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大木大木

「どうやら、天狗族が外に出て暴れているらしいな」

 一人の長老らしき人物が言った。

「そうですね。天狗族など野蛮な連中です。人に擬態しては悪さを繰り返すばかり。全く、我々樹海に住むものの品位をそぐ行為を行わないで頂きたいものですな」

 長老の付き人らしき人物が言った。

「全くだ」


 私は、ひたすら歩いた。幸いにして、先ほどいただいた装備の中に軽食と水は入っており飢えには苦しんではいない。このまま、歩くことを我慢すればいずれ国に帰れると思う。なにもなければ、の話だが。

 しばらくすると、目の前に二つの大木が現れた。とても大きな木であり樹齢何年と推定することは難しいくらい大きかった。その大きい大木に私は、嫌な気配を感じていた。なぜならば、確かに獣道ではあるが、道の途端にいきなり大木が存在しているのである。つまり、その大木の存在している雰囲気がその場に最初から存在していないような(・・・・・・・・・・)雰囲気をしていたからだ。そして、その予感は当たったのだった。

「なんだお前は」

 右側の大木がしゃべりかけてきた。

「どこかで見たことがある」

 左側の大木がしゃべりかけてきた。

「それはないぞレフトよ。私たちはつい最近まで冬眠していたではないか」

 右側の大木が左側の大木に話しかけてきた。

「なんだど。わしの記憶が間違っているとでもいのかライトよ」

 左側の大木は右側の大木を睨みつけた。

「そうだな。おまえさんは、昔からアホだったからな。間違いじゃろ」

 右側の大木は左側の大木を馬鹿にした。

「なんじゃと!よし、ならばここで決着をつけようではないか」

 左側の大木は、自らの枝を鋭利な刃物に変化させ臨戦態勢を取った。それに応じて、右側の大木も同様の態度を取った。


「あの……どいてくれませんか。通れないので」

 私は、正直に今思ったことを素直に告げた。しかし、そんなことばも耳に入ってはおらず、おかまい無しにその二本の大木は暴れ始めた。その暴れっぷりといえば、森が真っ二つに割れてしまうほどのものだ、というような荒々しい表現を使いたいものだが、どう見たって子供の喧嘩であった。しかも、二人ともその場を動けないのか、互いの手を伸ばしてポカスカ殴り合ってるだけである。

 私は、どうすればこの道を通れるのか思った。端末を見る限り国への入り口はこの先なのだ。それも、あと少しである。私は、少々手荒なことを仕様と思った。

「黙りなさい!」

 私は、装備の中にあったライターを付けてその二つの大木に見せた。大木に火をつけて燃やしてしまえば良いのだが、そうすれば自らの命も危ない。これは、単なる脅しであった。

 その脅しは、どうやら効果あったようだった。二つの大木はその醜い殴り合いをやめて、私の方を見た。幾分、二人とも怯えているようだった。

「へ、へい、なんでしょう姉貴」

 ライトは言った。

「な、なにか御用でっか?」

 レフトは言った。

 二人ともごまをするような態度を取っている。私は、試しにライターの火をもう一度その木に近づけた。すると「ひぃぃぃ!お助け!」という声が両側から聞こえてきた。

「さっきから、どいて欲しいって言ってるんですけど、どうしてどいてくれないんですか。急に喧嘩も初めてしまうし……」

「ああ。君はどいてほしかったのか。すまない。しかし、わしたちも退きたいのはやまやまなんじゃが、どうしたって動けないんじゃ」

 こうして、ライトとレフトはことのあらましを喋り始めた。数百年眠り続けたのだが、つい先日、誰かの手によって目を覚まされてしまったらしい。そして、そもそも二人とも自由に移動できるらしい。しかし、その移動をするためには「樹海の玉」という緑色の丸い玉を自らに埋め込まなければならないのだが、この場所で目覚めたときには、既にその玉は体内から抜かれていたそうだ。

「ほれ、ここに埋め込めそうな穴があるじゃろう」

 大木の一番根っこに近い部分にそれらしい穴があいていた。

「人間にしてみれば、そうじゃな。男のキンタマに近いのではないかな。はっはっは」

 私は、持っていたライターを根っこの部分に近づけた。すると、「やめて、やめて!ごめん、冗談だから!下ネタもう言わないから!」と言って反省していた。

「だから、君に頼みがある。その樹海の玉を探して来て欲しいのだ。そうすれば、ここを動くことができるはずじゃ」


 こうして、私は一刻も早く国に帰らねばならぬ立場であるのに妙なお使いを頼まれてしまったのであった。



 

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