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8ー3

 朝です。ぱっちり目を覚まして時計を見ますと、いつもより三十秒寝過ごしてしまいました。


 噂によりますと、鶏を全滅させたのはイタチ男の仕業だったとか。


 イタチ男にトカゲ男。どちらも魔獣でありながら、ファレスさんの黒魔術により人型を保ち、襲撃のチャンスをうかがっていたとしか思えません。


 なぜわたくしが朝っぱらから小難しい推理をしているか、ですか? それは、自分に降りかかった災いを考えないようにするためです。


 よって、ジェイン様やケンタのことなど考える暇もなく、今日も侍女服に身を包んで身支度を整えます。


 そうしてまだ見ぬ神様へとお祈りを捧げるのです。


 どうか王妃様がわたくしの恋愛話に執着しておりませんようにっ!!


 他人の恋バナが楽しいのはわかりますが、それ以上に本人にとってはつらいことなことを知って欲しいのです。


 身支度を整えて廊下に出ますと、ケリーさんと出会います。


「おはようございます、ケリーさん」

「おはよう、リリー。気分はどう?」

「よく眠れましたわ」


 眠ったら、目の下のクマが綺麗さっぱり消えておりましたし、目が腫れてもいませんでした。わたくしの回復力はすごいのです。


「それじゃま、王妃様のお部屋へとむかおうかね」


 とことこと廊下を歩いておりましたら、後方から薔薇の花が一輪。


 これはやはり……。


「俺様、イカサマ、ジェイン様。呼ばれてないのにジャジャジャ〜ン。おはようございます、リリーさん」

「その口上、クソダサいので辞めた方がいいですよ。おはようございます」


 しれっと返してやりましたら。

 

「ああ、そのバラ色の頬には本物の薔薇もかなわない。なぜあなたは侍女なのてしょう?」

「ジェイン様に連れてこられたからでございます」

「つれないところがまた愛おしい。リリーさん、本日はダンスの練習がありますからね、どうかご期待ください」

「なにに期待すればよろしいのでしょうか?」

「わたしのすべてに期待して損はありませんよ」


 糠に釘、という東洋のことわざを思い出しました。ジェイン様って、どこかケンタに似ているのかもしれませんね。

 

 そう思うと、あやうくときめいていたことが危険な行為だったことに早く気づけて幸運でした。

 

 昨夜の料理長さんの言った通り、さっさと振ってしまった方がよいのです。


「申し訳ありませんがジェイン様。わたくしこれからお仕事ですので。また後ほどダンスの練習に誘ってください」


 すました顔なんて思っていたよりも簡単でしたわ。


 わたくしの毅然とした態度を見るなり、ケリーさんは呆然としておりましたけれど。


 ケリーさんまでわたくしを冷やかしたからですよっ。


     つづく

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