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9ー8

 あたりはすっかり暗くなり始めてまいりました。


 わたくしは歩く速度をあげて、自宅を目指します。


 ふと、この道の先にはケンタの家がないことに気づきました。


「ケンタ。あなたの家は逆方向ではないですか」

「いいんだよ。護衛も兼ねてさ。またさっきの黒魔術が襲ってこないとも限らないし」


 ケンタ……。あなた、知っていてあんな風に言ったの?


「とにかく。俺のせいでリリーに恥かかせちゃったようなもんだから、そのおわびとしてさ。家まで送らせてくれよ」


 こうして、変なタイミングで優しくしてくれるから、ケンタは女の子にモテるのですね。


 そういえば子供の頃からカノジョを切らしたことがないのでしたっけ?


 そう考えますと、やはりケンタってすごいのですね。


「家に帰るのって一ヶ月ぶりくらいだっけ?」

「はい。ちょうど一ヶ月です」

「リリーがお城に連れて行かれた後さ、町でいろんな噂がたったんだよ。侍女とか言ってたけど、本当は陛下の愛人なんしゃないか、とか、そういうやっかみのやつがさ」


 狭い町ですものね。お城に働きに行くと言っても、やっかみがあって当然なのかもしれません。


「で、俺片っ端からそんなこと言う野郎ども殴ってさ。リリーが丁寧な言葉で話したりしてるのからかうような野郎とかも殴ってさ。俺、そいつらがゆるせぬかったんだ」

「どうして?」


 ざわりと風が吹いて、わたくしの心は揺れました。


「リリーはそんな女じゃないってことぐらい、昔から知ってるもん。侮辱するような奴がどうしてもゆるせなかったんだ。で、今日はその件でカノジョと別れたんだ」


 最後のは余分でしたね。


「あたしとリリーのどっちが大事なの? ってすっごい剣幕でさぁ。どっちも大事って言ったら、ビンタされた」


 最終的に殴られたということで。


「でも、どうしてそこまでわたくしのことをかはってくださるのです?」

「ん〜。なんていうかリリーってさぁ、生きているのが大変そうに見えるわけ。本当のことしか言わないし、バカ丁寧な言動で周りをドン引きさせてるし。同じ年だけどなんだか妹みたいに思えてな」


 ケンタの妹になるのは大変そうですね。でも……。


「ありがとう。すっごくうれしいです」

「いいってことよ。困ったことがあったらいつでも言ってくれって」

「はい」


 なんだかケンタの意外な一面が見れました。いつもこうだといいですのに。あなたも相当不器用ですよ、ケンタ。


     つづく

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