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盗賊の襲撃によって、ドアをなくした馬車は、小高い丘を登ると豪奢な門扉の前で動きを停めてしまいました。
門の他は四方をコンクリートブロックで囲まれたとても広い敷地です。
「さぁ、リリーさん。お手をどうぞ」
ひらりと身をかわして馬車から降りたジェイン様は、わたくしに手を差し伸べてくれております。
そのお姿は、さながら王子様のようです。
わたくしの心も、きゅんとときめいてしまいましたわ。
「で、では」
わたくしは失礼して、ジェイン様の手に自分の手を乗せました。
「ようこそ、ロイヤルミルクティ城へ」
その一言が、わたくしの胸をわくわくさせてくれます。
門番さんは馬車が壊れているのを発見して、頭を抱えてしまわれました。
「すみませんが、盗賊に襲われて馬車を壊されてしまいました」
悪びれなく言い放ったジェイン様の美しさに、門番さんはそのような理由でしたらしかたがありません、と応えてくださいました。
「それで、お怪我はありませんか?」
「はい。ですが、こちらのリリーさんの服が汚れてしまいました。急ぎ、侍女服を用意するよう手配してください」
ジェイン様が言いつけますと、門番さんははっ! と敬礼なさってわたくしたちを門の中へと導いてくださいました。
「それでは、わたしはここで失礼するよ」
神父様とはここでおわかれのようです。
「どうぞお気をつけてお帰りください」
わたくしが言いますと、神父様はご心配なく、と笑顔で手を振ってくださいました。
門をくぐると、色とりどりの薔薇のアーチが迎えてくれます。
「わぁ。なんとお美しいのでしょう」
「さすがはリリーさん、審美眼がおありのようですね」
ジェイン様はにこやかにわたくしの前を歩いて誘導してくれます。
手入れの行き届いた薔薇の道を歩いているだけで、とてもしあわせな気分に満たされてゆきます。
しばらくしますと、白亜のお城が姿をあらわしました。
「これが、ロイヤルミルクティ城なのですね」
おもわずため息が出てきてしまいましたわ。
そうして、お城の門番さんをも通り過ぎて、いよいよ城内に足を踏み入れます。
そこからすでに、わたくしがこれまで住んでいた場所とは別世界のようですっ。
「あなたがリリーですね? わたくしは王妃様付きの侍女長、ケリーと申します。さぁ、こちらで侍女服に着替えてください」
「はいっ。よろしくお願いいたしますっ」
はずむような声で返事をすると、ケリーさんの案内で衣装室へと通されました。
「わぁ……」
衣装室ですから、様々なドレスなども見受けられます。お美しい色の羅列に、恥ずかしながら声をあげてしまいました。
「リリー、きょろきょろしないでください。はしたのうございますよ」
わぁお。さっそく叱られてしまいましたわ。
つづく




