13話 静霊の森
またまた変なところで終わってしまった。とりあえず遅れてすみません。
―オリジアナ大陸 オリジア地方南部 隠者の里レムリア
アークスたちがレムリアに辿り着いた翌日。アークスたちはようやく聖地に行くことにした。昨日は疲労と少しばかりの騒動で動けなかったのだが、休んだことで疲労感もとれたのだ。
「わしの娘がすまなかったのぅ」
「あはは………、まぁ、そうですけど私にも非はありますし」
アークスは実際に昨日の出来事事態が、アークス自身がしっかりしていれば起こることは無かったということは自覚している。
だからこそ、アークスが苦笑してそういうと、彼女の隣にいた太陽のような金髪を持った少女、ファルクスとミコトと同じ薄紫色の髪をした少女、メルティがアークスから顔を背けた。
そんな2人にアークスは息を吐き出すと、その2人に笑いかけた。
「もう怒ってませんよ。だから安心してください」
「「………」」
「………???……2人とも? どうしたんですか? 顔が赤いですが?」
アークスが怒っていないことを見せるためにばつの悪そうにしている2人に笑いかけると、アークスに笑いかけられた2人は顔を真っ赤にして惚けていた。
ファルクスにとってアークスは自分と同じ境遇を持ち、手を差し伸べてくれた上に、ファルクスそのものを認めてくれた存在であり、メルティにとっては自分が襲いかかったのにもかかわらず笑顔で許してくれて、包み込んでくれた存在で、2人にとっては憧れよりも好意の方が大きい。
そのため軽く恋のような状態になっているようだ。尤も、3人とも同性であるのだが。
そんな状態の2人を軽く無視すると、ミコトが口を開く。
「この里の先にある『静霊の森』。そこが今回の目的のオリジアの聖地だ」
「ですがどこまで行けばいいんですか? 森とはいっても、最も生命子の濃いところまでいかないと、オリジンに注げませんよ?」
そうである。実際にオリジンに生命子を注ぐには聖地の中心、つまり生命子が放出される場所までいかなければならない。それがどこであるのか分からない以上、探索は無謀ともいえる。
「安心せい。それについては見当がついておる」
「それって何処なのさ~?」
ストリアが見当がついているというと、先ほどまで惚けていたファルクスがいつの間にか正気に戻ったのか、アークスの隣へと移動しており、ストリアに問いかけていた。ストリアがファルクスの言葉に頷く。
「森の奥の開けた場所に石板がある。おそらくそれじゃな」
「石板ですか?」
アークスがオウム返しのように聞き返すと、ストリアが再び頷く。
「さようじゃ。あの石板には多くの生命子が記憶されていたようでの。よほどのものでなければ近づくことさえできん」
「そんなところ、私たちが行けるんですか?」
「正直な話、どうなるか分からんのじゃ」
そう聞いてアークスは不安になり、ストリアにそう聞くが、返ってきたのはまたしても分からない、という答えだった。
アークスたちが呆気にとられた表情をしているのを見て、ストリアは申し訳なさそうに顔を歪めた。
「その場所までたどり着いた者がおらんのじゃよ。故に何もわからん。…………すまんの」
「い、いえ! 別に攻めたわけではっ」
「わかっているよ。ただ、本当に何があるかわからん。………本当に行くのかね?」
アークスが慌てて謝るが、ストリアは分かっているといい、そう聞いた。彼の眼にはこちらを試すかのような感情が見て取れた。
そんなストリアの視線を受けて、アークスは後ろを振り返った。
振り返ると、ファルクスは微笑みを返し、ミコトは静かに頷いた。
アークスはそんな2人に笑みを浮かべて頷くと、再びストリアと、その隣で心配そうな顔をしたメルティの方を振り返る。
「行きます。私がやらなくてはならないみたいですから」
決心固くそう返したアークスに、ストリアはしばらくの沈黙の後、………そうか、と呟く。
「なら止めはしない。…………気を付けるのじゃぞ?」
「「「はい!(うん!)(ああ)」」」
そう返して森の入り口の方へ歩き出そうとすると、アークスの上着の裾を引くものがあった。彼女が振り返ると、メルティが目に涙を浮かべ、肩を震わせていた。
