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10ー6

「シャノン様って、本当にそんな夢を見たの?」

「どうせジェイン様のさしがねでしょう? わたしの夢の中までコントロールしないで欲しいわ」


 なにを言ってるのよ、あなたとケリーさんが声色を変えた。


「王女様の名前をシャノン様にすると知っているのは、わたしと王妃様の二人だけ。国王陛下だって知らないことを、ジェイン様が知ってるわけないじゃない」

「でも、夢を操作するくらいのことはできるんでしょ? あの人」

「できません。いくらジェイン様が万能の魔法使いだからと言って、そこまでのことはできませんよ。だから、あなたの夢に出てきたのは、本物のシャノン様よ。なにか言ってた?」

「城に戻れって」


 他にもなにか言ってたっけ?


「シャノン様はあなたを助けてくれって、わたしに言ってきたわ。あなたを必要としているのに、勘違いしているって」


 わたしは胸に下がったネックレスを見つめた。


「昨日も言ったけど。王妃様は投影魔法を使ったことを深く後悔しているの」

「王妃様に怒っているわけじゃありません。わたくしはジェイン様のデリカシーのなさに怒ったのですわっ」


 そうよ。ジェイン様こそなにもかも知っているうえでわたくしのことまで道化師のように扱ったのだわ。


「だから、もう一度だけチャンスをくれないかしら。王妃様と、ジェイン様に」

「チャンスなんて無駄ですわ」

「じゃああなたは、王妃様がずっとあの部屋から出られなくてもいいと思っているの? シャノン様がずっと部屋の中にしか居られないことを望んでいるの?」

「それは……。でも、なんとかなるのでありましょう? でしたらわたくしの存在自体が無駄みたいじゃないですか」


 そんなことない、と断定して、ケリーさんはわたくしの目をじっと見つめます。


「お城には、あなたの居る場所がある。もちろん、この家もあなたの居場所よ。でも、あなたを必要としている人がいることを忘れないで。ジェイン様のことは、ついでくらいに考えていればいいのよ」


 ついで。その程度のことなのかしら?


「だから、戻ってきて欲しいの。あなたを利用していることは自覚しているけれど、それでもあなたの居場所はお城にあるのよ。ドレスなんて着なくてもいいし、舞踏会に出なくてもいい。お友達をお城に招待したくなければそれでいい。わたしたちはあなたの優しさにつけこんでひどいことをした。それを認めるわ。ごめんなさい」


 ケリーさんに頭を下げられて、わたくしはあわてます。


「ケリーさん。頭をあげてください」

 

 ケリーさんは頭を上げると意外な言葉を言うのだった。


「正直、国王陛下のお顔を見て、頬を赤らめなかったのはあなただけなのよ、リリー。あなたは、すべてに分別がある。そのことをわたしが学ばせてもらったわ」


 だから、戻ってきてくれたらうれしいわ。それとその髪も素敵ね。


 そう言うと、ケリーさんはお辞儀をして去って行ったのでした。


 残されたわたくしは、どうしたものか悩みつつ、パピーの小さな体をなでているのでした。


     つづく

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