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9ー7

 人生の転換期というのは人の数だけあるのでしょうけれど。


 わたくしの転換期はまさに今です。


 ジェイン様を振って、華美な装飾を施されたドレスを脱いだら、もう家に帰り着くことしか頭にありません。


「支度はできましたか? リリーさん」


 廊下に出ると、ジェイン様がケンタと並んで待っていました。


「はい。では、わたくしはケンタと一緒に帰ります。短い期間でしたが、ありがとうございました。どうか、王妃様に……」


 よろしくお伝えください、なんて言えないよね。ここから逃げ出すのですから。


「パピーのこと、よろしくお願いします」


 それでは、とジェイン様に背中を向けますと。


「わたしが馬車を操作しますので」

「いいえ。ここからそう遠くないですので、歩いてかえります。さあ、ケンタ。キョロキョロしてないで帰りますわよ」

「ああ、うん。ジェインさん、このスーツ返すにはどうすればいい?」


 そうでした。ケンタはジェイン様にスーツをお借りしていたのです。


「それは、リリーさんに持たせてください」

「わたくしはお断りします」

「でしたら、差し上げますよ。たいしたものではありませんが、ファレスが攻撃を仕掛ける前にうまいことあらわれてくれたので。お礼です」


 こんな田舎者にスーツなんかあげてどうするつもりなのでしょう?


 ですが、それももう関係ありません。


 わたくしたちは、いっしょにお城の門から外に出ました。


 その際、ジェイン様がまだなにか言いたげにたたずんでいらした姿が印象に残りました。


 不思議です。そのような表情もできるのですね。


「いやもう俺、おかしくなかった?」


 門を出たら、いきなりケンタの話術にはまります。


「口上も含めて、なんだかおかしかったですわ。色々と」

「そうだよな。俺、あの手品師の女の人気に入っちゃってさ。洗練された美しさっていうの? そういうのを感じたんだよな」

「人間なんて、年をとれば白髪になるし太ったり痩せたりしながら原型を保つことすら難しいものです。外見で人を判断するものではありませんよ」


 ファレスさんがいい例です。イケメンを好きになるから裏切られるのです。


 単なる逆恨みみたいなものですよ。


「そうかなぁ? それで、武道会は誰が優勝したんだ?」

「ケンタの優勝でかまいませんよ」


 そう、あの緊迫した場面でよくぞタイミングよくあらわれたものです。


 あの間合いがなければ、舞踏会はもっと殺伐としたものとなっておりましたもの。


 そう考えると、ケンタも役に立つものだなと思うのでありました。


     つづく

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