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心と友に(仮)  作者: navi
1章 旅の始まり オリジアナ大陸編
15/21

12話 隠者の里レムリア

12話更新です。今回は会話が多いのかな?まあ、どうぞ。







―オリジアナ大陸 オリジア地方 隠者の里レムリア 長老宅前


「ここが長老の、いや私たちの家だよ」


 2人に左右から引っ張られ、里のエルフたちに優しい目で見られたり、かまわれたりしながらも、ミコトに遅れること数十分。

 アークスとファルクスの2人はメルティに連れられ(どちらかといえばアークスが2人に引っ張られ)、この里の長老ストリア・ルトライトの家を訪れていた。ここが長老、いや自分たちの家だと紹介したメルティに、アークスが思ったことを聞く。


「私たちですか? と、いうことは」


「うん。私の名前はメルティ・ルトライト。ラルお兄ちゃんの妹だよ」


 メルティのその答えにアークスは納得する。

 何故なら髪の色も顔つきもミコトとそっくりなのだ。違うのは性別、髪形そして身長ぐらいか。ミコトは薄紫の髪を後ろで一括りにしているのに対し、彼女はいわゆるポニーテイルと言った感じ。身長はミコトは180以上あるが、メルティはアークスよりも少し高いといった感じである。

 しかし、あまりに似ていると何か可哀そうな気が気がしてくる。なにせ、性別が違うのにそっくりということはあまりにも残酷だ(結構ひどい)。

 アークスがメルティを見ながら、結構ひどい考えをしていると、ファルクスがもうダメ…と呟くとその場にへたり込んでしまった。


「アークス~。いいから入ろうよ~………。ぼくら、昨日から少しの携帯食料しか食べてないし、ろくな睡眠もとって無いんだよ? というかさ~なんでアークスは平気なのさ……?」


 意識を失っていたアークスはある程度の睡眠をとっていたが、目を覚まさないアークスが心配で、ろくに眠ることも食事をとることも出来なかったファルクスは限界に近い。しかし、思い返せばアークスは自分よりも少しの食事しかとっていなかったはず。それなのにアークスは平然としているのである。

 ファルクスは呆れるような、また尊敬するような視線をアークスに向ける。そんなファルクスに彼女は飄々と微笑んで答える。


「過去に獲物がとれないことだってありましたし、獲物に追いかけられて2日とか何も食べない時もありましたからね。ようは慣れですよ」


 アークスの答えに、慣れかぁ……。慣れたくないな……、とぶつぶつ呟くファルクスを無視して、アークスは空腹で動けないファルクスを自分の背に背負うと、目の前の長老の家の中へと歩き出した。

 ………アークスに背負われているファルクスは嬉しそうに顔を綻ばせて彼女の背中に顔をこすりつけ、幸せそうな表情をしており、それをみたメルティは不機嫌そうに、むすぅーと頬を脹らませていたことにアークスが気付くことはなかった。





―隠者の里レムリア 長老宅


 アークスたち3人が中に入ると、おそらく客間であろう部屋の真ん中におおきな机が置かれており、いくつも並べられた椅子の1部に長老とミコトがすでに座っていた。

 2人がアークスたち3人が入ってきたことに気づくと、ストリアが手で3人に座るように促す。


「遅かったのぅ? 何かあったのかの?」


「えっと………いろいろありまして………」


 アークスは背負っていたファルクスを自分の横の椅子に座らせると、椅子に座った。

 降ろされたファルクスは若干不満そうな表情をしているが、あまり顔色が優れない。どうやら空腹と疲労で文句も言えないらしい。アークスは苦笑いをすると、ストリアに頼むことにした。


「あの、できれば先に、彼女に何か食べさせても構いませんか? もう限界のようなので……」


「うむ、では先に食事とすると良い。メルティ。頼めるか?」


「うん。わかったよ。ほら、ファル。いくよ!」


 ストリアに頼まれたメルティが空腹のあまり、う~………、と唸りながらも机に突っ伏していたファルクスの手を引き、家の奥へと姿を消したことを確認すると、今まで黙っていたミコトが口を開いた。


