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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第388章 隠された谷の真実――大ゴブリンが守る秘密

少し間を置き、フィルードは静かに言葉を続けた。

「しかもだ」

「その個体自身に魔法適性がなければならない」

つまり――

「二重の幸運が重ならなければ、大ゴブリンは生まれない」

フィルードは腕を組み、しばらく考え込む。

(六体……)

(しかも同じ場所に)

そんな偶然が、自然に起きるとは思えない。

「レーガン」

彼は顔を上げた。

「お前が見つけたあの谷」

「間違いなく何かある」

そして即座に決断する。

「今すぐ地元の部落首長を呼べ」

「全員で行く」

「私たちが直接確かめよう」

レーガンはすぐ頷いた。

彼はよく知っている。

この国王陛下――フィルードは上位超凡者。

そして隣にいる女将軍エレナも同じく上位超凡者だ。

しかも二人の弓術は、もはや神業の域に達している。

(あの六体の大ゴブリンなど)

(脅威にもならない)

レーガンはすぐに軍団を再編成させた。

兵たちは慌ただしく準備を始める。

そこへ――

クルミの花領主が現れた。

彼はフィルードの姿を見た瞬間、顔を真っ赤にした。

(あれが……)

(本物の陛下……!)

彼は長い間、この王を崇拝してきた。

だが実際に会うのは、これが初めてだった。

クルミの花は地面に伏せ、少し硬い共通語で言った。

「属下」

「陛下にお目にかかれました」

フィルードは目の前の大柄なジャッカルマンを見て、軽く笑った。

そして手を差し出す。

「立て」

彼を優しく起こした。

「お前がクルミの花男爵か?」

クルミの花は緊張で背筋を伸ばす。

「は、はい!」

フィルードは頷いた。

「レーガンから聞いている」

「責任感の強い領主だそうだな」

そして少し微笑んだ。

「負傷した老兵たちの配偶者探しも手伝ってくれたとか」

クルミの花の耳がぴくりと動く。

(覚えて……くださっている!?)

胸が熱くなった。

フィルードは穏やかな声で言う。

「しっかり働け」

「功績が十分なら」

「爵位を上げてやる」

その言葉を聞いた瞬間。

クルミの花の顔が輝いた。

「必ず!」

「必ずや期待に応えます!」

何度も頭を下げる。

その間にも、大軍は進軍を開始していた。

再び――

あの谷へ向かう。

しばらくして、軍は谷の外周に到着した。

その瞬間。

フィルードとエレナは背中の弓を取り出した。

矢筒から矢を一本抜く。

戦闘準備は完了だ。

そして――

予想通り。

すぐにゴブリンたちに発見された。

軍が山の麓へ近づくと、谷の中から大量のゴブリンが現れる。

そして――

あの六体の大ゴブリンも姿を見せた。

彼らは下を見下ろし、明らかに困惑している。

だが次の瞬間。

フィルードとエレナを見た時。

その顔が一変した。

(……感じ取ったか)

フィルードは内心で笑った。

二人の体から放たれる強大な魔力の気配。

普通の超凡者とは、次元が違う。

フィルードは歩みを止めない。

「前進」

軽く命令する。

軍はゆっくりと谷へ進む。

距離が縮まるにつれ、山のゴブリンたちの緊張は高まっていく。

だが――

奇妙なことに。

誰も攻撃してこない。

ただ大声で叫んでいるだけだ。

さらに奇妙なのは――

六体の大ゴブリンが、慌てて手を振り回していることだった。

跳ね回りながら、何か合図を送っている。

(止まれ……と言っているのか?)

