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みんなで朝食を食べ終わり、片付けをしておりますと、牧師さんが馬車を走らせてやってまいりました。
「おはよう、リリー。覚悟はできているかね?」
「はい。もちろんですわ、神父様」
そうして、最小限にまとめた荷物を手に、わたくしは家族としばしのわかれに専念します。
「お父様、お母様、そしてかわいいリサちゃん。どうかお元気でいらしてくださいね。わたくしは、みんなのことをわすれませんわっ」
「お姉ちゃん、大好きっ」
あらまぁ。リサちゃん、急にどうしたのかしら? わたくしにここまであまえてくれて。
わたくしも涙が出てまいりました。
「リサ。両親の言うことをしっかりと聞くのですよ。日曜日は教会に行って、心を清めるのですわ」
「はいっ。あたし、お姉ちゃんとまた会う日まで、立派なレディになります」
「まぉまぁ、本当にかわいらしい」
わたくしはリサの頭をよしよしとなでてあげます。このようなことになる前から、リサはしっかりいろいろなことを吸収していたのですね。それだけでもう、立派ですわ。
「リリーさん、そろそろ出発しませんと、到着が遅れてしまいます」
「はい」
名残惜しゅうございますが、リサと離れると、馬車に乗ります。
「みんな、行ってまいります!!」
家族に手を振ると、わたくしは涙をハンカチで拭き取ります。
さようなら、みんな。しばしのおわかれでございます。
そして、わたくしたちを乗せた馬車は出発しました。
馬車が走り始めると、向かい側に座ったジェイン様が、事情を話してくれることになりました。
「実は今、王妃様のお腹の中にはあたらしい命がやどされております」
「あらまぁ。素敵」
「そう、そしてその子はとても魔力の強い魔女なのです」
「あら? もう性別がおわかりですの?」
そうなのです、とジェイン様はイカサマらしからぬ流麗なお顔でうなずきます。
「すでに何度も国王陛下と王妃様の夢の中に出てきているのです」
「あら? それでしたらもしや、昨夜見た夢の中の女の子が王女様なのでしょうか?」
それはとても素敵で、あたたかい夢でした。
「どのような女の子でしたか?」
「髪は金髪で、ゆるくウェーブのかかった、翡翠色の瞳のとてもかわいらしいお子様でした。その子はわたくしのことを大好きと言ってくださり、抱きついてくれましたの」
わたくしの答えに、ジェイン様は一つうなずくと、間違いありません、とささやきました。
「わたしも夢の中でその少女に会ったことがあります。間違いなく、その子が王女様でしょう。そして……」
そう、そこからはかなり悲しいお話になります。
「ひょっとすると、王女様がこのくらげ島をおびやかす存在となるかもしれません」
つづく




