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「あれでよかったの? リリー」
わたくしがパピーを預けてジェイン様を振り切って歩き出しますと、とたんにケリーさんが話しかけてきました。
「わたくしは、気のない相手をわずらわせるような悪女ではありませんから」
「でも昨日は、ねぇ?」
「昨日はもう終わりましたし、今日は今日だけしかありませんから」
こうなったら、ケリーさんを相手にしても容赦はしませんわよっ。
わたくしにだって、意地もプライドもあるのですから。
「まさかとは思うけど、王妃様の投影魔法のせいで怒っているの? お城ではねぇ、ちょっとしたハプニングや恋バナとか、そういったものがみんな好きなのよ。だから、悪気はなかったの。ごめんなさいね」
「ケリーさんにあやまられることはありませんし、王妃様のことはお仕事と割り切っておりますから」
「冷たい女になったわねぇ」
やれやれ、とケリーさんは肩をすくめつつ、王妃様の部屋のドアをノックします。
門番さんはうやうやしく敬礼してくれます。
「お入りなさい」
王妃様もすでに目を覚ましていらっしゃるようです。
「おはようございます、王妃様」
「おはよう、ケリー。それにリリー。昨日ははしゃいじゃってごめんなさいね」
わたくし、手芸と恋バナが大好きなの、と王妃様がつづけます。
「悪気はなかったけれど、あなたのことを傷つけてしまったわよね、リリー。ごめんなさい」
「二度もあやまらないでください。わたくしの気持ちはもうかたまっておりますので、ご心配なさらないでください」
わたくしの言動に、王妃様はケリーさんを見やって肩をすくめます。
「それより王妃様、ご気分はいかがですか?」
「悪くはないかしら。でもわたくし、ケンタさんまで呼びつけて悪いことをしちゃったわね」
「明日は田舎者丸出しのケンタが場内で恥をさらすことになると思いますが、かまわないでしょうか?」
さすがに王妃様につらくあたりすぎてしまいました。
「わたくしも、申し訳ありませんでした。王妃様が悪いわけでもありませんのに冷たい態度を取ってしまったこと、心より反省しております」
ああ、せめてパピーがここに居てくれたらな、と思った瞬間、ドアがノックされて、返事を待たずにドアが開きます。
「お母上、おはようございます」
さっそくジョシュア様がパピーを連れてやって来ました。
ああ、パピー。わたくしの癒し。
ですかパピーはすでにジョシュア様にもなついております。わたくし、ほんのわずかですがとてもさみしく感じてしまいましたわ。くすん。
つづく




