おまけストーリー 騎士道少女とサムライガール 第3話
※ここは前書きです。本編を楽しみたい方は飛ばしてください。
「さあ、賭け狂いましょう」
みなさんこんばんは、そしてこんにちは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す。元気してたかな?
さて、突然ですが間宮冬弥の近況です。
「さあ、賭け狂いましょう」←と、こんな事を言ったのは訳があります。それは、間宮冬弥がいまハマっているマンガに出てくるセリフでっす!いや~面白い! とくに芽亜里ちゃんがいいと言ってました!
でもね、こんなにもハマってるマンガだけどね、実はツ○ヤでレンタルして読んでるんだよね!
じゃあ買えよって話だよね、あはは!
近況終わり。では、本編をお楽しみください。では!
抜刀できない少女と騎士道ガール
episode of side-N
●おまけストーリー
『騎士道少女とサムライガール』第三話・抜刀覚醒
「ちょっと、待ったぁ!」
駆け出したわたしと紫苑を咎めるような叫び声。
「えっ?! ええっ!?」
「うひゃあ!」
紫苑とわたし。戸惑いの声を上げその声の主である霧島さんを見た。
霧島さんは手のひらを突きだしたまま止まっている。つきだしたのが手のひらじゃなくて、人差し指だったら法廷バトルゲームのツンツン頭の弁護士だ。
「ふたりの世界に入ってるところごめんだけど、ふたりはここで戦おうって言うのかな? 神夜さんはスパッツを穿いているからいいけど……姫乃木さんはここで戦ったらパンツ丸見えだよ?」
「えっ? あっ!」
紫苑は片手でスカートを押さえ顔を動かしキョロキョロと見渡す。
「あ……そっか……」
わたしも紫苑と霧島さんの意図に気づく。
わたしも辺りを見渡す。そうだ。ここは『公園』だ。公園と言うからには『ひとがいる』
この前は日曜日の早朝だったから人がまったくいなかったけど……今は平日の夕方。家族連れや、友達と遊んでいる子供や待ち合わせのひと。それから夕方のマラソンを楽しむひと。体操をするひとやダンスの練習をしているひと達がいる。
それに、わたしって戦いの最中にパンツを見せないためにスパッツを穿いてきたんだった。
「……」
それに……なんでかわからないけど……迷彩服をきた完全武装のひとたちもいた。
待ち合わせ? それともここでサバイバルゲームでもするのかな?
「う〜ん、どうしようか……」
紫苑と戦う気マンマンで走っちゃったけど……周りが見えてなくて……やっぱりわたしはまだまだだな。
「そうだなぁ……姫乃木さん」
「は、はい?!」
まだ霧島さんに緊張しているのか紫苑の声は強ばっている。
「姫乃木さんのその制服って……もしかして、陽奈森の生徒さんかな?」
「う、うんそうだよ……」
「そっか……」
霧島さんは何かを考え込んで、自分のカバンからスマホくらいの大きさの『機械』を取り出した。
「姫乃木さん。学生証って今日持ってよね?」
「学生証? うん持ってるけど?」
「少し貸してくれないかな?」
「いいけど……何に使うの?」
声からして戸惑ってる紫苑。まぁ、いきなり学生証貸してなんて言われたら戸惑うよね。
「ふたりが思いっきり戦えるよう、『ポイント獲得フィールド』を解析して、そこに行くから」
「解析?」
「そう。だから、少しの間だけ貸して」
霧島さんは念を押すように紫苑を急かす。
「ポイント獲得フィールドで戦うの? 私たち?」
「そう、聞くところによるとあそこって誰も入ってこれないでしょ? だから思いっ切りやれそうでしょ?」
「う、うん……そうだけど、仮に行けたとしてもポイント獲得フィールドはここからじゃいけないよ?」
「わかってるよ。だから行けるようにカード情報を解析してここを移動させるんだ」
「解析? 移動って……空間座標を?」
「そう」
「そんなことできるの?」
「できるよ」
「無理だと思うけど……」
う〜ん……ふたりが何を言ってるのかわからないなぁ……ポイント獲得フィールド? カード情報? 空間座標? なにそれ? 何語なの? 犯罪臭がしそう。
