10ー3
鶏より早く目が覚めて。だけど今日は布団の中でまどろんでいる。
「シャノン様、かぁ」
とってもかわいらしい子供だったな。
あの姿が本当ならば、わたしはついうっかりお城に戻ってしまっていたかもしれない。
でもあれは、ジェイン様がわたしになにかのまじないをかけて見せた夢だから。
だから、信じない。
わたしはまだ、闇の深い沼の底にいる。
光を求めて手を伸ばすことをあきらめて、沼の底でどんどん沈んでゆく。
それが今のわたし。
夕べ、思いつきで髪を切った姿を見て、家族のみんなは驚いていたけれど。
本当はずっと切りたくて仕方なかったんだ。
髪が長いと木登りするのも邪魔だし、スカートは農作業に向いてないし。
ましてやドレスなんて。
舞踏会なんかに出なければよかった。
魔力を無効化するお部屋があるのならば、最初からわたしなんて必要なかったじゃないか。
「お姉ちゃん、起きて!! 鶏の卵取りに行くよん」
リサはかわいい。そうだ。リサの方がシャノン様よりずっとかわいい。それに血を分けた妹だし。
「ごめん。今日は無理」
「わかった。お姉ちゃんは今日は卵抜きね」
「それは違うでしょっ!」
布団をがばりとはぐと、リサに笑われていた。
「やっぱり、お姉ちゃんはそうじゃなきゃね。行こう」
「うん。すぐ着替えるから先に行ってて」
「オーケー」
ドアを閉めてリサが出て行く。
あぁ言った手前、ベッドから降りて服を着替える。
髪は結わなくてよくなった。
なぜだろう? 手間が一つ減ったはずなのに、その都度さみしく思うなんて。
「さみしくなんかないっ!!」
声に出したら少しだけ楽になった。
いつもとは違う雑な感じでドアを開けると、廊下を通るとお母様……、じゃなかったお母さんと目が合った。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、リリー。そういう言動も悪くないね」
ふふっと微笑まれて、ちょっぴり照れた。
玄関を開けると鶏小屋に向かう。
昨日は暗くなってから家に帰り着いたから、よく見えなかったけれど、なんだか花壇が少しだけ立派になっているように感じた。
「それね。ジェイン様が直してくれたの。他にも鶏小屋はうんと豪華にしてくれちゃったし、お姉ちゃん見たらきっと驚くよ」
わたしはそんなこと頼んでない。ただ、電話を引いてくれるってことを聞いただけなのに。
わたし、一ヶ月でそこまでの働きをした?
リサと一緒に鶏小屋に行くと、確かに前より頑丈そうに変わっていた。
むしろロイヤルミルクティ城の鶏小屋の方が貧相に思えるほどだ。
「どう? お姉ちゃん。お姉ちゃんはここまでしてもらえるほどのすごい結果を残してきたんだよ」
「生意気言うなよ、リサ」
ついに悪態をつくようになってしまったか。ま、いっか。
つづく




