ほえ
そして日曜のお昼。
俺はアプリを開いて本格的に始める。
「あっ、イイ感じ!」
レイが隣でそう笑いながら言うので、相槌を返す。
「⋯⋯そうなん?」
どうやらレイの話によれば、リアルタイムだけど限りなくそう見えるだけで実際別らしい。
ある意味アプリの所有者である俺の感覚に基づいているとだけ言われた。
⋯⋯別の人間だったらまた違うってことなのか?
それとも地球人は大体一緒なのか?
その辺まだまだだな。
──と。画面は正直一辺倒。
たった一晩置いただけなのだ。
そこまで変わるわけもない。
「ポイントはとっておいたけど」
「んー、まだだね」
「まだなんだ?」
現在、一晩置いているが、ゴブリンの総数に変動はない。
ただし繁殖期なのか分からんが、異様に行為を行っているのは把握はしてる。
「うん、ここから爆発的に増えるから、そこで投入する」
「へぇ、そういうのも重要なんだ?」
「拮抗したり、新しい風を吹かせたり、悩ませたりするとボーナスが付くからだね。
ボクが言った序盤が大事って言ったのはそういう意味があるから」
⋯⋯へぇ、マジで考えてるんだなぁ。
「ん?」
すると、画面に変化が起こった。
「ゴブリンが動物を狩るために石を尖らせてる!」
始めた時は落ちてある棍棒で戦ってたのに!
「こういう事。
ゴブリンは馬鹿だけど、ここを飛ばしちゃうと想像通りのゴブリンが生まれる」
「だけどこうしてやっておくとまた変わるってことな?」
ドヤ顔で唇を尖らせるレイ。
「何が変わるんだろうな」
「見てれば分かるよ」
──生態系ボーナス!
「あっ、ポイント入った」
まおまおポイント2とスキルポイント1だってさ。
「んー、イイ感じだね」
「なんか増えたな」
「スキルポイントはね、対象にスキルを付与させる事ができる」
「このゴブリンにも?」
「うん」
なんてことないって感じだけど、結構凄くね?
「てことはゴブリンを自分でカスタマイズ出来るってことだよな?」
「指定範囲はあるけどね」
あ、そこはあるんや。
「わー、見事にゴブリン」
タブ切替で見てみるとこりゃ酷い。
・隠密
・投擲
・暗視
・奇襲
・環境適応
「⋯⋯なんかあげた方がいいかな」
さすがにこれ生きるの難し過ぎだろ。
「ふふっ、なんでこっち見るのさ。
それはタイガが決めなよ。
この辺は完全にボクは関与しないよ」
「お、そういう感じ?」
「あくまでボクはサポート体制があるってだけだし、大幅にデメリットがありそうならコッチから言うしね」
やれやれと肩をすくませながら隣の動画に視線を戻すレイ。
「んー、俺だったらどうするかな?」
俺だったら暗視とかあったら夜でも行動出来るとか思っちゃうけど。
でもそこまで考えられるかも怪しいか。
「なぁ、レイ」
「んー?」
「この環境適応ってどれくらい具体的に適応するの?」
「正確に言うと、腐った肉とかいわゆる毒とかもある程度問題なくイケるようになるって感じかな?
ただし耐性ってほどでもない。
生きる為になんとかなるってくらいだね。
あとは空腹、寒さ、暑さに耐えられるようになったり。
必然的に病気なんかの抵抗の値も上がる」
「ゲームで言えば専門って程でもないが、生存に関して汎用的に上がるスキルって事か」
「多分その理解が早いかな」
⋯⋯だったらそれがこいつらの為になるんじゃないか?
奇襲とか、隠密とか、暗視なんかも今必要ってよりは、空腹や季節がないわけでもないだろうから、それに耐えられるようにするべきだ。
「環境適応だな」
よいしょ。
──ゴブリンに環境適応のスキルを与えます。
「んぉ?」
──ゴブリンへの贈物レベルが1に達しました。
「あ、ギフトとかあんだ。
こまけぇな」
──還元ステータス獲得!
「んぉ?」
──性機能の弱強化、並びに特性【絶倫】を獲得しました
「ん?レイ?
なんか特性を獲得したって」
⋯⋯ん?はっ!?
んん?
マイson?
自分のパンツの中身がちょっとおかしいんだけど?
「ふふっ、特性?
⋯⋯あぁ、言うの忘れてたね」
こっちを向くレイ。
⋯⋯そう。
今まで、不可思議だった言動事の数々。
「それね、」
言いかけるレイの言葉。
「現実に反映するから」
この間"今は"と付けたレイの言葉の意味を。
そして、楽しくなるなんて豪語したこいつの真意が。
笑っているコイツの顔が、ほらと言うように。
「ボク、約束したでしょ?」
なるほど。
「タイガは絶対楽しくなるって」
拝啓一週間前の自分へ。
今では俺、大悪魔様に感謝の万歳をしています。
「だけどいや待てよ」
いやそう。
確かに良い部分は多いさ。
「ただでさえ欲の高まりに困ってんのに強化されたらめっちゃ困るんだがぁ!?」
人生って何が起こるか⋯⋯分からないものですね。
今なら和歌の達人にでもなるそうだや。
よきかな。




