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第18話 Reason

 目を瞑ると、夢をよく見る。


 身体が硬直し、鉄となりゆく自分の姿を。



 俺が今まで数え切れないほど殺してきた、鉄の華のように。


 俺が今まで数えることすらせずに殺してきた、鉄の人間のように。


 これまで積み重ねてきた業が、身体を蝕むように。



 だが、怖くなどない。


 来るべき日が来たのだなと――ただ、そう思うだけ。


 なぜなら俺は、拒むほどの理由を持ち合わせていないから。


 生への未練を、持ち合わせていないから。



 俺は――死ぬのが、怖くない。



 死を恐れるほどの、生への執着を持ち合わせていない。


 死にたくない、生き残りたい、生きて帰りたい、生きてやりたいことがある、生きて会いたい人がいる――そう思えるほどの願望を、場所を、夢を、希望を、意義を、愛する人を――俺は持ち合わせていない。


 俺が死んだところで、誰も哀しまない――。





 天国の鈴は、こんな俺を見て、どう思うのだろう。


 俺が鉄華をたくさん殺して、喜んでくれているだろうか。


 俺が鉄華に復讐をして、笑ってくれているだろうか。



 鉄華をたくさん殺してくれて、ありがとう。


 鉄華に復讐してくれて、ありがとう。



 ……そんなわけがない。



 死んだ人は、もう二度と喜ばない。


 死んだ人は、もう二度と笑わない。



 俺のやっていることは自己満足であり、無意味なことであり、終わっていることなのだ。




 ――死んでしまった人に、生きている人ができることなんて、何もない……。




 それに、もし鈴が俺を見ているのだとしても、その顔は決して笑っていない。


 その顔は、きっと――泣いている。


 俺は謝ることしかできない。


 俺には、鈴が哀しんでいる姿しか浮かばない。


 でも、俺自身――どうすればいいのか、分からない。


 どうすれば、大切な人がいなくなった世界で生きていけるのか、分からない。



 鈴、ごめん……。






 ――死ぬわけにはいかない。


 俺の言葉ではない。


 ソラというロボットから出た言葉だ。


 ソラには爆弾が仕掛けられている。始めは花屋のロボットとして作られたのだとしても、今は立派な兵器ロボットである。


 ――ならば、彼女自身、いざとなれば積極的に自爆をするのだと、鉄華を滅ぼすためならば、何だってするのだと、それこそが彼女のアイデンティティなのだと、そう信じて疑わなかった。


 何より、俺とソラは同じなのだと思っていた。


 ソラも俺と同じ、がらんどうの兵器なのだと、そう思っていた。



『死ぬわけには、いかないのです』



 それは、兵器ロボットとしてではなく、花屋のロボットとして生まれてきたからなのか?


 兵器ロボットとしての自己は、あくまで上書きされたプログラムだからなのか?


 それとも、お前は俺とは違い、生への執着を持ち合わせているからなのか?


 なあ、教えてくれ。


 理不尽に大切な人を失ったお前は、どうして死を拒む?


 どうして、そんな風に笑っていられる?


 理不尽に大切な人を失ったお前は、理不尽に兵器に作り変えられたお前は、理不尽に身体に爆弾を組み込まれたお前は、いったい、何を思う?


 もし、お前に心というものがあるのならば、いったい何を思い、笑う?


 それは、プログラムだからか?


 心がないからこそ、笑えるのか?


 それとも、別の理由があるからなのか?


 なあ、教えてくれ。


 理不尽を、身勝手を、哀しみを、生きることを――ロボットのお前は、乗り越えたのか?


 もし、乗り越えたからこそ、笑顔でいられるのならば――俺にも、教えてくれ。


 死を拒む方法を。


 生きたいと思う方法を。


 大切な人のいない世界での生き方を。


 失われた世界での笑い方を。




 ……頼むから。



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