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魔犬士  作者: チョコ


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51/60

51 希望の虚光

自身に付着した魔法は全て吸収出来るロブ、誰も彼を止めることは出来ないと思っていた。しかし、とある男が放った火炎瓶が人間達の希望であった




目にも見えない速さで投げられた"つぶて"がロブを囲う聖犬信者達に向かっていく


信者達は死を覚悟し、目を閉じた

しかし一向にその時は訪れない


恐る恐る目を開けると、眩い光のベールが信者達を包んでいたのだ

つぶては次々とベールに弾かれていく

 

「皆さんよくやってくれました」

宙を舞う聖犬が慈悲深く告げる。ベールは信者たちを包んだままゆっくりと浮上し、安全な場所へと彼らを避難させた



 


「俺の邪魔をするな…!!」

炎を振り払おうと、ロブはよろけながら腕を振り回している。油のせいで炎はより燃え盛り、ロブに地獄の苦痛を味わい続けている


  

竜輝は呼吸を整える

あの強大な力を持つロブが炎で制圧され始めている現実、興奮と緊張が交わる感情



そこへ、後ろから聖犬信者が歩いてくる

「今仲間が役割分担をして火炎瓶を運んでいます。なので仲間の援護をお願いしたいです」 


 

 ザッザッ…ザッ

さらに、集団からはぐれた男がその場に現れる

 ――あいつ、炎でもがき苦しんでるけど、弱点は炎なのか?弱点が見つかったなら俺にも手伝わせてくれ


「竜輝さん、どうします」


竜輝は迷いなく男に近づいて言った

「また1人ロブに殺されたら戦意喪失する。そしてその1人にお前がなるかもしれない。でも、覚悟が出来てるなら火炎瓶を彼らから貰ってきてくれ」  


勝ち筋が見つかったことで、希望を持ち始める者が増え始めた

火炎瓶を持った複数人がまた新たに駆け寄ってくる


「こうなったらもう止められないな」

竜輝は後ろに顔をやった。目の先にたたずむロブを睨みつける。覚悟を決めた者たちが次々と横を駆け抜けていき、竜輝もまたその後に続いた。


 

  

 ――そうだよ!こいつを殺せなかったら俺らはどうせ死ぬんだよ。今までのは無駄死にだったが、対処法を知った今、俺達は希望で満ち溢れている!


ロブに火炎瓶が降り注がれる

 

「またか…この、ごちゃごちゃと…!」

ロブは拳を構え向かう


竜輝が壁となって集団の前に立ちはだかる

「早く逃げろ!!」

せめぎ合っている間にみんなは逃げていく


しかしロブの重みに耐えきれず竜輝は投げ飛ばされる

 

「あの奴らを必ず殺す…!しょうもない武器使ってんじゃねぇよ!!」


 パリンッ!!

ロブの背後で火炎瓶の割れる音が聞こえる 


 ――ば、化け物…!!

後ろを振り向くと1人の女が立っていた

ロブは瞬時に標的を変える


だが、空から急降下してきた聖犬が女を抱きかかえて逃げる

「みんなの覚悟を無駄にはしない」

 



「あぁそうかよ、それなら……」 

ロブは戦略を変えた。向かってくる人間を相手にするより、供給元である火炎瓶の貯蔵場所を叩こうと考え出す

力を溜め、地面を破壊する勢いで高く跳躍する

「こうすれば生贄用に人も殺さず、この状況を打開できる!!」

 


 ビュンッ…!

ロブの横をさらなる速さで追い抜く影

空中でロブの前に立ちふさがったのは、竜輝だ。渾身の力で拳を振り下ろす


対するロブは空高くに拳を振り上げる


 バァァンッ!!

衝撃波が雲を裂く


しかし、力はロブの方が勝っていた。強力な力が竜輝を押していく

「なぜお前如きが俺に勝てると思った?!」

ロブは拳を振り上げ竜輝を空高くに吹き飛ばす



しかし、吹き飛ばされながらも竜輝は上空で姿勢を立て直した

「これはただの時間稼ぎではないぞロブ!!」

脚に魔力を溜め、それを動力源に瞬足の急降下を始める



 ビュンッ…… バゴーーン!!!

その勢いはロブを押し返した。再び起きた激しい衝撃でロブと竜輝は共に真下へ落ちていく


衝突によって舞い上がった土埃から竜輝の声が聞こえてくる

「ロブを止めているから、俺ごと燃やせ!」

 

聖犬は一瞬迷ってしまう。だが渋々了承した。そして信者達に火炎瓶を放つよう命令を下した

「放てっ…!」



 パリンッ!!

