第23話 死ねばいいのに
死に絶えた街が再び静寂を取り戻し、ソラの瞳に青い光が宿る頃。俺はソラの手を借りて、自動発電装甲車に三人の遺体を乗せた。
能代湊と長岡志奈乃、そして回収対象である土浦寧々。今度は俺も手伝いつつ、三人の亡骸の重みを両腕に感じながら、限りなく丁寧に。
発電装甲車の前でうずくまる、筑泉浮波。彼女は俺とソラが長岡の亡骸を抱えて戻って来た時から、ずっとこの調子だ。
「スカーレット、俺とソラは先に進み、最終目標を始末する。だからお前は、発電装甲車に乗り、援軍の補給支援部隊と合流しろ。援軍要請はもう済ませてある。援軍との合流ポイントまではオートパイロットで発電装甲車が導いてくれるから、お前は車に乗っているだけでいい。合流ポイントの中央区まで来た道を戻り、無事に帰還してくれ。……皆と、共に」
装甲車に乗る、亡骸たちと共に――。
衛星からの情報では、残す鉄華は最終目標であるSS級鉄華だけであり、帰り道に凶暴な鉄華も残されていない。よって、自動発電装甲車に乗り、来た道をゆっくりと戻れば、安全に援軍と合流できるはずだ。
軍本部からの要望で、北区よりも安全な中央区での合流となったが、たとえ残された鉄魔が発電装甲車を襲ってきたとしても、今までの筑泉の実力ならば、心配することはないはずである。
――彼女自身に、生きる気力があればではあるが。
筑泉は、もう戦えないかもしれない。多くの仲間を失い、恋人まで失って。恋人が敵の手に堕ち、遺言さえも残せずに動かぬ鉄となってしまって。目の前で――俺の手によって。
だが、能代の亡骸が傍にある限り、自らの身も能代たちの亡骸も、敵から守ろうとしてくれることを、期待する他はない。筑泉が彼のもとに逝くことを望まぬことを祈って。
と、ずっと塞ぎ込んでいた筑泉が、少しだけ顔を上げて、呟くように言葉を発した。
「あんたの死体の回収は?」
充血した瞳は俺に向くことなく、地を捉えていた。まるで、俺とは目も合わせたくないと言わんばかりに。
「……必要ない。俺の帰りを待っている者は、誰もいない。俺には……何もない。俺の帰る場所は……ここだ」
この街には、未だ回収されずに残された人々の亡骸が、冷たく横たわっている。
俺は、彼らよりも後回しでいい。
――どうせ、行き場のない身体なのだから。
「どうして……どうして湊が死んで、あんたなんかが生き残っているの? どうして……みんな死んだのに……あんただけ……どうして……」
目を腫らした彼女が、再び嗚咽をこぼす。声を枯らし、涙を枯らし、それでもなお、枯れることのない感情が溢れ出てしまうのだ。
「あんたが……死ねばよかったのに……」
「……ああ。俺も……そう思う」
俺には、彼女の言葉を受け止めることしかできない。
俺は、鈴を失い、鉄華に復讐することを誓った日から、涙を流す機能も、その資格も失ってしまったのだから。




