男子高校生、特性に苦しむ
「まずーい!!」
「どうしたの?タイガ」
マイsonが!
マイsonがさ!!
「タイガっっ、ぷぷ⋯⋯!」
覗き込んで事態を把握したレイが嘲笑を向けてくる。
くそ、なんてことだ!!
「おい、特性ふざけんな!!」
マイsonの反り上がりが半端ないのです。
あ、これは男子高校生の日常です。
細かい事は見逃してくださいね。
「腰が持ち上がりそうだぞ、これ」
特性が追加されてしまった為なのか!?
まずいぞ、処理しなければマズイという境地の反り上がりだ。
「くそ、このアプリの真価を理解した俺!
耐えろ⋯⋯!」
まさか最初のスキルが絶倫になるなんて、誰が思うんだよ!!
「レイ!
特性はオンオフねぇのか!?」
「ない」
「クソッ!!」
淡い希望はすぐに力尽きる。
「マズイ、マジで」
ったく一晩で何がありやがった!?
「⋯⋯おおっ!?」
だが、マイsonを見て、俺は気付く。
「待てレイ!」
「今度はどうしたのっぷぷ」
「マイsonが少し大きくなったぞ!」
「おぉ!」
なんて拍手してくるレイ。
性機能の弱強化ってそういうこと!?
全男の子の味方だったのね!?
ゴブリン、お前ってやつは⋯⋯!
「確かに本当だ、人間の男は自身の生殖器の大きさで生涯比較され続けるって書いてあるね」
「調べるな!
⋯⋯大悪魔め!」
ゴブリン。
これからはお前を"守る"ぜ。
「タイガ、顔キモいよ」
「今なら何言われてもノーダメージだ」
「うわぁ⋯⋯典型的な天狗だぁ」
*
そう思ったのも束の間である。
「先生、トイレに行ってきます!」
「お、おう?」
紙とペンを持って、俺はトイレに疾走する。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
便器に座り、レイを見上げる。
「タイガ?」
そそくさメモ帳に殴り書く。
"これ、本当に弱強化?"
「おーうん、そうだよ?」
⋯⋯クソがっ!!
有り難みを感じたのは僅かな時間である。
今は夏。
そう、目に毒な光景が非常に多い。
「あー、志水ちゃんガン見してたもんね」
ええい!黙れぇい!
──そうなのだ。
いつもなら別に反応しないなんてことなかった事まで、過剰に目が向くのだ。
体型とか、匂いとか、無意識に色々スルーされていた様々な感覚が大幅に強化されたというか。
正直に言って、これでは授業どころではない。
"特性外せないのか?"
「難しいねぇ、ポイントを使ってどうにか出来るけど」
返ってくることはないらしい。
⋯⋯完全な詰みである。
「くそっ、しゃーない」
そうして俺の学校生活は新たな彩りを加える事になった。
途中何度もトイレに行こうとしたが、特性獲得初日からこれでは完全にヤバイやつである。
「はぁぁぁ⋯⋯っ終わったァァァ」
「大丈夫か?大雅」
放課後。
やっとワックに着いては抑えていた自我を元に戻せる。
「大丈夫じゃねぇー!」
「なんだよ、どうした?」
言えるわけがない。
突然ファンタジーアプリによって下半身が強化されましたー!なんて。
⋯⋯まぁ冗談だと思うじゃん!?
「まぁまぁ、ちょっと怪しい事が」
「なんだそれ」
そう一呼吸置いた遼太郎。
思い出したようにハッとして俺を見る。
「そう、今結構エンジェルターボっていうアニメがアツいんだよ」
そこからというもの。
アツくなる遼太郎の話を聞きながら、なんとか自我を保ちながら必死に聞き過ごす。
安心しろ諸君。
しっかり話は聞いているから。
「あぁ⋯⋯!」
伸びをしながら塾の帰り道を歩く。
"なぁ、レイ"
「ん?」
新たな歴史的発明。
スマホのメモ帳を読んでもらう。
そうすれば傍から見てもスマホをイジイジしている若者でしかない。
どうだ?
結構凄い発明したと思わない?
"まぁ予想していると思うんだけど、もう少しスピード上げられない?"
「んー、わかってはいるけど、まだだね」
なんとなく分かってた。
けど、俺は──知ってしまった。
まおまおたうんずというアプリ。
⋯⋯その真価を。
「大丈夫だよ、その内⋯⋯あ、」
アプリを覗き込む。
「お」
──イベント発生!
何事かと俺は道端に座り込む。
──ゴブリンの成人の数が10体を超えた為繁殖期間に入ります!
「へ?」
「ほら始まった」
ほら、ということは中々半端ないことになりそうだな。
「うわぁ⋯⋯」
立ち上がり再び歩き出す。
アプリ内は⋯⋯そう。
R指定もクソもない。
ドット絵ながら酷い様子で営みが繰り広げられているのだ。
今思えばうさぎの死体も捌いているところもある程度見えていたのだから察するべきだったわ。
「ここから多分結構タイガにとっては地獄の始まりかも」
「⋯⋯え?嘘」
俺はなんとなく頭に浮かぶ強化という二文字にビクビクしながら家へ歩くのだった。




