第17話 Fear
能代と話を終えた後、俺は少し時間を置いてから、ソラのもとへと足を運んだ。
ソラは自動発電装甲車から伸びたチューブを片付けている最中であり、どうやら、ちょうど発電装甲車からの電力供給を終えたところであったようだ。もっとも、ソラというロボットからすれば、食事を済ませたところと言った方が正しいのだろうが。
「ソラ、お前に訊きたいことがある」
「はい、何でしょう?」
ソラが透き通る青の瞳で、じっと俺を見つめる。
能代の問いには、まだ答えられない。
いや、本当は答えなどとっくに出ているが、口に出すのを躊躇っただけだ。
だがしかし、俺にだって、能代にあそこまで言われれば、能代の言いたかったロボットの最大の利点が分かる。
「お前は……死ぬのが怖いか?」
俺ははっきりと、とりわけ「死」という言葉に力を込めて、声を発した。
戦場にロボットを導入することへの一番の利点は、ロボットが死を恐れないことだ。
ロボットは怒りに身を任せて無謀な特攻をしたり、敵に同情して攻撃を躊躇ったり、死に怯え、戦場から逃げ出したりすることはない。
特に、兵器ロボットであり、身体に爆弾を仕掛けられているソラには尚更言えることであり、壊れることこそが本望だとさえプログラムされているのかもしれない。
「…………」
俺はソラの答えをじっと待つ。ソラは俺と目を合わせたまま、時折人間のように瞬きしながら、俺の言葉の意味を人間のように思考しているようにも見える。
「申し訳ございません。私には、怖い、というものがどのようなものなのか、分かりません」
「……そうか」
俺は落胆などしていなかった。そのような答えが返ってくることを、予想していたからだ。
ソラは一度も「嬉しい」や「楽しい」など、感情的な言葉を口にしていない。もちろん「怖い」「哀しい」と言った感情も口にしていない。
ロボットには、人間が人間として最も誇れると言っても過言ではない、感情というものが分からないのだ。
「ですが、私は、死ぬわけにはいきません」
――なん、だと?
ソラの思いがけない言葉に、俺は固まった。
「死ぬわけには、いかないのです」
目の前のロボットは、もう一度言った。はっきりと、力強く。言い終えた後に、満面の笑みを添えて。