「大丈夫。『自称、紫乃宮を越える天才』が作ったこれがあればね」
霧島さんは取り出した機械を紫苑に見せびらかすように自信満々に左右に振った。
「そんな小さな機械でできるの?」
「できるんだな、それが」
「へぇ〜」
「で、そろそろ学生証を貸してほしのだけど、いい」
「あ、ごめんね」
定期入れから学生証を取り出し、霧島さんに手渡しした紫苑はどこか不安そうだ。
「ありがと。解析まで時間がかかるからどこかで適当に座って待ってて」
「あ、うん……じゃあ那凪ちゃん。座ってよっか」
「そうね」
紫苑とわたしは適当なベンチに座りその解析とやらが終わるのを待つのだった。
◆
「まさか、本当にこの餞別が役立つ時がくるなんて……」
「まったくだ。『天才を越える天才』と言うだけはあるな……あいつはやっぱすごいな」
「ほんとだよ……」
霧島かなたとその兄は『天才を越える天才』が作り出した名もない『機械』に目を釘付けにされていた。
「ポイント獲得不可……空想具現武装端末使用不可……ん? 制限時間解除? これは選択可能なのか……じゃあYESと」
端末を操作する霧島とそれを見ている兄。
天才を越える天才が作り出した機械は姫乃木の学生証を差し込んだ瞬間に起動しものすごい早さで0と1と英語が液晶画面に映し出されては消えて行き、スクロールされていく。その英数字が流されていくたびにカード情報が解析がされていく。
「君には空間の座標移動が必要な時が必ずくる。これはその時に役立つからいつでも持ってって言ったけど……あのひとは未来が視えているのかな?」
「どうだろうな? 未来視なんてものは結果を聞いたものが感じ取る感想だ。占いみたいなもんだろ? あいつ自身が未来なんてものは視えてないんじゃないか?」
「そうかなぁ……じゃあ私の過去を視たのかな?」
「過去を視た? なんでそう思うんだ?」
「うん、あのひとなら私の過去を視て未来の可能性を計算して、一番辿り着く可能性がある未来線をはじき出す。その答えに従ってこれを私にくれたんじゃないかなって思うんだよね」
小型の機械は延々と英数字と0と1を画面に垂れ流し続けている。
「過去を視て未来の可能性を計算する……なるほど過去視か……そんな事は思いつかなかったな。だけど、なんとなくかなたの言ってることは真実味があるな。あいつなら過去が視えなくても、『未来を計算』する方程式くらいは思いつきそうだ」
「そうだよね……でも、『未来に答え』を出したらそれはそれでつまんないけどね」
「まぁ、そうだな。『未来ってのは未定』だからいいんだよな」
「うん。わからないから未来なんだよ……あ、そうか……」
「うん?」
霧島かなたは何かを思いついたような声を兄にあげた。
「だから……あのひとは、毎日つまらなそうな顔をしていたんだ……」
◆
「出鼻、くじかれた感じだね」
ふたりでベンチに座り、離れた距離にいる霧島さんの解析作業を見つめている。
「うん……」
「……」
紫苑の声はどこかフワついている。心ここにあらずって感じ。
「不安?」
「那凪ちゃん? うんそうだね不安。もし……抜刀してたら……」
紫苑は鞘に収まったままの昨夜をじっと見る。
「三分だけど紫苑が考えて考えて苦しんで、もがいて出した答えでしょ? まぁ、苦しんでいたのは三分じゃないと思うけど。その答えは本物だよ」
「ありがとう。二年間悩んでた。苦しんでた。もがいてた……今でも、答えを出した今でも私は……これから戦って那凪ちゃんを……」
「わたしなら大丈夫。だから思いっ切りきてほしい」
ベンチから腰を上げ、立ち上がり紫苑の正面へと向く。
「わたしは霧島さんのようにはならない」
「だけど……」
「それ以上言わない」
わたしは左手の人差し指で紫苑の上唇を塞ぐ。
「大丈夫だから、ね」
「……うん」
紫苑は顔を赤らめうつむいてしまった。ガラでもないウインクをしたから笑いをこらえてるのかも。
「那凪ちゃん……かわいい」
「はぁ!?」
紫苑の言葉にわたしはドン引き。何を言ってるの紫苑は……か、かわいいって……!
