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「ジェイン様、王妃様たちはどこにいるかわかりますか?」
「わかるよ。でも、ファレスが一緒ならそこには行かない」
本当に。頑固なイカサマ道化師ですこと。
「ロイヤルミルクティ城についての噂は、子供の頃から聞いています。夜になると歩き出す豆本や、自動で演奏するピアノがあるとか」
子供の頃って、そういうお話にわくわくと胸を高鳴らせていましたっけ。
「それらは現実にあることですよ、リリーさん」
「このネックレスといい、やはりあの噂は本当なのですね。くらげ島の三国は、それぞれの特色を持っているっていう噂」
「ローズヒップティ王国は美とファッションを強みとしている。レモンティ王国では自然と動植物を愛するとくしょくがある。そして、ロイヤルミルクティ国は、精密機械などを得意とする手腕がある。特にジョゼフ国王陛下は本当に手先が器用で、豆本も自動演奏のピアノも陛下の作品だし、そのネックレスもおなしだよ」
それだからこそ、この噂も聞き及んでおります。
「このお城には、魔力を無効化する部屋があるという噂もあります。もしかしたら、王妃様たちはそこに居るのではないですか?」
なぜきみがそのことを知っているの? とばかりにジェイン様が眉間にシワを寄せた。
「その話、本当なの?」
ファレスさんは不安そうに顔をゆがめていらっしゃいます。
それが本当でしたら、ファレスさんの攻撃は物理攻撃以外は効果がないということになります。
と、同時に。そのお部屋に居れば、王妃様の体調も安定するということになりそうです。
「それは言えない約束なんだ。ごめんね」
ジェイン様の笑顔が作り物の人形のように見えた。
「なによ。それならあたし、出直さなくちゃいけないじゃないっ!!」
ファレスさんはそう怒鳴り散らすと霧散して消えてしまった。
「……ジェイン様。最初からわたくしの中和能力なんて必要なかったのではないですか?」
「そういうことになるね。だけど、王女様にはきみの優しさが必要なんだよ。面倒見がよくて優しくて、常に正しい態度を保ち続けることができるきみのことを。わたしでは、反面教師にしかなりませんからね」
反面教師か。
「では、わたくしはこれにてお暇させてもらいます」
「どういう意味かな?」
「ケリーさんに話してある通り、里帰りしたいのです」
「それは、いつまでかな?」
「わたくしの気持ちに決断がつくまでです」
しん、とあたりは静まり返っております。
ファレスさんが消え果てて、衛兵さんたちも大広間へと戻り始めているからです。
こうしていても始まりませんので、わたくしたちは一旦廊下に出ます。
すると、前方から衛兵さんにつれられたケンタの姿がありました。
「いた! リリー探したんだぞ」
「ちょうどよかったわ、ケンタ。一緒に家に帰りましょう。わたくしたちはあまりにも田舎者すぎて、このお城のすべてがまぶしすぎるもの」
それが、わたくしの本音です。
一度部屋に戻り、自分の服に着替えますと、ほっとしました。
「なんだ、わたし。家に帰りたかったんじゃない」
つづく