「ほんとに戻ってくるよね?」
「…………必ず」
どう返せばいいか分からなかったアークスはとりあえずそう返す。
すると、メルティの目はいまだ涙を浮かべていたが、彼女は無理やり微笑んだ。
「待ってるからね。アークス。ファル。…………そしてお兄ちゃん」
「今お前、完全に自分のことを忘れていただろう?」
ついでのように自分の兄を呼ぶメルティにミコトが突っ込むと、メルティの顔に笑顔が戻る。
そのやり取りを1人は苦笑し、また1人は大笑いし、また1人はまたか、と呆れていた。
「とりあえず…………行ってきますね? ほら、行きますよファルクス」
その2人のやり取りが終わった後、そういうとアークスはファルクスの手を取り、歩き出す。2人はその場にいたストリアとメルティが見えなくなるまで手を振りながら、何処か神秘的な雰囲気を醸し出している静霊の森の中へと消えていった。
2人を追う様にミコトが行こうとすると、ストリアが呼び止め、ミコトにしか聞こえぬように呟く。
「…………頼んだぞ」
「…………言われるまでもない」
ストリアの呟きにミコトはただ1言、そう返すと2人が入っていった静霊の森へと消えた。
…………実の家族であるストリアとメルティを振り返ることも手を振ることも無く。
それを見届けるとストリアは、隣で嗚咽を漏らす自分の娘の方へ振り向いた。
「………メルティ。先に帰ってなさい」
ストリアがそういうと、メルティは頷き、家へと入っていった。
家へと向かう彼女のその背中には帰ってきてくれた兄への思いと、自らを癒してくれたアークスへの思い、そして早くも心を許したファルクスへの思いが見て取れた。
そんなメルティが家の中へ姿を消すのを見届けると、先ほど3人が入っていった静霊の森を見て、ストリアは呟いた。
「3人にオリジアの加護がありますように…………」
誰に言うわけでもなく、ストリアはそう呟くと、踵を返し、生命術で転移を行わずに家の方へと歩き出した。
…………ストリアの呟いたその言葉を受けて、森に渦巻く根源の生命子が輝いたのに気付いたのは誰も居なかった。
―オリジアナ大陸 オリジア地方聖地 静霊の森
静霊の森はアークスは自分が暮らしていた古代の森やレムリアに行く際にとおった迷走の森とは違い、木々が鬱蒼と茂っているのにもかかわらず、照明によって照らされているように明るいという森であったため、迷ったりすることもなかったが、3人はその神秘的な光景に目を奪われ、そして異常さに驚いていた。
「此処、本当に森の中なんですよね…………?」
「ほんとだよ~。森の中なのに明るいんだもん」
先ほど襲ってきた兎型原生生物『ラビ』の素材を剥ぎながら、そう2人が言う。すると、ラビを倒した後から目を閉じていたミコトがゆっくりと目を開くと、何か納得したような表情を浮かべた。
そんなミコトにアークスが話しかける。
「どうしたんですか?」
「ああ、どうやらこの明かりは根源の生命子を用いた生命術のよる物のようだ」
「「生命術(ですか)!?」」
驚くのも無理はない。アークスはルーンから聞いているので知っているが、生命術が発動しているということは、奥に意思のある何かがいるということである。
「いったい何が生命術を?」
アークスがそう聞くと、ミコトは悔しげに首を横に降る。
「すまない。自分は感知はできても、そういったことまでは分からない。だが、警戒はしておくべきだろう。先ほど襲って来たラビも普段なら襲ってくることは滅多に無い筈の原生生物だ」
「そういえば、なにかに怯えていたような…………?」
ミコトが言う様にこのラビという原生生物はヒトを見ると、まず逃げるような生物なのだが、何故か3人に襲いかかってきた。
――――――まるで何かにおびえるかのように。
それを感じ取ったアークスは剥ぎ取った素材をオリジンにしまうと立ち上がる。
「嫌な予感がします。気を配りながら行きましょう」
「そうだね~」
アークスがそういって再び歩き出そうとすると、ズズンっと森の奥から木が折られるような音と何かが倒れるような音が聞こえた。
思わず3人は顔を見合わせる。
「あそこは…………長老に聞いていた場所に近いな。だがこの森の原生生物にあんなことのできる者はいないはずだが…………?」
