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9ー3

 王広間へと向かう廊下を歩いているうちに、軽やかな音楽と喧騒が聞こえてきました。


 今日は王妃様の元でパピーを見てもらっております。


 ジョシュア様の夢が正しければ、王妃様になにかあったらパピーが助けることとなるでしょう。


 一方でわたくしは客寄せパンダのごとく、道化者とダンス披露しなければなりません。


 わざと失敗してやろうかしら?


 いいえ。最後に後悔を残さないよう、完璧に仕上げそして、去って行くのが美しいというものです。


 わたくしという個を忘れ去ってもらうためにも、失敗はゆるされません。


「リリー様ですね。どうぞ中へお入りください」


 衛兵さんに会釈すると、大広間へと足を踏み入れます。


 そこに広がっていたのはこれまで見たこともなかった大広間の本来の姿でした。


 大広間は水を得た魚のようにお客様方を踊らせ、笑わせ、話をさせ、また食べたり飲んだりさせていたのでした。


「リリーさん。お相手願いますか?」


 さっそくジェイン様に見つかってしまいましたので、その手を取ることになってしまいました。


 とたんに失笑が広がります。


「本日はどのような道化を演じていらしたのですか?」

 

 わたくしが問いますと、ジェイン様はたいしたことはしておりませんよ、と答えてくれます。


「わたしはただの道化者にすぎませんから、リリーさんに嫌われても当然なのです」


 そうして二人がかまえた瞬間、すぐにダンスが始まりました。


 泳ぐようにしなやかに、不必要な露出を避けて、優雅に麗しく。


 最初こそ嘲笑を誘っていたわたくしたちでしたが、踊りがつづくにつれ、ため息へと変わってゆきます。


「リリーさん、今日はいつにも増してお美しいですよ」

「取ってつけたようなお言葉をありがとうございます、ジェイン様」


 そうじゃないんだけどなぁ、なんてささやくジェイン様を、多くの女性たちが熱い眼差しをぶつけてくる。


 そのあおりを受けて、わたくしのことをどこの馬の骨よ呼ばわりしてくださる方もいらっしゃいます。


 まぎらわしいですわよね。申し訳ありません。


 本当はもっとクールに踊りたかったのですが、ジェイン様の踊りにあわせてしまうと、なんだかとても情熱的になってまいります。


 そして。


 次の瞬間、会場の電気が消えてしまいました。


     つづく



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