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日数が過ぎ、いよいよジェインさんと大広間でダンスの練習をすることになりました。
パンプスを履いてのダンスは思いの外楽しくて、この靴でしたらどんな敵でも踏み潰してしまえそうです。
本番さながらにドレスを着たわたくしに、ジェイン様は一言、よく似合っておりますね、と言ってくださいました。
これは、これはついに口説かれたということであっているのでしょうかっ!?
わたくしついに、ジェイン様に口説かれたようですっ。
「ドレスに着られているような感じがたいそうかわいらしいです」
前言撤回。褒めてすらいないではないですかっ。
「孫にも衣装ですね」
こ、これ以上わたくしをボロ雑巾にしないでください。
「冗談はさておき、それでは始めましょうか?」
わたくしがなんの返答もできずにおりますと、ジェイン様はきっちりとかまえて待っております。
わたくしも負けるものかとジェイン様に手を重ねて、音楽が鳴り始めました。
「そう。そしてここでターン。よくできました」
……ほ、褒められたのでしょうか?
ですが、曲が進むごとにボロが出てきてしまいます。
「痛っ。リリーさん、脛を蹴らないでください」
「す、すみません。悪気はないのですが」
このようなやり取りをした後、ジェイン様と一曲だけ踊り通したわたくしは、息も絶え絶えに汗ダラダラです。
こんなことならファレスさんと戦う方が気が楽なくらいです。
いえ、実際はきっと踊っている最中に襲撃されるでしょうから、たとえ失敗したとしても、他の人には気づかれませんわよね? ……ね?
でももし襲撃されなかった場合はどうなるのでしょう。
その時はきっと、わたくしのどんくささだけが皆様のお心に残ってしまいそうな予感がします。
……ふぅ〜。
「大丈夫ですよ、リリーさん。たとえ失敗してもわたしがフォローしますし、襲撃されたらわたしがあなたを守りますから」
……きゅん。
え? 待ってください。きゅんってなんですか? きゅんって。
そんな。わたくしの初恋がジェイン様でしたら不幸ですわ。
だってジェイン様は女性と見れば年齢問わず、社交辞令のごとく女性を口説くのですよ。
そのようなお方にきゅんとしている場合ではありません。
「さらに警備も厳重にしておきますしね」
それはそうなのですが。なにやらわたくしの方が道化師になったような気分です。
つづく




