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6ー1

 舞踏会まであと二日、という大事な時に、突然ジェイン様が子犬を連れて部屋を訪ねて来ました。


「どうです、この子犬。門番が見つけたのですがとてもかわいらしくありませんか?」


 淡いアイボリーの毛色に垂れた大きな両耳、顔のほとんどが目じゃないのかっていうほどおおきくて潤んだ瞳に湿った鼻。まだつまった顔立ちは、実際より口を小さく見せております。


 ああ、なんとかわいらしいのでしょうっ!!


「触ってもいいのですか?」

「はい。なんなら城で買うことも検討しています。国王陛下と王妃様、それにジョシュア様からは同意しておりますし、子犬から魔法の気配は嗅ぎ取れませんでしたから」


 つまり、普通の迷い犬。


 わたくしは遠慮なく子犬をなでさせてもらいます。


「よ〜し、よしよし。かわいいですねぇ? おいくつですか? もっとなでてもよろしいですか?」


 子犬はわたくしの頬をぺろりとなめてくれました。


「この子犬、リリーさんが育ててみませんか?」

「わ、わたくしがですかぁ!?」

「城内で買うとなれば、番犬にもなりましょうし、なによりわたしよりリリーさんによくなついている」


 かわいい〜。癒される〜。


「男の子ですから、子犬でも勇敢ですよ。名前はなににしますか?」

「名前ですか?」


 わたくしはない知恵をしぼりながら、考えます。


「え〜と、パピーはどうでしょう?」

「……そのままですね。いいですよ。今日からこの子はパピーです」


 もちろん、この子が大きくなるのはその足の太さで想像がつきますけれど、最初に会ったこの感動を、いつまでもわすれたくはないのです。


「それではリリー様。パピーに必要な道具を買いに、今日は一緒に出かけましょう」

「え? 王妃様はどうするのですか?」

「きょうは国王陛下とジョシュア様と共に部屋に居ることになっております。ケリーも医者も一緒ですし、心配ないでしょう」


 買い物だなんて、お城に来てから初めてですわ。本当によろしいのでしょうか?


「それでは、準備が整いますまで部屋の外で待ちます。好きな服に着替えてください」


 好きな服、ですか? わたくしが着てきた服以外ですと、侍女服といただいたドレスしかありませんが?


「あれ? まだ気づいてませんでしたか? クローゼットの中の服は、すべてリリーさんのものですよ。見立てはわたしですが、どれも似合うはずです」


 ジェイン様はそう言って、クローゼットを指差します。わたくしがその扉を開けてみると、たしかにわたくしにはちょうどよさそうな服がたくさん詰め込まれておりました。


「本当にどれを着てもよいのですか?」

「もちろんです」


 デートじゃないのですから、ドレスでなくてもいいのですよね。

 わたくしが選んだのは……!?


     つづく

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