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会場の電気が消えて、オーケストラの演奏が止まり、あたりが不安でざわめき始めます。
そして、謎のピンスポットかあたると、どういう仕掛けなのか、あるいは魔法なのか黒い服に身を包んだファレスさんが床からせり上がってまいります。
いよいよ来られたのですね。
「各王国の皆様、ごきげんよう。わたくしはファレ――」
「遅れて、飛び出て、ジャンガジャ〜ン!! よお、リリー。俺だよ、ケンタだよ」
……わすれておりましたが、このタイミングで来なくてもよろしいものを。
「なに? この演出。すっげぇ〜な、リリー。本当にロイヤルミルクティ城で働いてるんだ? 俺なんて、実家の八百屋継ぐの継がないのでてんやわんや。わっはっはっ」
口上といい、空気の読めなさといい、やはりケンタとジェイン様はどこか似通っていますね。
一方、せっかくの演出に水を差されたファレスさんは、仕方ないとばかりに電気を戻してくれました。そして、なぜか一人浮足立ったケンタに向けて、厳しい言葉をかけるはずです。
「ちょっとぉ。あたしの立場わかってやってるの!?」
「ああ、思い出した。武道会で手品師が来るってリリーが言ってたよな?」
「舞踏会で黒魔術の間違いですわ、ケンタ」
これには緊張していたお客様方からも失笑がもれます。
しまいにはこれすらも演出の一つと取られてしまうくらいです。
「なぁ、リリー。お前そんなに色っぽかったっけ?」
「はぁ? なにを言うのです?」
よりによって色っぽいだなんて。恥ずかしいことこの上ないですわ。
「俺なんか、スーツに着られちゃってるもん。そんで今日、カノジョに振られたから一人で来た。なんならカノジョにしてやろうか? リリー」
「断固としてお断りしますっ!!」
ジェイン様のしつこさがあったからこその強がりでしたが、ケンタなんて相手にするくらいなら、一生独身でもこむいませんわっ。
「みんなしてあたしのこと無視してくれちゃってさぁ? 王妃様を襲いに行けばよかったのよね」
「残念ですが、そちらはジョゼフ国王陛下が着いていらっしゃいます」
「ああ、そう? 久しぶりね、ジェイン。そこの新人はどんな色を使ってジェインの気持ちを手に入れたの?!」
「……カツク」
ダメですわっ。このままではわたくし、キャラ崩壊してしまいそうです。
「ムカツク黒魔術だなぁ!」
あ〜あ。言ってしまいました。
「このわたくしのどこが色を使ったってぇ〜のよっ。バカにしないでくださるっ!?」
そして今、一番おバカなのはわたくしであることを証明してしまいました。
反省。
つづく




