第12話 Angelic Devil
カンカン、カカカン、テンテン。
轟く発砲音とともに、リズミカルな音が聞こえてくる。
音の先にいるのは、三匹の大型犬。ただし、三匹とも血色が悪く、全身が鈍色の一色に染まっている。――鉄還りをし、鉄魔となったバケモノだ。
「クソッ! くっ、来るんじゃねぇ!」
叫びながら拳銃を撃つのは、二人組の屈強な男たちである。大柄な身体に似合わず、その表情は今にも泣き出しそうだ。
そんな男たちの悲痛な願いを鉄のバケモノどもが聞き届けるわけもなく、鉄魔らは男たちの方へと真っ直ぐに迫る。脇目も振らず、銃弾をもろともせずに。
上空から一連の様子を見ていた俺は、鉄のバケモノの頭を熱線銃で打ち抜く。一匹、二匹、三匹。犬の形をしたバケモノたちの頭が、一瞬にして熱線で掻き消え、動かぬ鉄の塊と化した。
「わめくな。鉄魔に鉛玉は通用しない」
俺は地上に降り立ち、自分よりも明らかに年上な大人たちを睨みつけた。
現在、俺や俺の参加する部隊がいるのは、サミハラシティの南区である。俺たちは、サミハラシティ鉄華殲滅・奪還作戦の決行中だ。
鉄華や鉄還りをして鉄魔となったバケモノは、鉄壁という言葉に打ってつけの非常に堅固な存在であり、打撃は当然のこと、鉛玉を放つ銃程度の攻撃では、ダメージを与えるどころか、ひるませることすらもできない。そのため、対鉄華・鉄魔用の武器の大半は、熱線銃や燃焼剣などの熱による破壊を主とした武器となり、F・フォースやPMCの者たちはそれらを装備している。
鉄華や鉄魔は限りなく純鉄であるが、身体に極微量の炭素を含む生命体であり、身体の部分によって瞬時に炭素の割合を変えることで、強度や延性を変えてしなやかに動くことができるという話を、インターネットの記事か何かで目にしたことがある。
また、鉄華が強力な磁気を保有しているという説も聞いたことがある。磁性粒子としてFe原子が働くことで強力な磁気を生み出し、一部を瞬時に硬化する。それによって、矛と盾の役割を担っているそうだ。
こちらの説の方が世間的に有力であり、磁性を消去もしくは不安定にさせる消磁兵器が研究開発されているそうだが、鉄華に影響を及ぼした成功例は未だ耳にしていない。
我々が装備する軽量リキッドアーマーも、それと同じ原理を用いた戦闘スーツだそうであり、外部からの衝撃を受けると、アーマーの素材である磁性流体金属が瞬時に硬化し、我々の身を守ってくれるそうだ。
だがしかし、F・フォースの軍人やPMCの契約者など、現場で鉄のバケモノを始末する者たちは、化学的なことはさっぱりなので、敵は鉄に似た特殊な金属、未知の金属であると大半が納得しており、俺もそう認識している次第だ。
「ここは立ち入り禁止だ。速やかに引き返せ。そうすれば、補給支援部隊がお前たちを保護してくれる。少なくとも、命は保証されるから安心しろ。それと、お前たちが手にしているその楽器は、ここに置いて行け。そんなものは、鉄魔たちを呼び寄せるだけだ」
俺は男たちに熱線銃を向けながら、顎で促す。鉄華や鉄魔は音に対して敏感に反応し、音の発生源に向かって襲いかかる。そのため、やかましい発砲音とともに鉛玉を発射する旧時代の武器は、鉄華にとっては餌場を教えるための楽器にすぎないのだ。
鉄還りをした犬たちが、男たちの騒ぎ立てる声や銃声などの音に反応して細い路地に入り込んだように、俺も音を頼りに路地の様子を見に来た次第である。大方、彼らは立入禁止区域に残されている売れそうな物を探しに来たゴロツキといったところだろう。
「長岡、補給支援部隊へ不法侵入者二名の保護要請を頼む。今からそっちへ向かわせる」
