14話 オリジア聖地
不定期更新ですみません。まぁ、どうぞ。
―オリジアナ大陸 オリジア地方南部 オリジア地方聖地 静霊の森奥地
静霊の森で巨大な芋虫型の魔物(名は分からない)を倒したアークスたちは、ようやくこの森の中央部へとたどり着いた。
そこは森の中で唯一鬱蒼と茂っていた木々が開けており、今回は日の光が降り注ぐその場所には、ただ大きな石板があるだけだった。
おそらくこれがストリアの言っていた石板というものだろう。3人はその石板に近づく。
「これがストリアさんの言っていた…………?」
「おそらくな。だがな…………?」
「でもさ~、どう見たって石板というか、ただの岩にしか見えないけど~?」
たしかにストリアは石板と言っていたが、どう見ても石板型に削られた、ただの岩にしか見えない。
ストリアの話では、心装珠が嵌まっており、文字が刻まれているらしいといっていたが、そのようなものはどこにも見当たらない。
ファルクスとミコトが石板を1通り眺めて、首を傾げていると、アークスがそんな2人の顔を見て驚いたような顔をしていた。
「え? 2人とも、何を言っているんですか? ちゃんと心装珠が嵌まっていますよ?」
他の2人と違い、アークスの目には確かに心装珠と文字が映っている。しかもはっきりと。
「なに? だが、たしかに…………」
「ぼくにもただの石の塊にしか見えないけど~?」
そんなアークスの問いに2人はそう返す。ファルクスとミコトの目には嵌まっているという心装珠も刻まれているという文字も見えていない。
アークスは2人の話を聞いて、自分の目を疑い、自分の目を擦るともう一度その石板を見る。やはり、中央に嵌め込まれた心装珠とその下に刻まれた文字が見える。
「やっぱり、ありますよ?」
「ふむ…………。やはり、アークス嬢にしか見えていないのか」
今までのことからミコトがそう推測すると、とりあえず、オリジンに生命子を注ぐため、アークスがさらにその石板に近づく。
「じゃあ、始めますね? ちょっと下がっていてください」
アークスにそう言われ、「わかったよ~」とファルクスが素直に後ろに下がるが、ミコトは下がろうとはしなかった。
彼の顔を見ると、どうやら何か考え込んでいるらしく、その場で黙考していた。そんな彼にアークスは話しかける。
「ミコトさんどうしたんですか?」
「・・・・・・・」
彼女が話しかけても返事がない。よほど考え込んでいるようだ。邪魔をしては悪いと思ったため、とりあえず、アークスはファルクスに話しかける。
「ファルクス。ミコトさんをよろしくお願いしますね?」
「う、うん!…………え!? アークス! その眼どうしたの!?」
アークスはファルクスにミコトを頼むが、彼女と目を合わせたファルクスはあることに気が付いて、思わず驚く。
なぜなら、アークスの澄んだ黒色だった虹彩が、満月のような金色へと変わっていたからである。
「眼、ですか?」
「えっ!? あれ?」
そんなファルクスの様子にアークスが首を傾げる。そんなアークスをもう一度見たファルクスは疑問符を浮かべた。
もう一度見たアークスはいつも道理だった。
眼はたしかに先ほど見た時は金色だったが、アークスの眼の虹彩が元の黒色へと戻っている。
「眼がどうしたんですか?」
「おかし~な~? 今、確かに………? あれ………? 体に力が…?」
ファルクスはアークスの目が金色に見えたことを不思議に思うが、そんな時、ファルクスはいきなり体の力が抜けるように感じ、経っていることもつらくなってアークスの方へ倒れ込んでしまった。
「ファルクス!? どうしたんですか!?」
「わかんない………。」
ファルクスがアークスの目を眺めるために近くにいたため、アークスが何とか彼女の体を支えるが、ファルクスは弱弱しく頷くと浅い呼吸を繰り返すだけだった。
そんな時、黙考していたミコトが、アークスへと話しかけた。
「おそらくこの場所の生命子が原因だろう。濃い生命子は身体を侵す」
そう解説するミコトもつらいのだろう。この静霊の森を多量に渦巻く根源の生命子の影響からか、若干顔が歪んできている。
「アークス嬢。本当に大丈夫なのか? ここの生命子は濃すぎる。自分でさえ、あとどのくらい持つか…………」
ミコトの言うように、この場所は森全体を包んでいたあの膨大な『根源』属性の生命子の噴き出しているところなのだ。
ヒトにとって膨大な量の生命子は有害で、長時間浴びていた場合、その者の心源に負担をかけてしまう。