「アークス嬢、その魔具(ベネフィクス)、オリジンを長老に見せてくれないか?」


「オリジンを、ですか? かまいませんけど…」


 ミコトにそういわれ、首を傾げながらもアークスは手袋の形状になっているオリジンに心力(コーディス)を注ぐ。

 すると、オリジンについている心装珠(アニリス)が光を放ち、オリジンが待機状態である手袋からいつもの籠手状へと変化した。

 いつもの籠手の形状に変化したオリジンを見て、ストリアは目を見開いた。

 ストリアには何か心当たりがあるらしく、彼女の両腕に装備されたオリジンをしばらく見つめる。そして何かの思い当ったように震えるような声で、その様子を不思議そうに見ていたアークスに問いかけた。


「アークスといったかの。これをいったい何処で……?」


「ルナ地方で『月の塔』と呼ばれている古い塔の中ですよ。ルーンさんの話によれば、そこがルナ地方の聖地だったようですが」


「そうか……ならやはり……」


 考え込むストリアにミコトは呆れたようなしぐさをすると、先を促がした。


「どうでもいいが、結論だけ言ってくれないか?アークス嬢も疲れているだろう?」


 ミコトの言葉にアークスが頷く。さすがに疲労や空腹に慣れているとはいえ、彼女も女の子。ハイド川から今まで、ろくに休憩もしていないため、疲労が溜まっていた。


「すまんの。長生きするとどうも考え込んでいかん。とりあえず、わしが知るのはそのオリジンに似た魔具(ベネフィクス)の伝承じゃ」


 そこで話を区切ると、2人の顔を見てから話し出した。


「かつて、心魔(メイヴ)がこの地に現れた時、かの英雄をまとめた、賢者アトム・マクスウェルが自ら作ったとされる宝具クラスの魔具(ベネフィクス)の中に、使用者の純粋な心力(コーディス)を詠唱なしで武器や防具へと変える魔具(ベネフィクス)があったといわれておっての。さらには魔具(ベネフィクス)でありながら意志をもち、心魔神(メイヴス)との戦いにおいて重要な役割を持ったとされる魔具(ベネフィクス)。…………これがわしの知る伝承じゃ」


 説明を聞いた2人は顔を見合わせた。少しばかり今のオリジンの性能と相違があるのからである。

 確かにオリジンには意思があり、心力(コーディス)を武器には変えることが出来るが、防具などに変えることはできない。


「まあ、伝承じゃ。少しばかりの違いがあるのは仕方あるまい。それに、そのオリジンとやらが本物かどうかは、まだわからん」


 ストリアはアークスに笑いかけると、そういった。所詮伝承だ、と。その時、くぅーとアークスのお腹が空腹を訴える音が聞こえた。流石に慣れているとはいえ、少しばかりの保存食では足り無かったようである。

 空腹を知らせる音を聞き、ミコトとストリアの優しげな視線を受けたアークスは、おもわず顔を赤らめる。アークス自身、一応女であるためそれなりの羞恥心は持っているつもりなのだ。目の前でこのような状況になったら恥ずかしいのだ。


「す、すみません! こんな大事な話のときに!」


「いや、かまわんよ。むしろすまなかったのぅ。奥にメルティが料理を用意しておるじゃろう。行っておいで」


 恥ずかしさで赤くなるアークスに、ストリアは悪いのは自分だといい、アークスに先に休憩するように言う。アークスとしてはありがたいが、2人はどうなのだろうか、と思い、口を開く。


「ですがお2人は?」


「自分ももう少ししたらそちらに行こう。アークス嬢は先に行っていてくれ」


「わしはおぬしたちが里に着く前に、少しばかり食べたのでの」


 アークスが訪ねると、ミコトはアークスたちと同じようにまだのようで、まだあと少ししたら行くといい、ストリアはアークスたちが来る前にもう済ませたのだという。それを聞いて安心したアークスは椅子から立ち上がると頭を下げる。


