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ジェイン様からの突然の告白に驚いておりますと、パピーがキャンと鳴き声をあげました。
「どうしたの? パピー?」
無謀にもワンちゃんに話しかけてしまいましたが、なんとなくトイレの予感がします。
それは、ジェイン様も感じられていらしたようでして。
「それなら少し、パピーのお散歩に行きましょうか」
などと優しく言ってくださいました。
……嫌ですわ。わたくし、意識しちゃっております。
ジェイン様は誰にでも口説くと知っていますのに。なのに。
「ゆっくり地面に降ろしてください。リードはしっかり持って」
そうしてわたくしたちはお散歩デートをし始めたのです。
デートですよね。パピーはおトイレとお散歩のためですが、告白されたのですから、これはもうデートでいいのですよね?
こんなこと、実家のお母様が知ったらどう思うでしょう?
さっそく電話の内容が決まりましたわ。
でも、わたくしの気持ちは?
意識しているだけで、好きとは違うのではないのでしょうか?
「リリーさんっ!?」
「ひやっ!?」
ぼんやりしていて気づけませんでした。
パピーはわたくしの足におしっこをきけてくれました。とほほ。
すぐにジェイン様が浄化魔法をかけてくれましたが、これでは週末に履くためのパンプスがおしっこのにおいになってしまいそうです。
「ジェイン様」
「においなら大丈夫です。服にはかかっていないようですけど、気持ち悪くありませんか?」
「ジェイン様、好きってなんですか?」
「……はいっ?」
ジェイン様はぽかんとしてわたくしを見つめた後、あははとさわやかな笑いをもらします。
「好きっていうのはつまり、パピーにおしっこをひっかけられても愛おしいと感じることではないでしょうか?」
わたくしは足元のパピーを見下ろします。
パピーは満面の笑顔です。彼に悪気はありませんし、怒る気持ちもありません。むしろ愛おしいのです。
ならば、ジェイン様に同じことをされたらどうでしょう?
「……ジェイン様。わたくし、ジェイン様におしっこをひっかけられるのは困ります。愛おしくないです」
そう答えますと、またまた笑われてしまいます。
「わたしはそんなリリーさんが好きですよ。あせらなくていい。ゆっくり答えを出してください。あと――」
ジェイン様は言いにくそうに声をひそめます。
「わたしはリリーさんにおしっこをひっかけたりしませんのでご安心ください」
ああ、なるほど。わたくしの考えがどこか違っていたようなのですわね。
つづく




