11ー8
いそいそと王妃様のお部屋に戻りますと、ケリーさんがうつらうつらしております。
そりゃそうですよ。わたくしのことで心配をかけてしまいましたし、ファレスさんの襲撃、王妃様の出産というフルコースです。
責任の一端はわたくしにありますし、ここはケリーさんを起こさないよう、今日あったことをもらさず日記に書き記しております。
最初にシャノン様が浮かせたのは、本棚でした。角度によっては危険でしたが、あんなに重い物を浮かせることができるだなんて、やはりシャノン様は素晴らしいお姫様です。
シャノン様用の特殊なベッドは、魔力制御装置を施してあるそうです。その装置を開発したのは、やはり国王陛下なのでした。
魔力が安定しましたら、魔女狩りの話は立ち消えてくれるでしょうか?
そんな悲しい活動を陛下にさせたくはありません。
わたくしは祈りを捧げるように、日記へと今日起きたことのすべてを書き連ねました。
将来、シャノン様が成人しましたら、この日記をプレゼントしたいのです。
それほどの感動をシャノン様がわたくしに分けてくだそったのです。
恋愛、結婚、出産。
わたくしにはまだまだ遠い先の話に思いますが、結局ジェイン様は本気でわたくしのことを好きなのだということで納得してもよいのでしょうか?
いいえっ。今はシャノン様の成長の方が楽しみでなりませんわっ。
わたくしはシャノン様にすべてをかけてお助けさせてもらいます。
それがわたくしにできる、シャノン様への恩返しなのです。
「リリー」
王妃様に小声で呼ばれて、わたくしは顔を上げます。
「どうなされましたか? 王妃様」
「その髪、どうしたの?」
「……う〜ん。悪いものをなぎ払いたくて切ってしまいました」
「そう。でも、とてもよく似合っているわ。だって、リリーはリリーですもの」
それは、王妃様からかけられた真の優しいお言葉なのです。
「ありがとうございます。どうかまだお休みになってください。わたくしが起きておりますから」
「ありがとう。それじゃあ、またね」
それだけ告げられますと、王妃様は深い眠りへと落ちてゆきました。
髪を切った理由は、ジェイン様と縁を切りたかったのと、王妃様たちにもてあそばれたような気がして悲しかったからですが。
そうですね。せっかくシャノン様がお生まれになったのですから、今日からまた髪を伸ばしてみましょう。
シャンプーがとても楽でいいのですが、かえって皆様に気を使わせてしまいましたね。
反省です。
つづく




