樹海迷宮
私は、電車とバスを乗り継いで山の麓の樹海までやってきた。樹海の前までバスなどはこないため、一番近いバス停から歩いて入っていた。
この樹海の中では、コンパスが効かなくなるのはもちろんのこと方向感覚すら麻痺してしまう。しかし、私はここを離れるときに私にしか分からない目印を残していた。それをたどれば樹海の中にある私の国への入り口にたどり着けるはずだ。
私は、目印を探した。木々にナイフのようなもので切り傷をつけるとか、分かりやすい石を置いてみるとか。そんなことではない。ましてや、パンをちぎって置いてみたり、あめ玉をぽとぽとと落としてみるなんてこともしない。私にしか感知しない特殊な宝石を置いておいたのだ。それをとれば、自然とこの手に持っている端末が自動で歩いてきたルートを表示してくれる。注意しなければいけないのが、それはルートが表示されるだけで、方向は自動で調整はしてくれない。GPSが効かないからだ。
私は、最新の注意を払って歩いた。ところどころに置いておいた宝石を取り、いくべき道筋をその都度アップデートをしていく。その繰り返しを行うことによって自然と入り口へといけるということだ。
しかし、当たり前だがこれはあくまで私の想像だった。「上手くいけば」ということである。悪い予想は当たった。
「きっきっきっき」
私の目の前に、いかにもというようなたぬきのような生物が目のまで不適な笑みを浮かべていた。そして、手にはそのルート案内宝石を持っていた。そして、森の中へと消えていったのだった。
私は、どうしてこんなにもドジなんだろう。不意に、見知らぬ暗殺者に捕まったり、それほどでもない敵にやられかけて、普通の人間に助けられる。こんな、誰にでも予想がつく結末をどうして予想できなかったのだ。
私は、酷く落ち込んでその場に座り込んだ。もう、国に帰るとかそんなことはどうでも良いような気がした。私は、実はあの学校での生活が楽しかったのかもしれない。年下の頼りがありそうでなさそうなあの青年といる日々が。しかし、私は普通の人間ではない。あの場所に長く居てはいけない。長く居ては彼らに迷惑をかけるのは必死だから。
しばらく、私は座っていたが、やはり帰らなければならないと思った。帰って、王の真意を確かめなければならない。そう、思った矢先私の目の前に一人の男が現れた。
「こんなところで何をしている」
アウトドアジャケットを来て、大きなリュックサックを背負い、十分な装備をした男だった。見た目から察するに、現地の樹海ツアーの参加者か、見回りの人かもしれないと思った。
「私は、ちょっと道に迷って……」
私は、少々の嘘をついた。
「そうだったか。てっきり自殺志願者かと思ったよ。まぁ、君のような若者が自殺なんぞしないとは思うけどね。まぁ、良いや。ほら、帰るよ。こんな所にいては危ない。見た所軽装備だ。そんな格好でくるような場所ではないよ」
そういうと、男は私に手を差し伸べ私を立たせてくれた。
「さぁ、いこうか」
しばらく、私は彼について歩いていった。たぶん、このまま彼についていけば樹海を出ることができるだろう。しかし、私は樹海をでることはしたくはなかった。国の入り口へと行きたいのだ。もっと、樹海の奥深くへと。
私は、彼をずっと観察をしていた。彼は、どうやってこの樹海を自由に歩いているのかと。すると、手に端末を持って歩いていた。どうやら、それは特殊な端末であるらしく、樹海の中においても自分の位置を正確に示すことのできる端末らしかった。
あれが、あれば私は国に行けると思った。私は、彼に頼んでみた。
「その端末を私に貸してください。行かないといけない場所があるのです」
「駄目駄目。そんなことしたら、僕が帰れなくなっちゃうよ。だいたい、樹海なんて景色はすべて同じだよ。やっぱり、君は自殺志願者かい?」
彼は、立ち止まって不思議そうな顔をして私を見た。その透き通った目に私は、恐怖心を抱いた。
「ごめんなさい」
私はそういうと、高く飛び上がり彼の背後を取った。そして、彼の頭をもち、360度頭を回転させ、彼の息の根を止めた。その男は、驚いた顔のまま樹海の地面へと倒れていった。痛みすら感じなかっただろう。
私は、彼の装備と端末を剥ぎ取った。確かに、私の装備は軽装備過ぎた。これでは、たしかにつく前に死んでしまうだろう。やっぱり、自分はドジだと思った。
気を取り直して、私は歩き始めたのだった。