「なら、失礼します」


 そういってアークスが奥へと消えていくのを確認したストリアは、自身の隣に座っているミコトの方へ顔を向けると、彼は彼女、アークスが消えた家の奥へと続く通路を見ていた。あの時と同じ表情を浮かべる自分の息子のその様子にストリアは嘆息する。


「…………心配なのかの?」


 ストリアのその問いに、しばらくの沈黙の後、ミコトが答える。


「…………ああ、アークス嬢は気付いてないようだが、何かが引っかかる。それに嬢からはオリジンとは別にもう一つの意思を感じるんだ」


「先ほどの目の虹彩の色の変化のときじゃな? わしも確かに感じた。…………どうやらこちらに敵意はないようじゃが」


 確かにあの時、アークスがミコトの方を向いたとき、黒色だった彼女の目の色が金色へと変化していた。しかもその時に、何かしらの意思を感じたのだ。

 少なくともアークスや自分たちに敵意はないにしても、用心しないわけにもいかない。

 そう考えているミコトに、ストリアが、まるで彼の心を読んだかのようにいう。


「あまり、根を詰めすぎるとかえって悪いぞ?おぬしは少しばかり焦りすぎじゃ。今回のことも、あのことについても」


 それを聞いたミコトは若干の沈黙の後、………わかっているとだけ返すと、再び押し黙ってしまう。

 再び2人の間にしばらくの沈黙が流れる。そして、どちらが先だったか、口火を切ろうとすると、奥から騒がしい声が聞こえてきた。

 2人が耳を澄ませてみると、どうやら先に奥へと行ったあの3人が何やらやっているようだ。


『アークス! これ食べてみてよ!』


『ずるいよ~! アークスこっちも~!』


『両方とも食べますから! 2人とも少し落ち着いてください!』


『『あーん!』』


『ま、待ってください! 私は一度にそんなに食べられなっ………! むぐっ!? むー!』


『やるね、ファル!』


『メルもね~! でもこれだけは譲らないよ~!』


「「・・・・・・・」」


 聞こえてきたやり取りに思わず沈黙する2人。

 その数秒後、ストリアの前では滅多に笑わず、苦笑程度しかしなかったミコトが、楽しげに笑い出した。


「ははは! アークス嬢たちといると、悩んでいるこっちが馬鹿らしいな。どれ、そろそろ自分も行くか」


 そういって、口元に笑みを残しながら、奥へと消えていくミコトを見送ると、ストリアは満足そうに言った。


「…………まさかあの堅物息子が楽しそうに笑う日がくるとはのぅ。この里を出た時のあいつからすれば考えられぬの。これもアークス嬢たちのおかげかの。何がともあれ、あやつもいい方向に変わっているようで何よりじゃ。これならもう大丈夫じゃな………………」