そんなミコトにファルクスを預けると、アークスは微笑みながら言う。
「だったら早く済ますだけですよ」
アークスが石板の前に立つと、彼女の体が輝きだし、かつて『月の塔』で会ったルーンのような光球(今回は淡い緑色だが)が現れ、石板に刻まれている文字をなぞるように動く。これを読めということらしい。
「今回はそれを読めばいいんですか?」
アークスがそう問いかけると、ルーンの時のようにその光球が点滅した。どうやら肯定しているようだ。
身体を襲う倦怠感と戦いながらも、その光景に目を奪われているファルクスとミコト。
そんなことは知らず、アークスはその光球に頷くと、石板の心装珠に手をかざしながら、静かにその刻まれた文を歌うように詠う。
『語られし真実は、常に真の英雄を隠す。
偽りの英雄は、常に心の陰に孤独を持つ。
心の陰に生まれた孤独は、常に真実を隠す。
だからこそ、ここに我を残す。
我らが『彼女』を忘れぬように。
後の者に真実を・・・いや、我らの罪を伝えるために・・・・』
「(へぇー。ようやくかい)」
「えっ?」
アークスがそう詠い終わった時だ。彼女の耳にかすかに女性の声が響いた。
突然聞こえてきたその場にいない声をアークスは聞き取ろうとするが、周囲の状況の変化でその思考は打ち切られた。
アークスの周りに、淡い緑色をした光球と、大量の高濃度の『根源』属性の生命子が現れると、アークスの体と彼女の両腕に装備されている魔具オリジンの心装珠に吸い込まれていく。
それと同時に月の生命子を取り込んだ時のようにアークスの体を激痛が襲う。
「きゃああああああああ――――――――――!!!!!!」
「「アークス嬢!(アークス!)」」
かつて体験したとはいえ、痛みは慣れるはずがない。激痛に耐えるアークスにファルクスとミコトの2人が叫ぶ。
アークスが痛みをこらえて、何とかファルクスとミコトの方をを見ると、2人が愕然とこちらを見ていた。
どうやら、アークスの行っているオリジンへの生命子供給のおかげか、辺りを渦巻いていた根源の生命子が薄くなってきているらしく、先ほどと比べて2人の顔色は良くなっているが、アークスとアークスに起こっていることを見てまた青くなっている。
「あああああああ!!!(…………っく! この痛みは慣れませんね。………それよりも心配させてしまいましたかね…………?)」
そんな2人を見て、アークスが未だ襲ってくる痛みに、悲鳴を上げながらもそう考えた時、ようやく終わったのか、アークスを襲っていた激痛が引いていく。その痛みの反動から、アークスは思わず膝をつくと、浅い呼吸を繰り返す。
「はぁはぁ・・・」
アークスが浅い呼吸を繰り返していると、離れてその様子を見ていた2人が駆け寄ってきた。
「アークス嬢! 大丈夫か!?」
「そうだよ~!」
2人の顔色は今だ、少し悪そうだったが、大分回復したようだった。駆け寄ってきたそんな2人にアークスは笑いかける。
「はぁはぁ・・・・ふぅ。もう大丈夫ですよ。あとは…………」
アークスがそういって顔を上げ、石板の方を見ると、先ほどの淡い緑色をした光球が浮かんでいた。その光球はアークスの方へ近づくと、突然閃光を放つ。
あまりの眩しさに3人が思わず目を閉じる。光が収まると、両隣にいたはずのファルクスとミコトが居なくなっていた。
「ファルクス? ミコトさん?」
「あの2人には少し退場してもらったよ。これから話す内容は彼女らには関係ないからね」
アークスが消えた2人の名を呼ぶが、そこに2人ではない声で返事が返ってきた。
声のした方を見ると、そこには先ほどの光球と同じ、淡い緑色の髪と目をもった女性が笑みを浮かべて立っていた。アークスはその声に聞き覚えがあった。
「その声…………さっきの」
「なんだい。気付いてたのかい?聞こえないように呟いたつもりだったんだがねぇ」
その女性はけらけらと笑うと、アークスに向き直る。
すると、アークスの顎に人差し指を当て、顔を持ち上げさせると、視線を合わせた。
淡い緑色の目で見つめられ、なんとなく気恥ずかしい感覚になったアークスが、思わず顔を背けようとすると、その女性に顔の両端をつかまれた。
「な、なんですか?」
「あんた、名前はなんていうんだい?」
「えっと・・・アークスです。アークス・レクペラティオ」
「へぇ」
そういうと、その女性はもう一度、彼女の目を覗き込む。まるで何かを確かめるように、じっくりと。
「ふむ。やっぱりそっくりだねぇ。・・・なんかそそられるねぇ」
その女性はアークスを置いて、何か納得したようにそういうと、顔を近づけてきた。
