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「あの、ジョシュア様。王妃様のお身体にさわるようなことがありませんようにと……」
「いいのよ、リリー。わたくしだって、こんなにかわいいパピーと仲良しになれてしあわせだし、身体にさわることなんてなにもないもの」
そのとおりでございます、とケリーさんが頷きましたから、大丈夫なのでしょう。そう信じます。
「僕ね、時々夢を見るんだ」
ジョシュア様は癖のある美しい金髪をかきあげてわたくしに話しかけてくださいます。
「あの子、たぶん僕の妹になる子だけど。夢の中でその子は犬を母上の側に置いておいた方がいいと言ったんだ。だから今日、たまたま城に紛れ込んできたパピーを見て思ったんだ。この犬はただの犬じゃなくて、母上のことをお守りしてくれるんじゃないかなって」
ああ、なんとお美しい家族愛なのでしょう。
わたくしはおもわず両手を組み合わせてジョシュア様を拝んでしまいます。
「そういう理由でしたのですね」
なんだか安心しました。
と、ここでジェイン様が部屋に入ってこられます。
「あら? デートの余韻はもうすんだのかしら?」
王妃様に冷やかされても、ジェイン様は少しも顔色を変えることもなく、いつも通りの姿勢を貫いておられます。
「王妃様、皆がパピーをかまいたいそうなのですが、かむいませんか?」
「あら? わたくしもまだ全然なでていないのよ?」
そうなのです。パピーをなでたり、お手お代りお座りまでをも教え込んだのはジョシュア様なのです。
そんなわけで、王妃様になでてもらえたパピーはどこか誇らしげに見えます。
「それでは、ほんの少しの間パピーをお借りします」
ジョシュア様がパピーを連れ去ってしまうと、いよいよ皆様の視線がわたくしへと移ってくるのです。
「それで? 初デートはどこまで進んだの?」
「わたくしたちはただ、ペットショップに行って、カフェでパンケーキを食べて、パピーのお散歩をしただけです。変わった場所には行っておりませんよ?」
それでも王妃様は納得できていらっしゃらない様子で、そんなわけないわと食い下がられてしまいます。
「あのジェインが、そんな無難なデートコースだなんて。やっぱりあなたはジェインの大本命なのよ、リリー」
「いや、そのですね? わたくしもよくわからないのでお返事のしようがありませんでして」
「やっぱり告白はされたのねっ」
墓穴を掘ってしまいました。
「こういうのはね、適当に焦らすのがいいわよ」
「あら、王妃様。それでは国王陛下とお付き合いなさった時も焦らしたりしたのですか?」
ケリーさん、話の規模が大きくなっております。
「もちろん、焦らしたし、浮気はさせないし、妾を作るのは自由よって言ってあるけど、妾を作ったら離婚するつもりよ?」
王妃様〜。そんなこと言わないでください。あの国王陛下が浮気や妾なんて、絶対にありえませんからっ。
つづく




