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10ー7

 ケリーさんが馬車で去って行った後、わたくしは……。


 やっぱりわたくしはわたくしのままです。


 ちょっぴりやさぐれもしましたけれど、わたくしはわたくしを必要としてくださる王妃様とシャノン様のためにお城に戻りたい。


 今、心から強くそう願います。


 わたくしがあらためて荷物をまとめておりますと、お父様とお母様が泥だらけになって戻ってきました。


「お父様、お母様。わたくしは、お城に戻ります」

「そう言うと思ったよ、リリー」


 お母様に抱きしめられて、土の匂いをかいで、とても愛しくてたまらなくなりました。


 足元ではパピーがキャンと鳴きます。


「この犬はどうしたんだい? リリー」


 お父様に聞かれて、わたくしはパピーを抱き上げます。


「わたくしの大切な相棒です」


 そうか、よかったなと言ってお父様は笑いました。


「リサによろしくお伝えください。また帰ってきますけれど、もう泣き言は言いません。たぶん、ですけど」


 泣いてもいいんだよ、というあたたかいお言葉はお母様から。

 

 つらかったら帰っておいで、とはお父様から。


 わたくしはこの家族の一員になれてとてもしあわせです。


 そして、そんなわたくしを見透かしていたかのように、見慣れた方向から馬車がやってきました。


 御者はジェイン様です。


「遅れて、飛び出て、あっけらかぁ〜ん。ジェインです。リリーさん、お迎えにあがりました」


 わたくしはふっと笑いますと、お待ちしておりましたと一流のレディのように背を伸ばします。


「それでは。また」


 わたくしは馬車に乗り込むと、カバンの中からなにも書いていないノートを取り出しました。


 今日から、このノートがわたくしの日記帳となるのです。


 そして、大切なシャノン様の成長日記にするのです。


 ジェイン様のことは考えません。このお方はなにを考えているのかまるてわかりませんから。


 ただ、お互いお仕事仲間という認識くらいで丁度よいのかもしれませんね。


 馬車に乗る前に、お母様から渡された一口クッキーを食べました。


 一口食べるごとに勇気になる。


 こんなにすごいお菓子、お母様でなければ作れません。


 私もいつの日か、シャノン様と一緒にクッキーを焼いたりするのでしょうか?


 それとも?


 わたくしが焼いたクッキーならば、食べてもらえるでしょうか?


 今日はよく晴れております。


 晴天はわたくしを元気にしてくださいます。


 そして馬車は、ロイヤルミルクティ城の前で止まりました。


     つづく

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