〈了解した。よくやった、真我里〉
左耳から入る声を聞き届け、俺は不法侵入者たちへと向き直る。左耳に装着しているのは、イヤーリンクと呼ばれるウェアラブル無線通信端末だ。手放しで部隊の者たちと連絡を取り合うことができ、命令一つで、通信相手を選択・変更できる便利なアイテムである。作戦展開中は、同じ部隊の者たちとのチャネルを開いたままにするのが原則だ。
「おっ、オレ……鉄の犬っころに引っ掻かれたんだけど、どっ、どうすれば……」
大柄な男の片方が情けない声を上げて、出血している右足を前に出した。
「鉄還りを心配しているのか? それならば、鉄華に攻撃されていない限り大丈夫だ。見る限り、ただのかすり傷だな。早く戻れ」
俺は言い終わる間もなく、男たちに背を向ける。傷は浅そうだが、もし男が鉄魔となった犬に噛まれていたとしたら、単なる犬であった頃の数倍にも増した顎の力によって、男の右足は噛み切られていたことであろう。日頃の行いは悪そうだが、神と俺はこの男を見放していなかったというわけだ。
地球上の生命体は鉄魔から傷を負わされたとしても、鉄還りをすることはない。それに、もし鉄華に攻撃され、身体に種を植え付けられたのならば、ただちに傷口から身体の鉄化が進行し、ものの数十秒で鉄魔へと変貌するので、既にその時点で手遅れである。泣きべそをかいている間に、涙も流せない身体へと変わってしまうのだ。
「あ、そうだ。くれぐれも、大通りには出るなよ。大通りは今、リサイタルの真っ最中だからな」
「は? リサイタル?」
「ああ。俺はただ、リサイタル中に騒ぐお前らを注意しに来ただけだからな」
そう言って、俺は強化レッグによる跳躍と、ラビットブースターによるブーストとの合わせ技で、空中へと飛び上がった。
ラビッ トブースターは鉄華の攻撃対策には必須の飛行ユニットである。ジェットパックの小型・軽量化に成功したポケットサイズの物であり、俺はそれを背中の両肩甲部付近に一つずつ、両足の踵付近に一つずつ、両腕の肘付近に一つずつと、合わせて六つを装着している。
F・フォースの大半の者は、ラビットブースターを背中の両肩甲部付近に二つ装着するのみであり、俺のように六つも装着している者は、PMCの中でも数少ない。ラビットブースターが高価な物であり、軍がケチっているという点ももちろんあるが、一番は扱いが難しく、両腕両足に装着した操作が高難度であるためだ。
さらにラビットブースターは、バッテリーの持ちが悪く、常に飛行しているとあっという間にバッテリーが切れてしまう。そのため、ラビットブースターの使用手段としては、強化レッグだけでは鉄華の攻撃を避けられない有事の際に、やむを得ず使用するのが凡人兵士の通常である。
今日のミッションでは、補給支援部隊が後方に控えているので、使えるだけ使って後でせしめようというのが、俺の魂胆ではあるが――とにかく俺は、飛行することによって素早く大通りの方へと帰還した。
そこは、戦火の真っ只中であり、鉄魔の巣窟――動物狩りの場だ。
犬や狼、猪、羊、牛、熊、鳥、猿、象、シマウマ、キリン、虎、ライオン、エトセトラ――。
様々な動物の形をした、有象無象の蠢く鉄の塊たち。動物園が鉄華に襲われ、そこにいた動物たちが鉄還りをしたというわけだ。
どの動物たちも、がむしゃらに俺の参加する部隊の方へと向かってくる。まるで神様から、人間を殺すことができた動物から順に、新たに十二支の椅子が与えられるかのように。
表立って鉄の動物たちを迎えるのは、長岡を隊長とした六名と一台である。F・フォース所属の軍人五名とSPMCの契約者である俺、そして、人型AIロボットのソラだ。