2人を包む燃え盛る炎

  

ロブは叫びながら纏わりつく竜輝を放り投げ、炎から逃れようとよろめき出した

 

炎の効果は絶大だった。炎によってロブの動きが鈍り始めたのだから。これはロブの神経の大半が焼け落ちた証拠


竜輝はその隙を見逃さなかった

ロブの懐に忍び込むと一撃、体勢を崩しだしたところを同じ拳でもう一撃

その衝撃一つ一つがロブを後退らせる

 

ロブもよろける身体で向かってくる竜輝に殴りかかった

しかしロブの威力はまだ落ち切ってはいなかった

 

ロブの腕が振り上がると、竜輝は遠くに吹き飛んでいった

「今のうちに…ここから離れよう。スゥイルとの合流を果たす……」

生贄術の起きた繁華街方面へと身体を向け、走って行ってしまった



「ロブが逃げた…!追うぞ!」

聖犬は単身でロブの後を追った



 


 ダッダッダッ…!!

ロブの足音が重い音が響き渡る 

「誰か俺に魔法を吸収させろ!!俺の権限があれば必ず中級の位置にいさせてやることは出来る!誰かいないのか?!」


聖犬が前を立ちはだかる

行く手を防ぐと同時に、火炎瓶を投げつけた


しかしロブはそれを掴んで横に投げ捨てる

「真正面から来るぶんにはもう慣れた。そこをどけ!」

腕を前に構えて前傾姿勢のまま突撃する


 ドガァァン!! 

衝突された聖犬は高く吹き飛ばされる


ロブは気にせずに走る

破壊されていないビルが見えてきた。この先に繁華街はある


「追っ手は……いないな。しかし、スゥイルと合流しようと思っていたが、あいつは暴走しているはず。まず俺に魔法を吸収させてくれる奴を探せたらいいんだが……」


  

ロブの足音を聞き入れて、遠くにあるマンホールから2体の魔物が現れた。その魔物はヘノとピム、繁華街から向かってきた魔物2体だ

 

ロブは立ち止まる。その2体が同族であることが分かると、勝ちを確信させ再び走り始めた


だが、すぐ後ろには聖犬の姿が、ロブは叫んだ

「どちらでもいい!俺に向けて魔法を放て!!」


ヘノとピムは顔を合わせて驚く 

「ヘノ行ってくれよ。俺の魔力じゃ足りなそうだから…」

 

「根性ないな。へへ、なら私の水魔法でいいのなら受け取って下さい…!」

ヘノの手のひらに水の弾が生成される


 

「このままでは吸収されてしまう…仕方ない、ここは魔法を使わせてもらう」

聖犬が空中から聖弾を放った。一発がヘノの頭部を貫く。だが、もう1体のピムには当たらなかった

隣でヘノが死んだのを確認すると、ピムは震える身体で魔力を身体に溜めた

「私の…風魔法を吸収して下さい…!」


 

「くそ、間に合わない…!」

そう思った聖犬だった。しかし次の瞬間…


 バシュンッ…!!

どこからともなく放たれる謎の攻撃がピムの頭を貫通、激しい血飛沫を上げて倒れた




 

ビルから見下ろす黒い影

「すまないなロブ、君はここで退場しなければならないそうだ」

その影は空に消えていった…




 

ロブの足が止まった

「誰の仕業だ…誰があいつを殺した…!!」

 


聖犬と竜輝が合流を果たす

竜輝は地を蹴って俊足の速さで向かった

「これで終わりだロブ!!」


ロブは後ろに振り返るもすでに遅い


竜輝の拳がロブの装甲を粉々に割った

ロブは静かにその場に倒れる


竜輝は馬乗りになってロブを殴り続ける

装甲が剥がれ続けると、次第に中の肉塊が見えてくる。しかしそれは人間の形を留めてはいなかった。竜輝が驚いて手を止めると、ロブの身体から黒い煙がもくもくと噴き出てくる


竜輝は煙に押し退けられた

しかしその煙はただの煙ではなかった。だんだんとロブを蝕み始める

「お前は…!アグル…ク…やめ…ろ」


道連れだ…!生贄術の報復を!!


 ゴゴゴ…!!

竜輝達が唖然としているうちにロブと煙は消え去っていく……

 


集団と信者達が走って来る


聖犬は後ろを振り向いてみんなに言った

「やったぞ!!竜輝がロブを倒した!!」



 うおぉぉぉぉぉお!!


 ――諦めずにやったからだよ

 ――みんなで協力すればあんな奴も倒せるんだ


あのロブを倒せた事をようやく実感する竜輝

「終わったんだよな…」

高鳴る胸と共に竜輝は拳を高く挙げる……

 



 バシュンッ…!!

竜輝の心臓を貫く鈍い音

 

歓声が全て止まる

全員の視線の先、そこには誇らしげに拳を上げたまま、静かに崩れ落ちる竜輝の姿しかなかった

 

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