「ウインクした顔。はじめてみたよ」
「忘れなさい」
「忘れないよ。だってすごくかわいかったもん」
「いいから忘れて!」
ううっ〜恥ずかしい。まさか、かわいいなんて言われるなんて……誤算だったぁ〜
「あはは。忘れないって」
「あんた、性格悪くなったんじゃないの?」
こんな紫苑も初めてみたかも。でも、いい傾向かも。
「お〜い、終わったよ〜こっち来て」
後方から霧島さんの声が聞こえる。
「わかった〜 じゃあ行こう紫苑」
「うん」
左手を差し伸べ、紫苑はわたしの手を握った。
◆
「じゃあ、これから強制的に空間座標をずらしてフィールドに飛ぶから。あ、学生証ありがとね」
紫苑に学生証を返し、わたしたちに宣言する霧島さん。
「これは姫乃木さんに言っておくね。まずポイント獲得はできない。それと空想具現武装端末だっけ? それも使えない。今持ってる刀だけが武器」
ふぁんたずま? なに? また中二病チックなネーミングが出てきたものね。
「制限時間はなし。無制限。いつも通りの5分じゃないから気をつけて。それからドロイドも使えないから荷物は私が預かりるね。それは神夜さんも一緒。ここまではオッケー?」
「うん」
制限時間はなしか……となると、『完全決着』ってことね。
「神夜さんも?」
「あ、うん。でもわたしのは荷物のくだりだけでしょ? 大丈夫よ」
「よろしい」
霧島さんは納得したようにひとつ頷いた。
「じゃあ、戦闘フィールドに行くよ!」
霧島さんが声高らかに叫ぶ。
そして、霧島さんは自分が持っている機械の液晶画面にタッチした。
「えっ?」
空間が歪む。歪んでクネクネして……
「キモっ……」
気持ち悪いほど歪みまくる。大丈夫なのこれ?
「大丈夫なの? これ」
耐えきれず霧島さんに訊ねる
「た、たたたたたたたたぶん……だ、だだだだ大丈夫だから。落ち着いて」
「おふぅ……」
霧島さぁぁあぁぁぁああぁぁああん! 大丈夫だよね?! これ大丈夫なんだよね! なんかすごく不安だけどぉ!
「ねぇ……紫苑。フィールド移動っていつもこんな……」
今度は紫苑の方に向き直る……でも、そこには
「だ、だだだだ大丈夫かなぁ……これ大丈夫なのかなぁ……」
しおおぉぉぉおおぉぉおぉぉぉおおぉぉおおん! あんたもかぁ!
「えっと……霧島さんのお兄さんはどう思います……」
と、霧島さんのお兄さんに方へと向くと……
「気持ち……悪い……うぷっ!」
「あっ! ちょっと! 兄さん!?」
と、歪んだ空間に何かを吐き出す寸前だった。
とっさに目をそらしたので何を吐いたのかは確認せずにすんだ。
◆
「ふっ……よかった」
不安がること約二分。空間の歪みはとまり、空間は安定してきた。
「ふぅ。うん大丈夫だったね」
霧島さんの言葉を受け辺りを見渡す。
そこはわたしたちがいた公園。何も変化はない。太陽の日差しが指す夕暮れ時の公園。でも決定的に違う事がある。違うのはわたしたち四人以外は『誰もいない』事だ。
「無事、空間座標移動は完了っと。ここならパンツが見えても大丈夫だよ」
持っていた液晶画面を見ながら霧島さんが言う。
「そうだけど……」
紫苑は霧島さんの後ろにいるお兄さんをチラチラと見る。
「配慮がなかったな。すまん……かなた、俺先に戻るわ」
「あ、うん、ごめん私も配慮が足りなかった。私も戻るよ」
「いいよ。かなたはこのふたりの戦いを見届けろ」
お兄さんは霧島さんの持つ機械の液晶にタッチした。
「わかった。戻ったら携帯に連絡入れるね」
「おう」
その言葉を最後に霧島さんのお兄さんはぽっかりと空いた空間へと入っていった。
「もういい?」
「うん。いいよ。思いっきりやって」
「わかった……じゃあ紫苑。やるよ」
セルシウスを抜き紫苑の方へと向く。
「うん。やろう」
紫苑が咲夜の鞘を力強く握る。
「では、不祥ではありますが霧島かなたがこの戦いの見届け人を努めさせていただきます。ふたりとも準備はいい? って訊くだけムダだったね」
「御託はいいからさっさと開始の合図でもして」
紫苑とわたしはすでに戦闘態勢に入っている。
「テンションあがってるぅ〜」
「からかわないで」
「はいはい」
テンションがあがってる? そうだよ。わたしは今最高に高揚している……あの抜刀した紫苑と……本気の紫苑と戦える。どうしよう。怖くなってきた。
でも……これで紫苑との差が縮まったかわかる。それが今、やっとわかる!
「それでは……始め!」
「行くよ、那凪ちゃん!」
「来なさい!」
霧島さんの合図で納刀状態のまま紫苑は駆け出す。やっぱり抜かないスロースターターか。なら!