俺は大通りで広く展開する部隊の中ほどに着地した。
前衛で積極的に鉄魔となった動物たちを無力化しているのは、能代と佐伯の二名。中衛には俺と松原とソラが、後衛には長岡と筑泉がそれぞれ陣取る。
〈《人枯》と呼ばれていても、人助けはするんですね〉
と能代の声が耳に入る。能代は両手に二丁の小型熱線銃を持って戦うスタイルだ。
「別に、耳障りだったからにすぎない。それに、これからすることに比べれば、何の罪滅ぼしにもならないからな」
俺は向かってくる鉄魔の頭を、熱線銃で撃ち抜きながら答える。鉄の馬、鉄の猛牛、鉄の豚。どれも肉まで鉄となっており、焼いても食えやしない。使い道があるとすれば、鉱物としてか趣味の悪いインテリアとしてだけだ。
俺はさらに、猛突進してくる鉄還りをしたサイを、右手に構えた燃焼剣で薙ぎ払う。サイの首がクルクルと宙を舞い、地面へと落ちたが、それでも頭部は動くことをやめず、ガタガタと気味の悪い動きで俺へと近づく。俺は左手に持つ熱線銃で、容赦なく脳みそを撃ち抜いた。
「……ちっ、やっぱ出るよな」
俺の舌打ちとともに、前方から姿を現したのは、鉄還りをし、鉄魔となった人間。三年前、鉄華の攻撃によって殺された、サミハラシティの住民――死してなお、滅んだ街をさまよい続ける、哀れな鉄の塊だ。
〈皆の者、鉄還りをした元人間だ。我々の手で、鉄の楔から魂を解放するよ〉
長岡の呼び掛けが耳に届く。
「ああ、了解した」
俺だけではなく、長岡が率いる部隊の各々が同意の言葉を発する。
鉄華との実戦を経験している者たちは、誰もが鉄還りをした人間を無力化することを経験している。コレは既に人間ではないのだと割り切り、額を撃ち抜くことを。
一度鉄還りをしてしまうと人間に戻ることは不可能である。鉄でない姿に戻れた例は一つもなく、できることは脳に植え付けられた種を破壊して、楽にしてあげることだけなのだ。
鉄魔となった元人間たちが、俺の方にも向かってくる。無言、無表情。ゆっくり向かってくるのもあれば、動物たちのように猛突進してくるのもある。汚れまみれの色あせた衣服を着た、金属の光沢がある、人の形をした鈍色の鉄人形。
俺はセレクターのポジションを切り替えて、熱線を細くし、熱線銃の標準を鉄の人間の額に合わせて、迷わず撃ち抜く。
小太りの女性――片方の紐が切れたエプロンを着ており、おそらく料理中に鉄華に襲われたのだろう。
背の高い中年男性――まだらに汚れたビジネススーツでは、商談も失敗してしまうに違いない。
背筋の曲がった老人――そんなに速く走れるのならば、高齢者の陸上大会で優勝も
狙えることだろう。
俺は自らの責務を果たすために、次々と撃ち殺す。ただひたすら、自分のために。
「松原、無理に一撃で仕留める必要はない。まずは敵の動きを止めろ」
俺は今回のミッションが初陣だという経験の浅い男に、声をかける。俺よりも二つ年下の期待のルーキーだそうが、さすがに初陣で鉄還りをした人間の額を撃ち抜くのは、精神的に厳しいように見える。鉄魔となった動物にしろ人間にしろ、まずはとにかく敵の動きを止めることから始め、トドメは俺や他の隊員が刺せばいい。
まあ、これからも戦場に立つのならば、いずれは自らの手でトドメを刺さなければならず、避けられない道ではあるが。
おそらく松原は、この戦闘の後、罪悪感と嫌悪感で嘔吐することだろう。だが、それがまともな反応だ。
〈マツカワです、マツカワミキヒロです! りょ、了解しました!〉
……おっと。名前、違ったか。
マツカワ……確か、松川……ナントカ木。
……広木?