「な、なにをする気ですか・・・・?」
「大丈夫だよ。優しくするからさ」
訳が分からず、混乱するアークスにただ、彼女はそう言う。思わず固まってしまったアークスにクスッと笑うと、再び顔を近づけ始めた。
2人の唇が触れ合わさる寸前。
「あんたは何やってるのよ――――――!!!」
いつの間にかその場にいたルーンが、アークスに迫っていた女性を引きはがした。ルーンはいまだ訳が分からず、放心しているアークスに「大丈夫かしら?」と聞く。
その問いにアークスがこくこくと頷くのを見ると、胸に手を当て、ほっと息をつく。そして、淡い緑色の髪を持つ女性の方へ振り返る。
「何やってるのよ!むしろ何する気だった!?」
「何ってキスに決まってるじゃないか。まぁできなかったけどねぇ」
激昂するルーンに悪びれもなくそう返す女性。
「なんでそうなるのよ!?」
「仕方ないだろう?あまりにもそっくりなんだからさぁ。あんたも実はやりたかったろう?」
「それはもちろん!!…………! 違うわよ!?」
その女性のペースに巻き込まれ、ルーンの本音が軽く出ていたりしていたが、アークスは、いまだ訳が分からず、混乱していたため、聞いていなかった。
そんなやり取りを遠目で見ていて、ようやく混乱状態から立ち直ったアークスが、いまだギャーギャー言い合っている2人に話しかける。
「えっと、ルーンさん。その方は…?」
アークスがルーンに問いかけると、しまったといった表情をしたルーンと、彼女と言い争っていた女性が首を傾げながら振り返った。
「ルーン? 何言ってるんだい? こいつの名前はル「駄目よ!?」むぐっ!?」
アークスの言葉に、何を言っているんだと言わんばかりの口調で話し出そうとした女性の口をルーンが慌てて塞ぐ。
ルーンの身長は155センチくらいなのに対し、その女性は170センチはあろうかというような身長のため、飛びつくようにして、ようやく口を塞ぐ。
そんなルーンの奇行に疑問を浮かべているアークスに笑いかけてから「アークスちゃん、ちょっと待っててね?」というと、その女性の口をふさいだまま、その女性にアークスから離れるように言うと、その場を離れる。そして、2人は小声で話し合い始めた。
「(いきなり何をするんだい?)」
「(まだ、私たちの正体は明かしちゃだめよ! だから私は偽名を使っていたのにっ!)」
「(いや、悪いねぇ。知らなかったし)」
「(だからね、あなたも本名言っちゃだめよ?)」
「(分かってるって。心配性だねぇ)」
「(あなたが良く忘れるからでしょうがっ!)」
「(それにしたってねぇ、『彼女』によく似ているねぇ)」
「(話を逸らさないのっ! …………まぁ否定はしないけど)」
ルーンが怒ったような表情をしているのに対し、その女性は悪びれもなく笑っている。
そんな2人を見てアークスが何を話しているのか疑問に思っていると、2人がこちらを見ていた。しかし、すぐに2人で向き合ってしまう。アークスはそんな2人の行動に首を傾げるが、2人の話し合いはまだ続くようだ。それを認識したアークスは呟いた。
「弓と癒属性の心術の練習でもしてますか」
そうして芋虫戦ぶりに、封印癒弓オーニスを呼び出すと白銀のユニの弦を引くと、練習を始めた。
その様子を遠目で見ながらも2人の話し合いは続く。
「(じゃあ、私はラディスとでも名乗るかねぇ)」
「(これからはちゃんとそう言ってくださいよ? あら? あの子何をしているのかしら?)」
「(何? て、どう見ても弓の練習と術の練習にしか見えないだろうに。ん? あの魔具は・・・!)」
「(そう。間違いなく『彼女』のものよ。だからあなたの加護も挙げてほしいのよ)」
「(まぁ、かまわないよ。さぁて、そろそろ行きますかねぇ)」
そういってルーンと女性は、今は心術の練習をしているアークスに近づくと、アークスが2人の方を振り向く。
女性はそんな彼女に笑いかける。
「待たせたねぇ。この馬鹿が煩くてねぇ」
「誰が馬鹿よ?」
「あんたに決まってるだろうに」
ルーンが馬鹿という単語に反応してそういうと、呆れながらルーンにそう返す女性に、アークスが苦笑を浮かべると、その女性は咳払いをして話し始める。
「遅れたけど私の名前はオ・・・・いや、ラディスだよ」
本名を言おうとしたその女性、もといラディスをルーンが睨むと、ラディスはしまったというようにかぶりを振ると、訂正をした。そしてルーンに頷く。
「えっとね? アークス嬢ちゃんに『根源の加護』を挙げようと思ってねぇ」