「考察はあとですよ! 急ぎましょう!」
「うん! いっそげ~!」
そういってその場に向かって走り出す二人をミコトは慌てて追いかける。
「もう少し周りに注意を払え!」
…………そういうミコト自身も、あまり周囲に対して警戒していないことにミコトは気付いていなかった。
―静霊の森 奥地
3人が急いで音のした方へ行くと、そこには芋虫のようなものがいた。
…………芋虫といっても有に10メートルはあろうかといったような大きさで、木をその巨体でへし折ってはその木を食べており、辺りには食べ散らかした木のカスと折られた木の切り株、そしてその芋虫がボリボリと木を食べる音だけが聞こえていた。
「なっ!?」
「何あれ~!?」
「変わった芋虫ですねー? 木をそのまま食べてます」
「アークス~!? 違うよ(アークス嬢!? 違うだろう)?!」
ミコトとファルクスは驚きの声を上げ、アークスも驚いた。
………2人とは驚きの着眼点が違いすぎるが。
その声に反応したのか、芋虫がアークスたちの方を振り向いた。芋虫の虫特有の複眼には、様々な角度に幾つもアークスたちが映っていたが、何を考えているのかはわからない。
「なんだこいつは………? 自分はしばらく世界を旅をしてきたが、こんな魔物は知らないぞ………?」
このメンティスティアを旅をしてきたミコトでさえ、こんな魔物は見たことが無いという。
困惑する一同に、おそらくアークスたち3人を敵と判断したのか、芋虫が向き直る。
「は、話し合いを…………」
「アークス! あんなのに話し合いなんてできるはずないよ~!」
「来るぞ!」
いつものことながら話し合いを提案しようとしたアークスを止めると、ファルクスが心装具である大鎌ルーメンを具現化すると、上段に構える。
さらに、ミコトが敵の攻撃に備え、腰にある魔具である大太刀の鎌鼬に手を添える。
すると、アークスたちが武器を構えたことで完全に彼女たちを敵とみなした芋虫が、ピギィ――――! と咆哮したかと思うと、突然体を丸め、縦に回転し始める。そして、辺りにあった木をなぎ倒しながら突進してきた。
転がるようにして突進してくる芋虫は意外と速く、普通に突進してくると踏んでいたアークスたちは判断が遅れてしまい、何とかよけることしか出来なかった。
「これだと心術が……! くっ! オーニス!」
何とか突進をよけたアークスは、再び戻ってくる芋虫を見て、これでは心術は使えないと判断し、自分の心装具であるオーニスを具現化すると、その白銀の弓を上方に構えた。
「降り注げ! 『空烈』!」
心技として放たれた1本の矢は芋虫の上空で数十本に拡散し、芋虫へと降り注ぐ。しかし、再び芋虫が体を丸め、その場で回転すると、その矢は全てはじかれてしまった。
「アークス~! 効いてないよ~!」
「見ればわかりますよ! !? ファルクス!! 危ないです!」
「えっ!? きゃああああ――――!!!!」
「「ファルクス(ファルクス嬢)!」」
ファルクスがアークスにそう伝えるが、その隙に防御のため、体を丸めて回転していた芋虫がそのまま突進してきたため、反応が遅れたファルクスが吹き飛ばされた。
吹き飛ばされたファルクスは木に勢いよくぶつかり、そのまま動かなくなった。どうやら意識を失ったらしい。
「今、回復をっ「待て! アークス嬢! 今行ったら奴の餌食だ」ですがっ!? くっ!」
回復しようにも、ファルクスが吹き飛ばされたのはアークスとは逆方向で、回復しに行こうとしても、芋虫はどうやら動いているものだけを狙っているらしく、芋虫が完全にこちらに狙いを定めているため、ファルクスを回復に行くことすらできない。
「なら、せめて防御だけでも! 『彼の者に強固な防御の壁を 「プロテクト」!』
アークスが心術を詠うとアークスとミコト、さらには気絶しているファルクスの周りに一瞬だけ六角形で囲まれた壁が生まれ、ミコトに張り付くように彼女たちの周りを数かい回ると、まるで彼女たちに吸い込まれるかのように消えていった。
『プロテクト』。これはアークスが、まだエンシスと狩りをし始めた時に考えた補助系の心術で、狩りに行くと、高確率でエンシスが怪我をするのでそれの予防として生み出した心術である。