フィルードの目が細くなる。

距離が百メートルを切った時。

ついに大ゴブリンたちは本気で焦り始めた。

一体が前に出る。

そして――

両手を高く上げた。

周囲の普通ゴブリンたちへ向かって必死に叫ぶ。

牙を剥いて威嚇していたゴブリンたちが、戸惑い始める。

フィルードはこの光景を見て驚いた。

(これは……)

(降伏のポーズだ)

しかも。

(妙に慣れているな)

フィルードは手を上げた。

「停止」

軍が止まる。

今の彼は上位魔法防具を着ている。

この程度の敵を恐れる理由はない。

フィルードは大股で前へ進んだ。

エレナがぴったり隣に付く。

クルミの花領主も、自分の出番だと思ったのか、意を決してついてきた。

レーガンは後方で軍を指揮する。

近づくと、フィルードは六体の大ゴブリンをじっくり観察した。

(……なるほど)

彼らは一体のゴブリンを中心に囲んでいる。

頭には赤い毛が生えている。

魔力の気配から判断して――

(見習い中級)

つまり、この個体が首領だ。

赤毛のゴブリンは、フィルードに向かって何度も頭を下げた。

露骨なほど媚びた態度だ。

だが――

言葉は通じない。

フィルードも少し迷った。

(どう扱うべきか)

だが、とりあえず試してみることにした。

彼は周囲のゴブリンを指さし――

両手を上げるジェスチャーをした。

降伏の合図だ。

すると。

大ゴブリンたちはすぐ反応した。

首領ゴブリンがガラガラと何か叫ぶ。

周囲の大ゴブリンたちは散開し――

地面から木の棒を拾った。

そして普通のゴブリンたちを追い立て始めた。

ゴブリンたちは明らかに調教されている。

非常に従順だった。

次々とその場にしゃがみ込む。

この光景を見て、フィルードは思わず笑った。

(面白い)

(ここまで賢いとは)

この判断力は、普通の獣人部落でも知恵者クラスだ。

(超凡者になると)

(ゴブリンの知能はここまで跳ね上がるのか)

もし知能が低かったら。

彼らはとっくに突撃していただろう。

そして――

フィルードとエレナに数剣で全滅していた。

(自分たちの結末が見えている)

(だから従順なのか)

フィルードは隣のクルミの花に言った。

「兵に命じろ」

「普通のゴブリンを縄でつなげ」

「傷つけるな」

そして少し笑う。

「この部族は面白い」

そう言いながら、フィルードは大ゴブリンたちへ歩み寄った。

そして再びジェスチャーをする。

意味は明らかだ。

案内しろ。

つまり――

このゴブリン部落を見せろ。

大ゴブリンたちは一瞬迷った。

だが結局、折れた。

彼らはフィルードを連れて、谷の奥へ歩き始める。

フィルードは周囲を興味深そうに観察した。

谷の斜面には大量の洞窟。

だが驚くべきことに――

(配置が整っている)

一見粗末だが、明らかに計画的に掘られている。

もちろん臭いは強烈だった。

だが、それでも――

(今まで見たゴブリンとは違う)

やがて一行は山頂へ到着した。

そこはさらに整然としていた。

草葺きの小屋。

そして地面にはいくつもの炉。

石鍋がかけられ、魚と野草が煮込まれている。

フィルードは驚いた。

(……もう石器時代か)

このまま発展すれば、文明になる。

さらに細部を見る。

石鍋の使用痕。

古いものもある。

(これは一代じゃない)

(何世代も続いている)

フィルードは確信した。

そして彼は一籠の魚の前に立った。

籠の中には生きた魚。

フィルードはそれを指さした。

そして何度もジェスチャーする。

(川はない)

(湖もない)

(じゃあこの魚はどこから?)

これは間違いなく――

秘密の核心だ。

だが。

ゴブリン首領はとぼけた。

理解できないふりをする。

フィルードはすぐ見抜いた。

(……演技だな)

その目が狡猾すぎる。

次の瞬間。

フィルードの気配が変わった。

上位超凡者の圧力が一気に放たれる。

見習い中級の首領ゴブリンは思わず後ずさった。

エレナは即座に右手を腰へ。

片手剣を握る。

いつでも斬れる姿勢だ。

クルミの花も目を見開いた。

首領ゴブリンは悟った。

(誤魔化せない)

長い沈黙。

そして――

歯を食いしばる。

「ウー……ウー……」

奇妙な声を発する。

そして両手で合図した。

ついて来い。

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