12ー1
王妃様が眠りに落ちてすぐに、シャノン様が泣き始めました。
わたくしはシャノン様を抱き上げて、体を揺らします。
「どうなさったのですか? シャノン様」
この姿のままでは、きっとまだお話ができませんよね。
そんな風に思っておりましたら、シャノン様がより激しく泣き始めました。
「どうしましょう。おしめは汚れておりませんし、お腹が空いたのでしょうか?」
そして、突如として王妃様が苦しみ始めました。
「王妃様!? お医者様、王妃様がっ!!」
うつらうつらしていたお医者様と看護師さんを起こすと、シャノン様を抱えたまま、王妃様のベッドに近寄ります。
「ううっ!! お腹が、お腹が痛いっ!!」
「ソレはね、不義の子が宿ったしるしなのよ」
ファレスさん!? 地下牢にいたはずですのに、どうして!?
しかも不義の子だなんて、人聞きが悪い。
ファレスさんは黒装束の姿のまま、部屋にあらわれました。
ですが、先ほどと違って影だけが蜃気楼のように見えるのです。
「王妃様を苦しめるなんて、ゆるせませんよっ!!」
「あら? 王妃の出産にかかりきりになって、あたしを牢屋に入れたままにしておいたあなたたちが悪いのよ? おかげで前ほどの力はなくなったけど、不義の子を王妃に宿すことができた。とうして突然王女様が生まれたと思うの? その時あたしが王妃のお腹に魔王の魂の一部を送り込んだの。黒魔術の一端よ」
なんてひどいことをっ!?
王妃様のお腹に魔王の魂がいるだなんて。
「復讐は完成したから、もう思い残すこともないけど。まだまだ苦しめてあげることはできるのよ。おっほほほっ」
ファレスさんはもう、悪魔に魂を売ってしまったのですね。だとすれば、死以外の方法を頼んだわたくしの責任となります。
「どうすれば王妃様を救えますの?」
「そんなの、あたしは知らないわ。魔王を生むなり、共に殺すなり。あなたたちで勝手に決めることね」
「そんなっ!!」
「最後に。あなたの悔しそうな顔が見れて満足したわ、リリー。田舎者のくせに、上品ぶってんじゃないわよっ」
言うだけ言うと、ファレスさんは姿を消してしまいました。
はっ。ネックレス!! わたくしの首に下がったネックレスに力を込めれば、王妃様に中和能力を送り込めるかもしれませんっ。
「それはやらない方がいいわよ、リリー」
「ケリーさん?」
「言わなかったかしら? 黒魔術では魂の入れ替えは簡単にできるって」
つまり。ケリーさんの魂はファレスさんと入れ替わってしまったというのっ!?
そんなこと、ゆるせませんわっ。
つづく




