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11ー1

 荷物をあてがわれたお部屋に置いて、侍女服に着替えてから王妃様のお部屋にパピーと向かいます。


「リリーさん」


 廊下でジェイン様に呼び止められてしまいました。


「なんでしょう?」

「ケリーさんからも王妃様からもデリカシーがないことを指摘されました。そうならなければ気づかなかったくらいにはデリカシーに欠けていました。申し訳ございません!!」

「もう、いいですから」


 こんなところをまた誰かに見られたりしたら、また変な噂になってしまうでしょう。


「それでも僕は、あなたに惹かれているのですよ、リリーさん。そのことは忘れないでいてくれたらうれしいです」


 そんな、雨の日に捨てられた子犬のような目をしてもダメですよ。


 ジェイン様は全人類の女性に対して失礼です。誰でも口説くとかありえませんからっ。


「申し訳ありませんが、悪いことは忘れる主義なのです」


 すっとぼけた顔をして見せましたわっ。おっほっほっほっ。


 見ていなさい。今にジェイン様なんかよりもずっと性格のいい殿方を探し出してみせますからねっ。


 ふん、とそっぽを向いて、奥の部屋まで歩いて行きます。


 衛兵さんにあいさつをして、ドアをノックしました。


「リリーです。ただいま戻りました」

「どうぞ、お入りなさい」

「はいっ」


 王妃様は、つらそうに額に汗をかいておりました。ケリーさんがおの汗を拭いながら、王妃様のご様子をみておられます。


「しばらくの不在、誠に申し訳ございませんでした」


 わたくしが頭を下げますと、王妃様はいいのよ、とお顔の前で手を振ります。


「わたくしの方こそ、デリカシーのないことばかりしてごめんなさい。ここに戻って来てくれたのよね? 永遠の別れを告げるつもりではないのでしょう?」

「もちろんです。でも当分、恋をすることはありませんから大丈夫です」


 不思議なことにね、と王妃様はつづけます。


「シャノンがわたくしにリリーを助けてあげてって夢の中で頼んだのよ。まだ生まれてもいないのに。わたくしってば、退屈しのぎにあなたをからかったりして深く後悔しているの。ごめんなさい」

「あやまらないでください。ただ、今後はドレスを着ることも舞踏会で踊ることもしたくありませんので、その旨お伝えします」

 

 そうだったのね、とわたくしとパピーを交互に見ながら王妃様はうっすらと微笑みます。


「女の子はみんなドレスや舞踏会にあこがれているのではないかと勝手に思い込んでいたわ。そこも配慮が足りなかったわね」


 たしかに、何事もなければよろこんで舞踏会に出たかもしれません。ですが場合が場合でしたからね。


 それにもう、ジェイン様の流れ弾に当たるつもりもありませんから。


     つづく

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