来てやったのによォ……面白くねえ」
はぁ、と溜息をつくヘンリック。
その時だった―――半ば反射的に、アウルスがMP7A2の引き金を引いていたのは。
フルオートに入ったセレクターレバー。マガジンの中身を全て撃ち尽くす勢いで、ヘンリック目掛けて4.6×30㎜弾をぶちまける。
恐怖に錯乱したわけではない。今ここで撃たなければ、次の瞬間には距離を詰められ殴り殺されているという最悪の未来を、今日という日まで生き延びたアウルスのベテラン軍人としての本能が弾き出しただけの事だ。
アグリッパも右へと散開して発砲を開始。アウルスの隙を埋める形でセミオート射撃を捻じ込みつつ、部下2名が脱出する時間を稼ごうとする。
しかし規格外の男、ヘンリックが射撃に反応できない筈もない。
僅かな視線と指、筋肉の動き―――それだけで大まかな発砲のタイミングを推し量っていたのだろう。MP7から4.6㎜弾が吐き出されたのと、ヘンリックの狼のような脚が床板を踏み抜く勢いで床を蹴ったのは同時だった。
姿勢を下げ、4.6㎜弾の下を潜るように回避するヘンリック。
あまりにも速過ぎる瞬発力に、アウルスは一瞬ヘンリックの姿が「消えた」ような錯覚すら覚えた。発砲のタイミングに合わせ、身長2mの巨漢がそんな動きをすればそう錯覚しても無理はない。
加えて、ヘンリックはハイイロオオカミの獣人であった。
その走る速度と加速力、瞬発力は他の肉食獣と比較しても遜色のない森の狩人たちである。しかもヘンリックは一般的な第二世代型獣人ではなく、「二足歩行の獣」と形容するしかない姿をした第一世代型の獣人だ。
骨格も筋肉も、人間というよりは獣のそれだ。人間レベルの知能を持った獣、と言って差し支えないであろう。
事実、戦時中の竜人兵たちは第二世代型の獣人兵よりも、第一世代型の獣人兵を恐れたという記録がある。
人間程度の知能で、獣の如き身体能力を発揮する彼らは皆、生まれながらにしての兵器と言える存在であった。恐ろしい瞬発力で接近し喉笛を噛み砕く黒豹の獣人や、多少の被弾を意に介さず突っ込んでくるヒグマの獣人は特に恐れられた。
ヘンリックが強い理由の一つも第一世代型獣人という生まれにあると言っていいだろう。虎のように速い足を持たず、熊のように強靭な筋肉を持たず、狼の如き鋭い牙を持たない脆弱な人間。どれだけ背伸びをしても獣には到底敵わない人間の特徴を色濃く残した第二世代型獣人とは異なり、ヘンリックはほぼ獣そのままの姿である第一世代型獣人だ。
4.6㎜弾の弾幕がヘンリックを捉えんとするよりも先に、アウルスの視界にヘンリックの拳が映った。
殺られる―――。
己の死を悟るアウルス。最後の晩餐は車の中で食べたチョコバーだったか、とどうでもいい事ばかりが頭の中に浮かんでくる。
存外そんなものなのかもしれない。唐突に突きつけられた己の「死」。今際の際に何か思い出せと咄嗟に言われても頭に浮かぶ事など、所詮はその程度なのだ。恋人だとか家族だとか、そういった存在が瞬間的に頭に浮かんでくる人間などそういない。
唐突に揺れるヘンリックの身体。がくん、と身体が沈み込むようにブレたのを見逃さず、アウルスはあらん限りの力を込めて床を蹴り、左へと飛んだ。
アグリッパが咄嗟に放った一発が、狙ったのか偶然かはさておき、ヘンリックの脹脛を撃ち抜いていたのだった。
パンチを放つために踏ん張っていた足を唐突に撃ち抜かれ、力が抜けるヘンリック。アウルスの頭を叩き割らんばかりの勢いで放たれた右の拳は、しかしその目標を捉える事なく空振りし、ごう、と巨大な鉄槌が振り下ろされるが如き風圧と衝撃波がアウルスの右隣を通過していった。
ドカン、と後方の壁が崩れ落ちる。
直撃ではなく、また全力ではないヘンリックの一撃。しかしそれでも触れてもいない壁を倒壊させるほどの威力に、アウルスは背筋の凍る思いをしながらも後方へと駆け抜けた。
アグリッパもこの隙を見逃すまいと走り出しつつ、懐から手榴弾を取り出す。
フラグアウト、と声を裏返させながらも手榴弾を投擲。そのまま2人で全力ダッシュ、吹き飛ばされた玄関から扉の外へと脱出する。
手すりを飛び越えたのと、背後で炸裂音が轟いたのは同時だった。手榴弾が室内で爆発し、ヘンリックを吹き飛ばしてくれている事を祈りながら、部下が運転する車両の後部座席へと乗り込んで「出せ、出せ!」と叫ぶ。
「やったのか?」
「……だといいが」
至近距離で破片手榴弾をもろに受けたのだ。いくら多少の被弾ではびくともしない第一世代型の獣人とはいえただでは済むまい。
破片手榴弾の加害範囲は広い。爆風と衝撃波そのものでもそうだが、飛び散る破片も恐ろしい殺傷能力を持っている。そんなものを屋内で叩き込まれたのだから、もし仮にヘンリックが生きていたとしても無傷とはいかないだろう。
「隊長、何ですかアイツは!?」
