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10ー1

 ケンタに見送られて、自宅に帰り着きました。


「あ、お姉ちゃんだ〜!!」


 お夕飯の支度をしていたリサに、すぐ見つけられて抱きつかれます。


「ただいま帰りました」

「え? なに、なにかやらかしたの?」

「いいえ。単に、わたくしが不要になっただけです」


 わたくしの声を聞きつけて、台所からお母様があらわれます。


「おや、リリーじゃないかい。まぁ座って。なにか食べたいものある?」

「では、紅茶を一杯いただけますか?」

「了解」


 納屋からお父様が戻ってきました。


「リリー。どうしたんだ、一体」

「女には言いたくないことくらいあるんだよ。ほら、リリー。ロイヤルミルクティだよ」

「ありがとうございます、お母様」


 お城でブチ切れた時、いっそこの丁寧な言葉遣いを辞めてしまおうかと思いましたが、できませんでした。


 わたくしは腐ってもわたくしだからです。

 

 紅茶に口をつけると、温かさと優しさで涙がにじみます。


 お城でおいしいものをたくさん食べさせてもらいましたが、わたくしはやはりこの家の食べ物が好きです。


「晩ご飯はまだなのかい? 食べるよね?」

「はい、お母様。お手伝いしましょうか?」

「いいってことよ。部屋はそのままにして、掃除はしてあるから、ゆっくり休みな」

「はい」


 涙がこぼれそうになって、あわてて部屋に向かいます。


 ここで泣いたりしたら、お城で意地悪をされたと勘違いされてしまうかもしれないからです。


 お城ではとてもよくされました。


 ですが、わたくしの肌には合いませんでした。それだけだったのです。


 ベッドに倒れ伏すと、しばらく泣いていました。


 荷物なんて最初からたくさん持って行かなくてよかったです。カバン一個分の荷物はそれでも、ずっしり重いのです。


「がんばったんだけどな」


 侍女として、懸命に仕事を覚えたつもりだった。


 魔力を無効化できる部屋があるって知っていたら、わたくしがお城に行くことはなかったのにな。


「髪、切ろうかな?」


 シャンプーとか大変だし。いいや、切っちゃえ。


 腰まで伸びた茶色の髪を、肩の線にあわせて切った。肩が軽くなったような気がする。


「せいせいしたわ」


 お城から出戻ったわたくしのことを、町のみんなは好き勝手に噂するんだろうな。ま、いっか。


 とりあえず家に帰った。今はそれだけでしあわせと安心感を感じることができた。


     つづく

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