しまった、もう忘れた。
まあ、いいか。
〈うぉおおおおぉおおおおっ! もっと、もっと来い、もっと来い、もっとこおぉーい! 足りんぞ、ぜんぜん足りんぞぉおおお! もっと、ボクに向かって来んかぁあああああ!〉
前衛で戦う佐伯の声が、耳を襲う。信じられないほど、うるさい。
佐伯は燃焼剣の使い手であり、熱線銃を使わない。燃焼剣を両手で持つ一刀流スタイルで、軍内では剣豪とまで言われる、剣の凄腕だ。
二十九歳で位は軍曹。元々は軍の別の組織に所属していたそうだが、剣の腕を買われてF・フォースへと異動してきたという話を聞いたことがある。
佐伯は大声を上げながら、向かってくる鉄魔となった動物や人間を、侍のように斬り捨てている。
鉄華や鉄魔は音に最も反応する。よって、彼の戦うスタイルは、敵をおびき寄せるためのものなのだろう。
だが、それにしても、うるさい。
鉄華や鉄魔は熱にも敏感に反応するため、音さえ出さなければ襲われないというわけではない。音や熱の規模に応じて規則正しく反応するのでもなく、その生態には判明していない点が多いが、少なくとも、音や熱に関わらず人間を敵としてみなしていることだけは確かである。
知的生命体、知的存在として地球を代表したつもりになっている人間を。
〈うぉっぉおぉおおおおおおおおおおおおぉっ!〉
……やはり、うるさい。うるさすぎる。
〈佐伯軍曹、リンクアウト〉
〈ハハッ、浮波。正直すぎ〉
能代が筑泉の言葉に爆笑した。
〈コラ、スカーレット。音量を下げる程度にしておきな〉
長岡が筑泉に向けて注意を促す。『スカーレット』とは筑泉浮波のコールネームだ。筑泉浮波と能代湊のコンビは軍内において有名なのだそうで、銀髪の能代のコールネームがシルバであることに対応してか、赤髪の筑泉のコールネームもスカーレットとなっているようだ。
後衛の筑泉は、長物熱線銃によって鉄還りをした生物を無力化している。長物熱線銃を使うのは、この部隊では彼女が唯一だ。
〈うぉぉおぉおおおおおおおおおおおお! もっと、もっとぉおぉおおっ!!〉
佐伯の雄叫びが、先ほどにも増して、ますます、より一層うるさくなる。
「……オーダー。佐伯、リンクアウト」
俺の命令にイヤーリンクが素早く反応して、耳障りな声は掻き消えた。
まあ、問題ないだろう。
〈警告。エネミー、フラワーB級、シェル・フレシェットE型。北北東、距離四百。見えます〉
抑揚のない淡々とした口調。それに似つかわしくない、女の子の声。人型AIロボット、ソラの声だ。
「さて。やっと、本命のご登場か」
前方、だいぶ遠くにあるビルが、音を立てて崩れる。姿を現したのは、五十メートルほどある巨大な鉄華だ。
サボテンのような姿で全身に無数の針がついており、頂上には鈍色の華が咲いている。露出した根っこがタコ足のように蠢き、のそのそと動いている。全身が鈍色の鉄の塊であり、人類が倒すべき敵だ。
俺も含め、部隊の者たちが、熱線銃で一斉に巨大サボテン鉄華を撃つ。しかし、さすがのシェル型。装甲が厚く、熱線を貫通させることができない。ドリアンのようにも見える巨大鉄華は、攻撃をもろともせず、動きも止まらない。
〈硬いですね。僕の小型熱線銃じゃ歯が立ちません。軍曹、斬りかかっちゃダメですよ〉
能代の言葉とともに、佐伯が叫んでいるのが俺の耳に入る。リンクアウトしているので、能代のマイク越しだが。
とその時、サボテン鉄華の全身に生える大きくて長い針が、お返しと言わんばかりに一斉に放たれた。
巨大すぎて、針というよりは槍だ。
俺はそれを、右に少し跳ぶだけで難なくかわす。巨大針が地面に刺さると同時に、大地が揺れ、針の被害を受けた建物は騒々しい音を立てて倒壊した。