運転席でハンドルを握る若手、マニウスがやっと平常心に戻ったのかそう問うてくる。この4人の中で天地戦争に従軍する事の無かった幸運な男だ。とはいえあと1ヵ月戦争が長引いていれば、彼も新兵として駆り出されていたのだろうが。
「ヘンリックだ、間違いない」
「ヘンリックって……あの”八艘飛び”の!?」
「ああそうだ。俺たち竜人の悪夢だ」
「そんな……」
ヘンリック―――その名前だけで、敵対者の心を折るには十分すぎた。
「奴は死んだって聞きましたぜ」
助手席でMP7A2を手にしたまま警戒を続ける中堅層、ティトゥスが言う。
「ああ、俺もそうなってくれてりゃあ今頃長い夢を見れた(※”枕を高くして眠る”的な意味の竜人の言い回し)んだがな」
あの男ほど、死んでいた方が世の中のためになった人間もいるまい。
とにかく、今はこの場を離れるべきだ。ヘンリックが自ら迎撃に出てきたという事は、このセーフハウス撃滅作戦は効いているという事である。今後も継続するべきだが、しかし最大の脅威が現場に出てきた以上は慎重にならざるを得ないであろう。
ぶわり、と背後で殺気が膨れた気がした。
マニウス、と名を叫びながら、運転席でハンドルを握る彼の頭を掴んで思い切り左に倒した。
直後だった―――背後から飛来した何かが、後部座席の窓ガラス諸共運転席のヘッドレストをぶち抜いて、運転席のフロントガラスまで貫通したのは。
それは道路標識だった。
その辺にある、何の変哲もない道路標識。とてつもない力でねじ切られたのであろうポールの断面は鋭く尖っていて、先端部には赤い塗装と『pause(一時停止)』の記載がある。
「うわーッ! うわーッ!?」
「あっ、ちょ、クソッ、何が起こって……ッ!?」
何が起こったのかを理解しパニックになりかけるマニウスと、隣の席で戦闘態勢を整えるアグリッパ。間一髪で事なきを得たアウルスもMP7A2を構えながら後方を警戒する。
先ほどの爆発といい、今の標識が飛んできた事といい、あまりにも唐突過ぎる非日常の到来に困惑し狂乱状態に陥るバンザビア国民たち。
右往左往する車列の間を潜り抜けつつ、エンジン音を高らかに響かせながら猛追してくるバイクの存在に気付いたアウルスは目を見開いた。
ヘンリックだった。
セーフハウスに転がっていた死体から拝借したのだろう、銃身を切り詰めたソードオフモデルのレバーアクションライフルを片手に、アメリア製の中古のバイクをフルスロットルでかっ飛ばしてくるのである。
横合いからいきなり突っ込んでくるピックアップトラックやトゥクトゥクを紙一重で躱し、こちらに銃口を向けるヘンリック。伏せろ、とアグリッパに向かって叫んだ直後、レバーアクションライフルから放たれた拳銃弾がアグリッパの頭上を通過、フロンドガラスをぶち抜いて前方へと抜けていった。
パパパ、と応戦するアウルス。アグリッパも、助手席のティトゥスも身を乗り出してMP7A2で射撃を開始。通行人や車両に命中しないよう細心の注意を払いながらも発砲する。
が、ヘンリックは全く速度を落とさない。
無理もない事だ。叶う事ならば周辺への被害を一切考慮せずに撃ちまくりたいものだが、よりにもよってここは大通りだ。周囲には露店が幾重にも並んでおり、間の悪い事に今日は日曜日。夜市が開催されているようで、大通りは買い物客でにぎわっている。
周辺への流れ弾を考慮しながらでは、ヘンリックの接近を阻めない。
しかしなにも考慮せずに撃てば何の罪もない住民に被害が及ぶ。
「マニウス、右だ! 右の路地に!」
「ッ!」
路地に入れば流れ弾を気にしなくていい―――追って入ってきたところを集中砲火で仕留めてやれる。
ヘンリックも後を追い、路地へと勢いよく突入してきた。そのまま壁を走る勢いで猛追してくるヘンリックが、しかし唐突に銃口を頭上へと向け、何度も引き金を引く。
発砲してはスピンコック、発砲してまたスピンコック……3回ほど繰り返したところで、アウルスはぎょっとした。
ヘンリックの狙いは、建物の壁面に据え付けられていた室外機だった。黄ばんだそれがぐらりと揺れるや、架台の上から転げ落ちて車のルーフ目掛け真っ逆さまに突っ込んでくる。
フライヤー72が揺れた。頭を殴られるような衝撃に、隣で射撃していたアグリッパが「ああっ、クソッタレ!」と悪態をつきながらM320グレネードランチャーを渡してくる。
「クソ野郎を燃やせ!」
装填されている事を確認し安全装置を解除―――後部座席からヘンリック目掛け、引き金を引いた。
狭い路地にまで追ってきたことが見事に仇になった。こうも狭ければ、如何に機動力に優れるバイクでも避けようがない。
ウイリーをするかのようにバイクを起こすヘンリック。しかし放たれた40㎜グレネード弾は、狙い違わず彼のバイクを直撃していた。
路地のど真ん中で、炎の華が芽吹いた。




