7ー7
勤務を終えて部屋に戻ると、すぐに電話が鳴りました。どうやら実家からかかってきたようです。
「はい? リリーです」
『おい、リリー。お前のおかげで俺、ロイヤルミルクティ城の武道会に誘われたんだけど』
「残念。舞踏会の間違いですわ」
本当にケンタを呼ぶことにしたのですね。空恐ろしいです。
『それで、俺どうすんの? ジェインってやたら綺麗な面した男がスーツ一式置いて行ったし、なんなら当日馬車で迎えに来るとか言われたんだけと』
なにかの間違いであってください。
『お前、この俺が初恋の相手だったんだ? 言ってくれりゃあ彼女にしてやれたのに。ああ、今はダメなんだ。カノジョいるから』
そしてこういう男にかぎってよくできた恋人がいたりするわけです。
世の中の矛盾ですわっ。
『そんで? 俺カノジョいるのにお前に告られなきゃなんないわけ?』
「無理に来なくてけっこうです。あなたのことを好きになったことはこれまで一度もありませんし、これからもないことでしょう」
『でもジェインって奴言ってたぜ。恋のライバルとして真剣に戦いましょうって』
そうだ。黒魔術ぎおったではないですかっ!!
「当日、会場が黒魔術を操る魔女に襲撃される恐れがあります。なので、絶対に来ない方がいいです」
『黒魔術? 見たい、見たい!! なにその襲撃って? ウケる〜』
……人生でどう踏み間違えても、ケンタを好きにならなくてよかったと心底思っております。
『結局スーツも借りちまったしよぉ。俺、馬車に乗って武道会に行ってやるぜ。そんで黒魔術の魔女とお近づきになってキャッキャしたいなぁ』
……なぜこいつの名前に反応してしまったのか。もう取り返しがつきません。
『その武道会にカノジョ連れて行きたいんだけど、ドレスも貸してくんない?』
「無理ですし、来るなと言っていますが、理解してくれませんか?」
『そうは言ってもなぁ。わかった。当日はカノジョが一番おしゃれなワンピース着せて行くから一緒に行ってもいいよな?』
むしろ決定事項なのですね? ならば仕方がありません。
「当日死んでも、お葬式には行きませんからね」
それだけ言うと、電話を切ってしまいました。
うかつでした。
ケンタがわざわざ取り付けてもらったばかりのうちの電話を使うことなんて想像すらしておりませんでした。
しかもかなり乗り気ですし、カノジョまで連れて来るつもりですし。
あと一つ、大切なことをわすれていました。
ケンタは魔法が使えないただ図々しい人間だったのです。
つづく




