選択
人は⋯⋯その、なんだ。
「えー、やべぇ」
よく⋯⋯ほら、例えがあるだろ?
洞窟ってなんで怖いの?って。
あれって暗闇で先が見えないからーなんて言うじゃんか。
松明で明かりが付いてたら別に怖くなくなる⋯⋯みたいな。
今──マジでそれなんだよ。
さっきの感覚が離れなさ過ぎて、身体が正常な感じじゃない。
「お、押せねぇ」
シンプルに怖えよ!
こんなん押せる奴いんの!?
誰かいたら教えてくれ!
6chの奴らはやりそうだけどな!
「⋯⋯⋯⋯っ」
よぉ冴木大雅。
考えよう。
あの気持ち悪い感覚と恐怖。
それと天秤に賭けろ。
押すか?押さないか?
「やめろー!
俺の右腕ぇぇぇ!!」
そうだよ!
本当は刺激が欲しいんだよ。
退屈で将来のクソッタレみたいな人生にもう若い段階で鬱陶しいんだよ。
そら昔の人が見たら怒るだろうけどさぁ!
ちっ、くそっ。
これじゃドパガキがバレて⋯⋯
「ママー、あのお兄ちゃん一人で変なことしてるよー?」
「見ないのソウタ。
あのお兄ちゃんはそういう年頃⋯⋯」
あー!!!!
ここ公園じゃん!
変なやつじゃん。
確実に変なやつじゃん!
「くそっ、ビビるな、冴木大雅!」
お前がやりたい事はなんだ?
刺激が欲しいんだろうが、馬鹿者。
「にゅーげーむっ」
可愛い声とSEが聞こえてくる。
──ピロン。
「ちくしょう、押しちまった!」
このドパガキが!
⋯⋯誘惑に負けやがった!
『こんにちは!』
ゲームキャラの声だろうか?
『ボクはまだタマゴの中に"居るよ"』
⋯⋯じゃあなんで喋れてんねん。
『このアプリはね?
一人だけしかだうんろーど出来ないんだ!』
なんかメタいな、この子。
「へぇー」
『なぜなら、"選ばれた"から!』
⋯⋯選ばれた。
⋯⋯俺が?
俺みたいなのを選んだ理由はなんだよ。
──いやドパガキだったわ。
『にゅーげーむを選んだらやり直す事は出来ないんだ』
「はっ!?」
『それに、消す事も出来ないよーん!』
冗談だろ!?
そんなアプリ存在するわけねぇだろ!
『でも大丈夫!
ボクと一緒に──街を作ろう!』
ピョコンと、画面には五つの扉と可愛らしい丸型のフォントテキストが映る。
そして、そこには黒いモヤのようなものがウロチョロしている。
もしかして、これがタマゴのコイツか?
『難しく考えなくて平気だよ?
まずはこの五つのタイプから選ぶところからだ!』
と、なんだこれ。
共感タイプ
万能タイプ
攻撃タイプ
欲望タイプ
防御タイプ
『まだ見ぬ神は、何を選ぶのかな?
ボク、ワクワクするよ!』
神?プレイヤーの事か?
つまり俺ってことか。
「説明がねぇんだけど」
まぁ字面通りなんだろうけどなぁ。
『共感タイプはねぇ、ボクが提案したりプラン練ったり一緒に出来るよ!
⋯⋯あとボクとの親密度が高くなりやすい!
お話できるよ!?ボクと!』
「なんか説明してきやがった」
──メタ過ぎないか?
いやいや、まさかなぁ?
でも人間って悪い方の勘って不思議と当たっちまうんだよ⋯⋯ははは。
『万能型は全体的にポイントや施設、住民の統制が取りやすいタイプになってるよ!
ただし、特化型にはなれないのと、ボクとの親密度があんましになるかな?』
なんでだろう?
声で誤魔化されてる。
ちょこちょこモヤが移動しているのも、アピってるみたいで困る。
⋯⋯まじで困る!
『攻撃タイプはそのままだけど、親密度は一番高くならない。
それに防御が手薄になるし、統制は本当に難しい!
駄目ー!駄目ー!!
マジでつまんなーい!』
説明が適当すぎないか?
それにモヤがブブーっというSEと共にバッテンを出してきてる。
いや、そんなんじゃまるで意思を持ってるみたいに。
⋯⋯いや考えるな、俺。
『防御タイプは外部の攻撃とか統制には滅法強いけど、施設発展や親密度が極端に上がらない。
良くも悪くも安牌だねぇ!
向いてない向いてない!
つまんないよー?
あと換金レートも下がる!』
換金?
なんの話だ?
聞き流したかと思って、何度も説明ボタンがないか確かめる。
──いやない。
待て待て。
換金レート?なんの話だ!?
「大事な説明がないじゃん!」
課金とかあんの!?
聞いてねぇよ!?
RMTとかあんの?
いや、でもDLは俺だけっぽいし。
「チッ、どうなってんだよちくしょぉ!」
『欲望タイプはあんま聞かないよねぇ?』
モヤが銃の形をしては傾げてるようなモーションをとってる。
リアル過ぎないか?
いや、意思疎通がなんか⋯⋯こう。
『欲望タイプはこのゲームならではのタイプだけど、オススメはしない。
スキル発生や振り分けポイントも多いけどそれだけ。
親密度も高くならないし、攻撃も防御もない。
統制もとれないから、ダメダメー!
まぁ言うならば序盤最強だけど、中盤以降で総崩壊って感じかな?』
ブブーッと音を出したり、俺に本当に喋りかけてるみたいで。
なんか、怖い通り越してゲーム作成者のリスペクトすら湧いてくる。
『どう?どう?
決まった?』
モヤが腕を組みだしている。
一緒に考えているみたいで、反応に困る。
「決まる訳ねぇだろ」
んー!
俺に難しい事は向いてねぇし、統制?も出来る未来が見えん。
「共感かなぁ?」
なんかコイツに乗せられてる?
⋯⋯俺、大丈夫か?
『大丈夫!
ボクがついてるよ!』
「んー⋯⋯」
『わー!
共感タイプ!?押してくれてありがとう!』
この俺のドパガキ⋯⋯クソが。
『そしたらタマゴが孵化するのはもう少し後!
それまでは何も起動しないし、歴史も始まらないから安心してね!
何かあったら⋯⋯起きたボクが通知しに行くね!』
「はいはい」
我ながら乾いた笑いだ。
最近のゲームにしては上手いよ。
でも、最初の方の消せないって⋯⋯そんな事あるか?
俺はそう思いながらも、公園を後にする。
夕方には合流して遼太郎から学校の必要な奴を貰ってちゃんとハイゼのパスタを奢ったとさ。




