第14話 傭兵と先輩
私は、見知らぬ男と港が見えそうな高台の公園に居ました。男は、じっとしていました。私は、なんとか冷静を保とうとしながら、カーディガンの端っこをにぎにぎと握っていました。
「おい」
男の人が振り返り、私に声をかけてきました。
「すまないな。俺は、君を殺すように言われて雇われた者だ」
そういうと、男は持っていたピストルの銃口を私に向けました。
「殺す前に、一つ聞きたいことがある」
男は、言いました。
「ありがとうございました!」
そういって、俺たちはタクシーをおりた。今後、こんなにもタクシー代を支払う機会なんてないだろうと思った。そう思えるほどのなかなか良い額だった。秋山があれほどの金額を持ち合わせていたことには正直驚いたが、俺的にはタクシー代の方が驚いてしまった。
「で、森本先輩はどの辺にいるんだよ」
俺は、のんきに質問した。
「まて、今調べている。黙っていてくれないか」
思いのほか、秋山は冷静さを失っているようだった。タクシー代なんぞに浮かれている暇はなかったということか。秋山は、持参した小型端末をこれでもかといじりまくっていた。
「わかったぞ。この公園の奥にある森の中に二人でいるみたいだ」
そういうと、俺を置いて彼は走り出した。俺は、慌てて彼の後を追った。そして、驚いたのが意外と秋山タイチが俊足だということだ。俺は、正直どのスポーツをやっても中途半端な人間のため脚の速さはそこそこなのだが、彼は早い部類に入りそうだった。見た目はガリ勉タイプのほそほそ野郎なのに、脚は速いのか。こういうギャップのある人間は、世間的には好かれるのかもしれないと思った。
俺たちが到着すると、そこには森本先輩がいた。そして、目の前には黒い服を着た男が立っていた。しかし、その目の前の男は森本先輩に倒れ込むようにして地面に倒れた。その瞬間、俺には何が起こったのか理解できなかったが、森本先輩は無事だったらしい。
「大丈夫か」
秋山は言った。
「はい……。なんとか」
森本先輩は、不安からなのか少々顔色が悪かった。
「何があったんですか」
俺は、気になっていたためつい、口に出てしまった。
「はい……。さらわれたのは分かっていると思うんですが。で、目がされたらこの場所に居て。その倒れている男の人が私にピストルを向けたんです。そして、いくつか質問をしてきたんです。君は何をしているのかとか。たぶん、殺し屋のような仕事をする人が、私をどうして殺さないといけないのかよくわからなかったのでしょう。しかし、次の瞬間でした。いきなり、目の前の男の人が口から血を出して倒れたのです。そして、今に至るということです」
「森本くんが直接手を下したわけではないのか」
「まさか!武器も持たずに倒せるわけないじゃないですか。ピストルを向けられたら、身動き取れないですよ……」
「病気とかだったんじゃないですか。そいつ」
俺は、思ったことを言った。
「そうかもしれないな」
秋山は、賛同した。ともかく、俺たちはこの気味の悪い場所を離れることにした。今日は、家に直接帰り、明日学校の部室で今日のことを話すと言う約束を立て、俺たちは解散した。
しかし、今思えばこれが最初で最後の会話になった。