発動した時に、範囲内にいるかけたいと思った人物全てを対象と取るが、考えた当時は2人だったため、あまり意味が無かったのだが。
アークスが発動した『プロテクト』を見たミコトは、魔具である鎌鼬で、芋虫の攻撃をそらしながら、思いついたようにこう言う。
「アークス嬢! そのプロテクトのように回復心術を飛ばせないか!?」
そういわれてアークスは、はっとすると頷く。確かに補助の心術を周辺に飛ばすことが出来るのなら、回復の心術も飛ばせるはずである。
「試したことがありませんが、やってみます!」
アークスはそういってイメージトレーニングを始めた。
アークスはそこでルーンに言われたことを思い出すと、自分の心力と月の生命子を混ぜ始める。
「(強力なものを用いるときに心力と生命子を同時に用いることが出来れば…………! 回復心術を月の生命子に乗せて…………月の生命術に変えて周りに放つ…………!)」
「ぐわあああぁ!!!」
アークスがイメージトレーニングをする中、アークスの詠唱を助けるために囮になっていたミコトがいなし切れず、木にぶつかっていた。
まだミコトは意識があり、立ち上がろうとして動いていたため、いまだ芋虫はミコトを狙っているようだ。
ミコトが顔上げ、イメージトレーニングをしていたアークスの方を見ると、アークスの口から洩れる心術でも生命術でも無い詠唱の旋律が耳に入った。
その時、ミコトはもちろん、何故か芋虫までもが心を奪われた。何故ならアークスの口から洩れてきたのは詠唱と言うよりも歌のようだったからである。
通常、生命術は詠唱を必要としないし、かといって詠唱を必要とする心術の詠唱は、韻をふむ様に唱えるのだが、この時のアークスの詠唱は歌の旋律のようであった。
「『安らぎを求めるは月。安らぎを与えるは光。月の光よ、集え。集いて此処に癒しの施しと惑いの光と成せ 「ムーンライト」!』」
アークスが美しい声で心術でも生命術でもない術の詠唱を詠い終わった瞬間、辺りに優しい光が降り注いだ。
その光はアークスとミコト、ファルクスを包むと傷が癒えていき、3人と同じ光を浴びた光を浴びた芋虫は悶え苦しんでいた。
悶え苦しむ芋虫をミコトは居合剣で切り裂き、先ほどの術で目が覚めたファルクスがルーメンで単純に斬りつけると、2人によって斬り裂かれた斬り口から緑色の体液が噴き出す。
2人はそれを浴びないように芋虫を迂回しながら、芋虫から少し離れた場所にいたアークスの横へといく。
「成功です!」
「ああ。助かった。 だがあれは…………?」
「ちょっと! ぼくを忘れないでよ~!」
ミコトが先ほどの術についてアークスに聞こうとするが、駆け寄ってきたファルクスに遮られる。
聞くことをあきらめたミコトが引き下がると、アークスがファルクスに微笑んでから、先ほどの術の効果か、未だもがき苦しんでいる芋虫を見据えてこう言った。
「ファルクス、あの時と同じく、もう一度あれを。はっ!」
「あれは危険すぎると思うけど~? 前やった時どうなったっけ? 『炸裂する緋王の力 「ブレイジ」』」
「ならどうしますか? 行ってください! 『速牙』!」
「アークス嬢たち、なんだかんだ言って容赦ないな。『魔空刃』!」
アークスが放った白光の矢を防御しようとしたところをファルクスの放った心術で具現化した太陽の光に焼かれ、アークスの放った心技の数本の矢が突き刺さり、ミコトの放った魔技である居合剣で斬り付けられても、いまだ倒れない芋虫をしり目に3人は話し合った。
正直言って、3人の技は手数は多いが火力が無さすぎるのだ。
かといって、かつてストレンジボアを倒したときに使った、月と太陽の心術を混ぜた合成心術である『リミットエンド』はリディス草原をクレーターだらけにする程の威力なため、逆に強すぎる。少しでも制御を間違えば自分たちも危ないのだ。
「なら今度は自分とやってみるか?」
「ミコトさんとですか? わかりま「駄目!」…………どうしたんですかファルクス?」
大声を上げたファルクスを見ると、何故か涙目になっていた。そのファルクスの挙動に意味が分からず首を傾げる2人にファルクスが呟く。
