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鶏は快適なせいか、卵をたくさん産んでいた。これなら卵を売りにだしてもいいくらい。
「お姉ちゃん、ジェイン様と喧嘩でもした?」
「したよ」
「やっぱりそうか。そんな気がしてたもん。なんか、お嫁に行ったはいいけど、相手の本性見ちゃって実家に里帰りしてきたみたいに感じたから」
「そんな悲壮感漂わせてた? 単に舞踏会の疲れだよ」
わたしが言うと、リサは目を輝かして舞踏会!! と叫んだ。
「お姉ちゃん、舞踏会に出たの? ドレス着た? 写真ある?」
「ドレスは着せられたけど、色々あって写真なんて撮る暇なかったわ」
「へぇ〜。いいなぁ。お姉ちゃんがお城に戻らなかったら、あたしが代わりに働きに行こうかな?」
「やめた方がいいよ。自分がいかに世間知らずかわかるだけだから」
田舎者だっていう負い目もあったしね。
「そんなもんかねぇ」
リサは上手にエプロンの上に卵を積むと、玄関へ向かう。
「はぁ〜。帰ってこれてうれしいよ、わたしは」
「たった一ヶ月じゃん。なに? 恋バナとかないの?」
「その話すると自分がどんどん嫌いになるからやめて」
今、絶賛自己嫌悪の真っ只中にいるから。
城の中での話はしない方がいいかな。秘密なこともいくつかあったし。今のわたしだったらうっかりあんなことやこんなことまで言っちゃいそうだし。
「スクランブルエッグがいいかな? それとも目玉焼きにしようかな?」
わたしが玄関のドアを開けてあげると、リサはありがとうと言った。
……?
リサってこんなに素直な子だったっけ?
もう少しおませさんだったような気がするんだけど。変だな。
「状況は刻々と変わるもんだよ、お姉ちゃん。あたしね、ジェイン様のすすめで魔法学校に転入したの」
またここでもジェイン様か。その名前が呪いのように感じるんですけども。
「リサってそんなに魔力なかったよね?」
「うん。でも、将来看護師さんになるために、魔法の勉強をしておいた方がいいよってアドバイスしてもらったの」
「つまりあの道化者はわたしのことだけじゃなく、家族のみんなにも恩を着せていたってわけか。最っ低!!」
なんだよいちいちジェイン、ジェインって。ただのイカサマだよあんな奴。見た目がいいからみんな騙されてるだけなんだよ。なのになんだよジェインの奴っ!!
「あ〜、腹立つ。せめて回し蹴りぐらいかましてくればよかった」
どうせわたしの蹴りなんて、痛いどころかかゆくすらないだろうけど。
「なるほど。ジェイン様、よっぽどお姉ちゃんに嫌われちゃったわけだね」
「そう。嫌いだよ、あんな奴」
ぶっきらぼうに言い放つと、卵を一個ずつお母さんに手渡した。
つづく