範囲だけは異常に広い派手な攻撃ではあったが、警戒している中であれば、この程度の攻撃など容易に避けられるレベルである。
〈こちら、長岡。皆、大丈夫か?〉
「こちら、真我里。問題ない、無傷だ」
俺は冷静に答える。他の者たちからも同じような返答があり、どうやら部隊の者たちは、全員が巨大サボテン鉄華の攻撃を避けたようだ。
〈こっ、これが、鉄華の攻撃……。当たると、一撃であの世行きッスね……〉
〈松川一等兵、こんなのはまだ脅威でも何でもないよ。図体がデカイからB級となっているけど、コイツの攻撃に関しては、C級レベルの他愛もないものだからね〉
長岡が初陣のルーキーに声をかける。俺もこのようなサボテン鉄華と対峙するのは初めてであったが、U(Unknown)型ならまだしも、フレシェットE(Explosion)型と分かっている以上、針よりも大きな矢弾が拡散的に飛んでくるのだと予想がつくため、ディフェンス面においては、長岡の言う通り脅威には感じない。
だが、オフェンス面においては、苦戦を強いられ、持久戦になりそうだ。こちらの熱線銃のエネルギーが尽きる前に、撃破できるかどうかが、勝負の境目となるに違いない。
「長岡、どうするんだ? 明らかに火力不足だぞ。軍の上層部にTBMの発射でも要請するのか?」
俺はそう言って、長岡に返答を求める。
――と、
〈皆さん、下がってください。一掃します〉
声に反応して、俺は声の主の方へと顔を向けた。
声の主であるソラは、彼女自身の背中から飛び出た、ウイングアームと呼ばれる羽のような内蔵飛行エンジンによって、宙に浮いていた。
俺やF・フォースの隊員たちのような軽量リキッドアーマーを装着した兵士の服装ではなく、初対面の時と同じ黒服にエプロン姿という、圧倒的に場違いな服装である(ただし飛行仕様なのか、背中がむき出しとなった、ややエロい服装である。いずれにせよ、戦場には全くもって似つかわしくない)。
リボンを形成する腰紐には、燃焼剣の柄が結ばれてあり、右手には熱線銃を手にしている。その辺りはいかにも鉄華と戦う兵士なのだが――ソラは何も持っていない左手の方を、有象無象の鉄魔たちへと向けている 。人間が相手ならば、逆だろと言ってやりたくなる光景であったが――ソラの左手が銃口のように変形し、眩しく光った。
俺たちの持つ熱線銃とは比べ物にならないほどの高出力エネルギーが、大地を這いつくばる鉄魔たちに向けて放たれる。
そして、一通り大地を破壊した後、それは巨大サボテン鉄華へと向けられ、鉄華に対して、種をくり抜かれたパイナップルのような真円の大穴を空けた。
〈うわ、すごっ! 羽の生えた魔法少女みたいですね!〉
と能代の驚きまじりの声が耳に入る。
〈……やるじゃん〉
無口な筑泉の声も聞こえてきた。
イヤーリンクから聞こえる皆の称賛の声、佐伯の雄叫びや後方の補給支援部隊の歓声までもが辺り一帯に轟き、それは我々の一時の勝利を表す福音であった。
「…………」
俺はふわりと地上に降り立ったソラへと近づく。
その姿は神罰を下した天使のようにも映ったが、無表情で、何より、先日見た時とは違い、瞳の色が湖畔の水面のような青ではなく、たぎるマグマのような赤である。
先日のロボットとはまるで別のロボットであるが、若葉色の髪に俺がプレゼントした花の髪飾りがつけてあり、先日俺とデートをしたロボットで間違いないようだ。
あの時の姿――淡い青色の瞳を俺に向けて、ニッコリと微笑む女の子としての姿ではなく、これこそが、ソラの兵器ロボットとしての本当の姿、悪魔の姿ということなのだろう。