「アークスはいつも道理だけど、ミコトもミコトだよ~…………。自分とヤってみるかなんて…………」
「??? ファルクスは何を言ってるんですか?」
「今、明らかに『やる』の発音がおかしくなかったか? 自分が言ったのは合成心術のことだ。 …………頼むからアークス嬢はそのままでいてくれ」
「??? はぁ?」
ファルクスの言った発音について突っ込むミコト。そして彼はアークスそんな風になってほしくないと切実に願った。
――――――もっとも、ミコトに肩を掴まれて、そう頼まれたアークスは、ファルクスに対して保護欲はあるが、恋愛感情は無いうえ、自分が何を言われているのかをはっきりと理解していないのだが。
そんなことをしている間に、さきほどアークスの放った『ムーンライト』の効果が切れたのか、芋虫がはっきりとこちらを見ていることに気付いた。
しかし、先ほどのアークスたちによる度重なる攻撃でダメージを受け過ぎたのか、もう丸まることはできないようで、丸まらずにこちらに向かってきていた。
「夫婦漫才は後にしてください! 来ますよ!」
「「誰が夫婦だ!(アークス! 誤解しないで!)」」
アークスの言葉に心外そうにそう叫んだ2人をアークスは普通に無視すると、2人に振り向いた。
「ミコトさん。行きますよ! ファルクスは私たちの援護を!」
「ああ!」
そういって目を閉じると、心力を同調させると、いつものように頭に流れ込んでくる合成心術の詠唱を始める2人。
「アークスもイきますなんて…………」
そんな中、援護を頼まれたはずのファルクスは、いまだ変な世界にいた。
そんなことは関係無しに2人は詠う。
「『安らかに誘う夜の闇に浮かぶ満月を』」
「『隠すは黒き雷雲と豪雨の縛さ』」
「「『『今こそその夜の静寂を破り、雷の裁きを! 「トニトロスムーン」!』』」」
2人がそう詠い終わると、突然、空に大量の心力と生命子が含まれた雷雲がかかった。
その雷雲に金色の巨大な魔法陣のようなものが浮かぶと、その魔法陣から放たれた月の色の光の鎖が、アークスたちの方に向かってきていた芋虫の身体を絡め捕る。
芋虫は最後の力を振り絞り、自らを戒める光の鎖から抜け出そうともがくが、さらに放たれた数本の光の鎖が巻き付かずに、芋虫の体に容赦なく突き刺さり、その体を貫通する。
その傷口からとめどなく芋虫の緑色をした体液が噴き出すのを見て、思わずファルクスが呟いた。
「…………結構エグイね~。この術」
「「…………止めです(止めだ)」」
ファルクスの呟きを無視して2人が呟くと、空の巨大な魔方陣から巨大な雷が何発も放たれた。
それらの雷は幾度となく芋虫を焼くと、落ちた雷撃が再び空に上がり、魔法陣の中央で一つの雷となって降り注いだ。ズガ――――ン!!! と耳鳴りを起こすような爆音の後、砂煙が晴れると、そこには芋虫であったであろう消し炭がほんの少しだけ残っているだけだった。
「これだけの威力で被害が芋虫が暴れていた範囲にしか被害がないのが凄いよね~?」
ファルクスの呟き通り、辺り一面焼け焦げてはいるが、芋虫の突進や食べていた範囲にしか影響がないのである。
「まあ、手加減というか、調整したしな。だからこの術を使ったときは近づくなよ」
「そうですよ。調整しないと効果範囲はもっと広いですからね。だから近づいてはだめですよ?」
ヴェネスであり、もとより残忍な本能を持つファルクスでさえ、やりきったような表情で口元に笑みを浮かべ、口をそろえてそう言う2人に顔を青ざめさせながら頷くことしかできなかった。
「とりあえずかなり時間を取られたが行くとしよう」
「はい! ほらファルクスも」
「う、うん!」
ミコトの声に返事をしながらファルクスの手を握ったアークスは、彼女がビクビクと若干震えていることに気付くはずもなかった。
…………まぁ、繋いでから数秒で幸せそうな顔に変わっており、震えも止まっていたが。
次回やっとオリジアの聖地へ。閑話とか考えていますがアイディアというか、需要がわかりません。何かアイディアをくれると嬉しいです。・・・・・期待に添えられるかどうかは別として。感想、評価お願いします。