「先手必勝!」
わたしも駆け、初手で横一閃の『閃煌』を放つ!
「あぶなっ!」
紫苑はあっさりとわたしの閃煌をサイドステップでかわす。
あぶないなんて嘘っぱちだ!
「行くよ!」
「そんな攻撃じゃ当たらないよ!」
紫苑の鞘での振り上げ攻撃をセルシウスでいなす。もう、何度の納刀状態の攻撃を見てきたから難なくかわせる!
「紫苑! そのまま納刀状態のままだったら日曜日のように負けるわよ! そろそろ抜刀したら?!」
言葉を漏らしながら、斬り上げ攻撃の『天空』を放つ!
「もう少し、ノってからね!」
鞘で攻撃を防ぎ、反撃の蹴りを繰り出す。
「そんな攻撃! 丸見えっ!」
右に飛びのき、上下二段蹴りをかわす。
「ダメ、甘いよ!」
「えっ!? くっ!」
腹部に思いっきり『三段目の蹴り』を喰らった! まさかあの状態から飛び回し蹴りがくるなんて……くそっ! 油断してた!
「もう終わりなの!? 違うでしょ!」
「当たり前っ!」
鞘での突きの追撃をいなし、横切りで反撃。でも、紫苑はその攻撃もあっさりとかわし、多段蹴りでの攻撃に切り返してくる!
「くっ、手数が……」
蹴りと鞘での攻撃の手数多い……これが納刀状態の持ち味。手数とスピードで攻める紫苑の納刀のスタイル!
「でも!」
それでも、わたしでも紫苑の勝る『武器』を持ってる!
「はぁ!」
紫苑の鞘切り攻撃をしゃがんでかわし、そのまま低い体制で懐まで詰め寄る!
「くっ、迅い!」
紫苑の刀はその大きさで接近戦に弱い! 懐に入られたらまず致命傷になることはない!
「はぁ!」
でも、わたしの剣は違う! 小回りが効く!
「くっ、手が……多い!」
怒濤と言っていいレベルの連続攻撃を紫苑に叩き込む!休むことなく上下左右の縦横無尽の攻撃を紫苑に浴びせる! その攻撃を紫苑はなんとかかわし防いでいる。
「立て直して……」
「逃がさないよ!」
間合いを広げようと後方に下がる紫苑を一足飛びで追随して連続攻撃を仕掛ける!
「しつこいッ!」
紫苑は無理な体勢から放った一撃を軽くいなし、さらに追撃!
これがわたしが紫苑に唯一勝る『武器』であるスピード。早さだけなら紫苑に勝っている!
「痛っ! あっちこっち……目まぐるしい」
紫苑に左右、前後にステップ移動でさらにヒットアンドアウェイでの攻撃。風のように、疾風のごとくの攻撃!
いける! このまま休まず叩き込めば一撃が……通る!
「もう、ちょっと、しつこすぎるよッ!」
「えっ!? あぅっ!」
後方宙返りからの蹴り。その奇を照らした蹴りでセルシウス共々左腕を蹴り上げられて、攻撃が止まってた!
そんなスキを紫苑が見逃すはずなく、ここぞとばかりにバックステップで間合いを離しにかかる!
「絶対に逃がさない!」
体勢を立て直し、そして剣を後方に引き身を低くかがめる。
「斬空一迅・疾風!」
渾身の疾風を追撃で、追い打ちで繰り出す!
(なに……このイヤな感じ……!)
何かわからない、何かをイヤな感じを察知してわたしは疾風を止めて、地に滑りながら防御体勢で紫苑の寸前で止まった。
ガチン!
その直後、セルシウスから聞こえる金属音。
まさか……!
「へぇ……よく止まったね。そのままアホみたいに突っ込んでくれたら一撃で終わったのに。残念」
目の前にいたのは対戦相手に紫苑。でもひとつだけ……ひとつだけ決定的に違っている事がある……
それは刀を抜いて、抜刀した紫苑がそこに……最強で最凶のサムライが二年ぶりにわたしの目の前で立っていた。
第三話・完
こんばんは、間宮冬弥です。
まずは、この小説を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今回の話で紫苑が刀を抜きました。物語冒頭より抜刀、納刀と書いてきましたがとうとうです。やっとです。これから物語が加速するので(まだ書きあがってないので未定で予定です)期待して気長に更新するのを待っていてください。
では、短いですがこれで失礼します。




