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「この後はどうしますか?」
ジェイン様のこの一言に、わたくしは息を飲んでしまいました。
だって、本物のデートのようではないですか。
「そろそろお城に帰りませんか?」
「ファレスの件が引っかかるのならば、一次的に実家に里帰りするという手もありますよ」
「あの、お気遣いなく」
「でも、怖いでしょう?」
たしかにファレスさんの襲撃は恐ろしいです。黒魔術についてはほとんど知識もありませんから。
でも、だからといって実家に里帰りするのは違うと思うのです。
「わたくしは、ファレスさんに負けたくありません。ですから、里帰りもしませんし、たとえ恥をかいたとしても、舞踏会には出るつもりでおります」
わたくしがそう言うと、ジェイン様は声を上げて笑い始めました。
今、笑うところでしたっけ?
「それでいいのです。それでこそ、わたしが見込んだ女性です。正直に言います。リリーさん、ファレスのことが片付いたら正式にお付き合いしてもらえませんか?」
「そういうこと、他の女性にも言っているのですよね? 年齢問わずで」
「今のは本気ですよ。わたしはあなたをスカウトする前から観察してきました。そして、あなたこそこれからお生まれになる王女様の侍女長にふさわしく、なおかつわたしの恋人にふさわしい人だと確信しました。なにより意志の強さが気に入りました。もう他の女性を口説くような真似はしません。リリーさん、今日のこれは模擬デートです。いずれ本物のデートをしませんか?」
……またまた。わたくしのことをからかうなんて、お人が悪いですわ。
「では、パピーを拾ったという話も捏造ですか?」
「いいえ。パピーは本当に迷い込んで来たのです。ですからこれをチャンスととらえ、模擬デートと洒落込んだわけです」
ますますわけがわからなくなって参りましたよ。
ジェイン様のことを意識していないかと聞かれれば、そりゃ適度に意識しましたよ? パンケーキも半分こしましたし。
でも、これがデートですか?
「最初のデートなのです」
わたくしは思い切って話し始めました。
「わたくしにとってこれは、模擬でもなんでもない人生初のデートなのです。それなのに、試されていただなんて……」
「それに関してはあやまります。申し訳ありませんでした」
「デートだってわかっておりましたらわたくし、もっと別な服を着てきましたのに」
「ですがそのワンピース、とてもよく似合いますよ?」
「わたくしはそんなに簡単な女ではありませんよ?」
わかっております、と応えたジェイン様が、やたれきらきら光って見えるのでした。
つづく