『アークス嬢。大丈夫か?………大丈夫じゃなさそうだな』


『むー! むー!(ミコトさん! 助けてください!)』


『すまん、アークス嬢。何て言っているか分からない。…………大体予想はつくが』


『む、むむー! むむ―――!(なら、助けてください! 疲れてオリジンも使えないんです!)』


『ほらほら! お兄ちゃんなんかほっといて、もっと食べてよ!』


『アークス、こっちもだよ~!』


『お前ら、いい加減にしないとアークス嬢が危ないぞ』


『む!? も、もうだめ…………で、す……う~ん…………』


『『わーっ!? アークス!? 大丈夫!?』』


『いや、どう考えてもお前らの所為だと思うが?』


『『早くベットに運ばなきゃ!』』


『…………いや、俺が運ぶからお前らは片づけをしていろ』


『『いや、私が(ぼくが)!』』


『…………怒られるぞ?(ぼそっ)』


『『は、はい!(わ、分かった!)』』


 …………彼の最後の呟きは、再び奥から聞こえてきた彼女たちにミコトが加わり、より騒がしくなった喧騒に飲まれ、誰にも届くことはなかった。






―一方その頃 マクスウェル大陸 帝都マクスウェル マクスウェル城


 未だとして皇帝と彼の2人は見つかっていないが、ある程度の城としての機能と静かさを取り戻してきたマクスウェル城のテラス。

 そこには炎を連想させるような紅色の髪と瞳を持つ青年、エンシスと流れる水を連想させるような水色の長髪と瞳を持つ女性、ディオスがいた。

 エンシスは空を見上げながら、思わず呟く。


「まったくどこまで行ったんだか」


「わたしは心配ないと思うけど」


 エンシスとディオスが話していると、後ろからブーツでうち七したような足音が聞こえてくる。どうやら誰かがこのテラスに向かって歩いてきているようだ。

 二人が足音のした方に顔を向けると、向こうから、彼女たちと同じ制服を着た(違いは制服の腕や右胸、そして、グローブについているエンブレムの種類やスカート、男の場合はズボンの色。それぞれ治める心装騎士団の部隊属性の色をしている)、幼女ともいえるような小さな女の子が歩いてきた。

 そして向かい合って話している2人に気付くと、右手を上げながら嬉しそうに口を開く。


「お! テラスにいるのは誰かと思えば失恋君と片思いちゃんじゃん! あんたらも戻ってたんだ?」


 出会い頭からそんな失礼なことを言う幼女である。そんな彼女にエンシスは呆れ、ディオスは顔を赤らめる。

 彼女は2人がそれぞれ抱いている思いを知っているのだ。


「なんだテラか。お前も戻っていたんだな。これであいつさえいれば心装騎士団四大団長がそろうんだがな…………。あと失恋というな。俺はまだ告白してもいない」


「な、何言ってるのテラちゃん! わ、わたしは………!」


 そんな彼女に、エンシスは心外そうな顔をして、自分は失恋していないと言い張り、ディオスは顔を赤らめると慌てだした。その反応を見て笑うと、幼女、テラ・ラピスはこういった。


「相変わらずエンシスは愛想がないね。ディオスはこんなにもからかい甲斐があるってのに。……それとディオス?」


 先ほど2人に挨拶した時とは打って変わって底冷えするような声で自分を呼ぶテラにディオスはビクッと肩を震わせた。テラはわなわなと肩を震わせたかと思うとこう叫んだ。


「あたいはもう23なんだ! 少なくともあんたよりは年上なんだからさ………」


 そこで区切ると、テラは息を吸い込んだ。

 それを見たエンシスはこれから起こるであろうことを予期して、呆れながら自分の耳を塞いだ。

 ディオスは彼女が怒った理由とエンシスが耳を塞ぐ訳が分からず慌てているだけ。エンシスが耳を塞ぎ終えると同時にテラの大声が城全体に響いた。


「子ども扱いすんなああああああああああ――――――――――――!!!!!!」


 彼女の心からの叫び声が城だけでなく、空にまで木霊した。

 叫んだテラが息を整えている間、エンシスは尤も彼女の傍にいて、耳も塞が無かったために目を回して倒れているディオスを背負うと、昔、よく傷ついたアークスを背負っていたことを思い出しながら、医務室へと向かった。


「これが怪我の功名か。結構いい雰囲気なんだけどなぁ。エンシスもディオスを一途だな。あたしとしては2人がくっ付いてほしいところだけど」


 背後で息を整え終わったテラがそんなことを言っていたことに、気絶していたディオスはもちろん、急いでいたエンシスも気づかなかった。



 …………なお余談ではあるが、彼女のこの大声は城下町にも余裕で届いており、今まで、近寄りがたい存在だったテラのファンクラブの会員が増えたりとか、彼女と同じ悩みを持った人の支持を得たことに彼女が気付くのは、それからしばらく経ってからだった。






感想、評価を頂けると嬉しいです。あ、そういえば、今まで出てきた、キャラ設定に載っていないキャラの説明は載せるべきでしょうか?

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