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9ー5

 わたくしは、一度キャラ崩壊してしまいますと、なかなか元に戻れなくなってしまうという弱点があります。


「ファレスさんに言っておきますけど。ジェイン様なんてどこがいいのかさっぱりわかりませんわ。しかもこの人、空気が読めないし、自意識過剰で魔法と顔がいいというだけしか取り柄がないじゃありませんか」


 わたくしが言いますと、ファレスさんはうっと喉をつまらせます。


「つまり、ファレスさんがそこまでして復讐するまでもない人間だということです。そこに王妃様を巻き込むだなんて、言語道断ですわっ」


 毒舌全開です。


 わたくしの言葉に、お客様方からざわめきが聞こえてきました。


「これは演出の一つなのだろう?」

「だがここに王妃様はいないぞ。どういうことだ?」

「これも道化者のやらせなのではありませんの?」

「使用人の二人が道化者を取り合うだなんて、ロイヤルミルクティ国も落ちたものだな」

「それは違います。わたくしはジェイン様を愛してはおりませんし、今後もそれが変わることはありません。ですからファレスさんとジェイン様が勝手にお二人で話し合ってください」


 わたくしが言いますと、まばらな拍手が起こりました。


「なんだか知らないけど、あたしはイケメンが好きなのっ。顔がよければいいじゃない? それのどこが悪いっていうの?」


 ファレスさんは怒りに任せてお客様方を攻撃し始めます。


 そこに、特殊な訓練を受けた衛兵さんたちが魔法でバリアを張って、お客様に危害が加わらないよう、守ってくれております。


「なによっ。ロイヤルミルクティ城の中なんて、イケメンばっかりじゃない。年齢不詳の国王陛下はバリッバリの色男で、ジェインなんてもう目じゃないわ。そうよ、こんな場所に居ても仕方ないんだわっ」


 そう言うと、ファレスさんはふっと姿をくらませました。


「ジェイン様!!」

「わかってます。至急、王妃様をお守りしなければ。リリーさん、ワープします。手を」

「え?」


 戸惑うわたくしの手を強引に握りしめたジェイン様は、ワープします。


 人生で初めてのワープは、身体が全体に引っ張られているような不快感がありました。


「失礼します。王妃様、どこに?」


 すでに王妃様のお部屋は荒らされていたものの、肝心の王妃様と国王陛下の姿は見当たりません。


 そこでぽつねんと立っているファレスさんが、やられた、とばかりに笑みを浮かべます。


「そういうこと? 逃げ足の速い王族なのね?」

「違います」


 わたくしは、そうは思いません。


「王妃様たちは、しかるべき場所でファレスさんが来るのを待っているのではないでしょうか?」


 そう、このお城のすべてを、わたくしはまだ知ってはおりませんから。


     つづく

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