「『根源』…………ですか? それはどういったもので?」
「はははは! 細かいところまで気にする。 ホントそっくりだねぇ!」
アークスの質問にラディスがなぜか豪快に笑いだす。アークスが、そんなラディスに呆気にとられていると、彼女が話し出す。
「まぁ、根源っていうのはさ、こう、なんていうのかねぇ…そう! 自然を操るんだよ」
「自然…ですか?」
ルーンはそんな大雑把な説明をするラディスに嘆息すると、ラディスに抗議する。
「そんな適当に言ってわかるわけがないでしょ?」
「ですが、ルーンさんもそんな感じでしたよ?」
そんなアークスの言葉にルーンが「うっ!」と言葉に詰まる。実際に目の前でいきなり生命術を使い、分かったかと聞いてきたことをアークスは覚えている。
狼狽しているルーン。それを見てラディスが豪快に笑う。
「なんだい。人のこと言えないじゃないか」
「う、うるさ――――い!!! アークスちゃんも余計なこと言わないで!」
顔を真っ赤にして叫ぶルーンに対し、1人は苦笑し、もう一人は大笑いする。
「まぁ、とりあえずさ、その心装具、オーニスだっけ?ちょっとこっちに持ってきな」
「は、はい」
アークスがオーニスを持ってラディスに近づく。
すると、いつの間にかラディスの手に、先ほどの淡い緑色の光球が灯っており、ラディスはそれをオーニスの色の灯っていない心装珠の前へ持っていくと、押し込む。
アークスが、ラディスに光球が押し込まれた心装珠を見ると、灰色だった心装珠が光球と同色の淡い緑色が灯っていた。
それを確認すると、アークスはラディスを見た。すると、先ほどと同じ光球を手に、微笑んでいた。
「え、何を…?」
「おまけさ」
「何やってるのよ!?」
そういい、アークスに近づくと、その光球をアークスの胸に押し込んだ。
それを見てルーンが慌てたようにラディスを止めるが、その光はすべてアークスの胸の中に吸い込まれていった。それを確認するとラディスは微笑んだ。
「アークス嬢ちゃん。もう痛くないだろ?」
「え……?あ、本当ですね。もう痛くないです」
アークスがやっと気付いたというようにして言う。
先ほどまでルーンから『月の加護』をもらった時のような痛みが体を襲っていて、我慢していたのだが、その痛みがなくなっている。
「ラディスさんありがとうございます。」
「いいって。加護はかなり負担をかけるからねぇ。仕方ないさ…っと、そろそろ時間だねぇ」
「そうね。ちょっと話過ぎたわ」
「えっと、もうですか?」
2人は顔を見合わせるとそう言い、もう一度アークスの方へ向き直る。
「向こうじゃまだ光を受けた時で時間が止まってるから安心しな」
「そうよ、だからそんな心配そうな顔をしなくても大丈夫よ」
アークスは、前にファルクスとミコトに迷惑をかけたため、もう一度そうなるのではないか?と心配していたことがばれたことでばつの悪そうな顔をする。
「そんな顔をしてもかわいいだけさね。…奪っちゃおうか?」
「ラディス!!」
「冗談だよ。まったく」
眼が冗談ではなさそうなラディスをルーンが睨むと、ラディスが突然、右腕を上げた。するとアークスの足元に魔法陣のようなものが現れた。
「じゃあ、またね」
「また、会える時まで」
「はい。また・・・・・」
2人の言葉にアークスがそこまで言ったところで、転移される。残ったのはルーンとラディスの2人だけだった。
数秒の沈黙。そんな中、ラディスが先に口火を切った。
「なぁ、ルーン」
「別に今はそっちの名前じゃなくてもいいわよ。オリジア」
「そうかい? じゃあルナって言うよ? それにしてもねぇ・・・・・」
ラディス、もといオリジアの言葉にそう返すルナ。それを了承したオリジアはため息交じりに言った。
「アークス嬢ちゃんは思っていた以上に『彼女』そっくりだねぇ」
「まぁ、ね」
嘆息してルナがそう答える。そして、アークスの目を通して外を見ると、オリジアは呆れたように言う。
「ねえ、ルナ。あの時と同じくらい魔素が漂ってるように見えるんだが?」
「…大丈夫よ。私にもそう見えるから」
そういうと、2人してため息をつくと、その場から掻き消えた。
……………そんな2人を見送るようにして、アークスの月と根源の生命子が辺りを渦巻いていた。
閑話とか考えていますがアイディアというか、需要がわかりません。何かアイディアをくれると嬉しいです。・・・・・期待に添えられるかどうかは別として。とりあえず、もう少しだけ募集して見ます。感想、評価お願いします。




