10ー2
お夕飯を食べて、洗い物を手伝って、お風呂からあがると、無性に眠くなってきた。
もう丁寧語を使うのはやめよう。
分不相応な言葉遣いなんかしていたから、侍女になれなんて誘われたんだ。
本当のわたしはもっと短気で怒りっぽい。
いつか観た映画スターのようにエレガントな言動をつづけていたら、しあわせになれるんじゃないかって夢を見ていた。
本当、バカな夢だった。
パピーにももう会えないんだな。さみしいけど、じきに慣れるよね。
なんてまどろみながら目をつむる。
明日、本屋さんに行こうかな?
▶ ▶ ▶
ここは、ロイヤルミルクティ国のお城の中?
わたしにあてがわれた部屋だけど、なんだか少し違って見える。
廊下をぱたぱたと駆け回る音がしたと思うと、乱暴にドアが明け放たれて、その子――クセのある金髪で翡翠色の瞳をした小さな女の子が部屋の中に入ってきた。
「リリー!!」
その子はやっぱり王女様なのだろうけれど、やたらにわたしになついていて、いきなりぎゅっと抱きつかれた。
「シャノン、リリーのことだぁ〜い好きっ!!」
シャノン様? あなたのお名前はシャノン様と言うのですか?
「そうだよ。だからどこにも行かないで、リリー。お母上も困ってるんだよ。お願い、帰ってきて」
……ああ、これはきっと、ジェイン様あたりがわたしに見せた夢に違いありません。
だって、お名前はまだわかっていないのですから。
「リリーはシャノンのこと、信じてくれないの? シャノンの側にいてくれないの? どうして?」
だってわたしは、単なる田舎娘だもの。
王女様付きの侍女長だなんて、なれるわけないじゃない。
「そんなの、やってみないとわからないじゃない?」
やらなくても結果はおなじでしょう? あなた様の魔法教師はジェイン様で、わたしなんか居ても居なくてもおなじなのでしょう?
「そんなことないよ。だってシャノン、リリーのこと大好きだもの。側にいてくれないとさみしいよ」
そうですか。でも、わたしの夢の中に勝手に入ってこないで。
わたしはもう、関係ないのだから。
これから毎日こんな夢を見せるというのならば、逆効果間違いなし。
わたしはもう、お城にはなにも心残りはないもの。
わたしが居てもゆるされるのは、この家の中だけ。
恋もしない。
そのうちお針子の仕事をもらって、ちくちく服をつくろうことになるはずだから。
だからごめんね。もうわたしの夢に入ってこないで。
つづく




