11ー5
ファレスさんの肉体を手に入れた魔王は、ところ構わず火炎魔法を繰り出します。
パピーや国王陛下、それにジェイン様が必死になって防ぎますが、間に合わないくらいです。
そこで、王妃様がうっと低くうめきました。
「どうなさいました? 王妃様」
ケリーさんが聞きますと、王妃様はお腹を抱えております。
「そろそろ出たいみたいね、この子」
そんな。まだ早いんじゃないですか?
ですが、状況はかんばしくありません。ファレスさんに取り憑いた魔王はがはがはと笑いながら攻撃の手を休めてくれません。
「国王陛下、あれの使用を許可してくださいっ」
ジェイン様が叫びますと、陛下はすぐに許可する、とお答えになりました。
「リリーさん、ごめんなさい」
むた口づけです!! しかも今度はもっとディープな……。
なんと破廉恥なっ。
バシッとジェイン様の頬を殴りました。ええ、これくらいやり返しますよ。
「最終装置解錠」
プシュ、と音がして、ジェイン様の耳に付いていたいくつものピアスが外れました。
まさか、そんなものまで魔力制御装置だったとは。
完全に自由になったジェイン様は、魔王より素早く動き、なんのためらいもなくファレスさんを殴ります。
脳がバグりますが、ファレスさんに攻撃しているのではなく、ファレスさんの体を奪った魔王に攻撃をしているのです。
「おのれぇ。この女がどうなってもいいのか!?」
苦し紛れに魔王が言うと、ジェイン様は。
「魔王に体を渡した段階でファレスさんに戻る可能性は消えましたから。ご心配なく」
ですが、元はと言えばジェイン様が自由恋愛を謳歌した結果ではないですかっ!!
「ジェイン様、そんなのひどいです!! なんとかファレスさんの姿に戻せませんか?」
「たとえば、元に戻せたとしても、性格までは直りませんよ?」
「それでも!! お願いします、ジェイン様!!」
「頼まれちゃったぜ」
ジェイン様は悪い笑顔を浮かべると、またしてもわたくしに口づけしようとしました。
今度はそれを振りほどき、自分からジェイン様の額に口づけます。
「弱ったな。どうしてリリーさんはこれが最善策ということを知っているのでしょうか?」
してやられたという顔をしたジェイン様は、目で追いきれないほどの速さでファレスさんを殴り倒します。
それ以上の攻撃は命に関わるのではないでしょうか。
そんな風に心配しておりますと、ファレスさんの口から青色の魂が出てきました。
「チャンス到来」
魔王だけになったその魂を、ジェイン様はぎゅっと握りつぶしてしまいます。
ついに捕われた魔王の魂は、ジェイン様によって煙になることもできずに消滅してしまったのでした。
つづく




